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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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恋人達の休日 -5-

魔王様誕生日企画短編
恋人達の休日 -5- (鏡夜&ハルヒ)

やっと電話がつながったが、彼女との会話は大きな機械音で遮られた。
それは、聞き覚えのあるヘリコプターのプロペラ音。彼女はもうすぐ帰ると言ったのだが……。


* * *

やっと繋がってくれた電話から、『もうすぐ帰る』という答えを聞いてから、
更に1時間くらいは経ったかもしれない。

ガチャガチャと玄関の鍵の開く音がした時には、
もう、夜の10時をとっくに回っていた。

「た、ただいま……です」

玄関のほうから、遠慮がちな彼女の声が聞こえてきたけれど、
鏡夜は手にした本の紙面に視線を落としたまま、
わざと素知らぬ振りをすることにした。

「す、すみません、鏡夜先輩」

彼女の足音と声が近づいてくる。

「すぐに戻ってこれると思ったんですけど、こんな時間になってしまって」

彼女がリビングの入り口に立って、
中に入るに入れない様子なのは気配でわかったが、

「随分、遅かったんだな」

鏡夜は本を凝視したままで、
彼女の顔も見ずに、少々嫌味を込めて、そう一言呟いた。

「本当に……折角の誕生日なのに……本当に、すみません」
「……」

さて……。

鏡夜は彼女に聞こえるように大きく溜息をつくと、
読んでいた本を両手でパタッと音を立てて閉じ、
そこで、初めて、視線を彼女のほうへ向けることにした。

半日以上もこちらを待たせてくれた彼女は、
一体どんな顔でそこに立っているのだろう?

「で? お前、一体、どこに行っ……」

そんなに厳しく責めるつもりはなかったが、
とにかく、半日も不在にしていた理由は知りたいと、
彼女をそれなりに追及するつもりで、鏡夜は顔を上げた……のだが。


「………………え?」


そこに居たハルヒの姿を見た途端に、
鏡夜はぎくりと身体を後ろに引いて、驚きの声をあげ、
その後は、ハルヒの姿を目を見開いて見つめたまま、無言になってしまった。

「あ、あの、鏡夜先輩、あのですね。これには色々と事情が」

絶句している鏡夜に対して、
ハルヒは顔を赤らめながら必死で何か言い訳をしようとしている。


「ハルヒ……お前……なんだ……『それ』は?」


昼に部屋を出て行ったときには、
確かにシンプルな黒のコートを羽織っていたはずだ。

しかし、やっと帰ってきたハルヒはどういうわけか、
まるでパーティーにでも出かけていたかのような、
桜色のワンピースドレスを身にまとっていたのだ。

上半身はノースリーブで、膝丈ほどの三段フリルのスカートに、
ラインストーンを縫いこんだストールを首に巻きつけていて、
髪にはピンクのバラのコサージュまで付けている。

着慣れないものを着ているせいだろうか、
ハルヒはとても恥ずかしそうに、
その場でもじもじと指を組み合わせて、視線をあちこちに動かしている。

「あの……こういうのは、予定には全くなかったんですけれども、
 さっき、光と馨に強制的に着替えされられたというか……その……なんというか」
「は? 光と馨?」
「ええ、そうなんです」
「一体、何がどうなって、そんなことになってるんだ?」
「それが……実はですね……えっと……説明するとちょっと長いんですが……」

ハルヒは顔を真っ赤にしたままで、
リビングに入ってくると、鏡夜の側に座りこんだ。

「あの先輩……『これ』覚えてませんか?」

ハルヒが近づいてきて分かったが、仄かに香水の甘い香りもする。

「これ?」

あまりのハルヒの変身振りに、ぽかんと開けた口が塞がらない状況の鏡夜の前で、
ハルヒは首に巻いてあったストールを外し始めた。

ハルヒはストールの下に、
まだ何か……キラキラと輝くものを付けているようだ。

「これです」
「それは……」

ストールを取り外したハルヒの首元を、まじまじと眺める鏡夜。

「……それは……確か、俺がお前に……?

ハルヒの首元を飾っている、
鏡夜に見覚えのある『それ』の答えを漠然と言葉にすると、
「はい、そうです」と、ハルヒはこくりと頷いて、
取り外したストールを無造作に丸めて左手に持つと、
右手の指先で、自分の首元に触れ、恥ずかしそうに微笑んだ。


「先輩が、高校の時、フランスの研修旅行のお土産に、
 私にくれた……ネックレスです」



* * *

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