『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
* * *
ヴェルサーチェスまでの道中、立ち寄ったオアシスで、
宿泊のために借り受けたテントには、寝床が二つ用意されている。
姫
「じゃ、そろそろ寝よっか」
姫に続いて入口の幕をくぐったシャロンは、
奥の寝床は彼女に譲るつもりで、手前の寝床に腰かけたのだが、
一旦、奥の寝床に向かった姫は、
シャロンが手前に座ったのを確認すると、
自分の寝床から枕を持参して戻ってきて、
シャロンが使おうと思っていた寝具の上に、ごろんと横になった。
シャロン
「姫……君は今日も、私と一緒の寝床で寝るというのか?」
小さくため息を吐くシャロン。
姫
「当然でしょ? てか、ここまでずっと一緒に寝てきたのに、
毎回シャロンそれ聞くよね、なんで?」
そもそもの事の発端は、二人がキングダムを出発して、
最初に迎えたオアシスの夜。
恋人同士とはいっても、やはり、きちんと親に紹介して、
婚約などのけじめをつけてからが筋と考えていたシャロンは、
それまでは決して、姫に無体なことはしないでおこうと考え、
自分と姫の宿泊用のテントを、別々に二つ借りようとしていたのだが、
そんなシャロンに対して、姫が首を傾げてこう言ったのだ。
姫
「どうして二つも借りるの? 一つでいいじゃない、お金もかかるし。
無駄遣いは良くないって、シャロンいつもパレスで言ってるじゃん」
シャロン
「そうはいっても、私は一応男だから……」
姫
「そんなの知ってるけど、それがどうしたの?
私、EVUUでは、よく父様と一緒に寝たことあったよ?
……あ、まさか人類の世界では、
男の人と女の人が一緒のテントで寝ちゃいけない決まりでもあるとか?」
シャロン
「そ……そういうことではないんだが」
姫
「ならいいじゃない。一つのテントにしようよ。一人で寝るの寂しいし」
シャロン
「はあ……仕方ない。君はどうせ、私が何を言っても、
これと決めたら聞かないんだろうからな」
同じテントの中で寝ることになっても、
寝床を離しておけば、なんとか理性を保てるかもしれないと、
心の中で自分を戒めていたシャロンだったが、
彼にとっての最大の悪夢は、この後、起きた。
シャロン
「……姫? ……君は一体何をしているんだ?」
姫
「何って、寝ようとしてるんだけど?」
さて、旅の疲れを取ろうと、
横になろうとしていたシャロンの寝床に、
姫が突然入り込んできたために、シャロンは呆気にとられてしまう。
シャロン
「いや、君の寝床はちゃんと向こうに用意してあるだろう?」
姫
「え? 別々に寝るの? なんで?」
布団にくるまりながら、シャロンを見上げる姫。
シャロン
「何故と言われても、私は……まだ君にそういうことをするつもりは……」
姫
「なにぶつぶつ言ってるの? 砂漠の夜は冷えるしさ~。
一緒にくっついて寝た方が、温かくていいじゃん。
ほら、つべこべいってないで、シャロンも早く寝ようよ。
次のオアシスまで、また暑い中、旅しなきゃいけないんだから。
ふわあ……なんだか私、すごく眠くなってきちゃった……。
ラクダに乗ってるから大丈夫だと思ったけど、
やっぱり砂漠の旅って、結構……疲れる……ね……」
シャロン
「姫?」
ぼう然としているシャロンの前で、
無防備にも、すやすやと眠りに落ちるアスパシア。
シャロン
「ふ……『信用されている』ということかもしれないが……。
喜ぶべきなのか、嘆くべきなのか……」
すっかり寝入ってしまったアスパシアを見ながら、
やれやれと、自嘲気味の笑いを浮かべたシャロンは、
起こしてしまわない程度に優しいキスを、彼女の額に贈った後で、
彼女の隣に、背中を姫の方に向ける形で身体を横たえて、目を閉じた。
……のだが。
起きている時も自由奔放なら、寝ている時も自由奔放なアスパシアが、
寝ぼけながらシャロンの背中に抱きついてきたりしたものだから、
その夜のシャロンが、なかなか寝付けなかったのは言うまでもない。
こうして、キングダムロードを、
ひたすらヴェルサーチェスへと旅する中で、
毎夜、姫の無自覚な「拷問」にさらされて続けてきたシャロンだったが、
キングダムを出立して早一週間経っても、
まだ共に寝ること(しかも、ただ単に隣に眠ること)に、
慣れることができず、
テントの中で休むときには、必ず姫に確認をとるようになっていたのだ。
姫
「ねえねえ、シャロン」
シャロン
「なんだ?」
姫
「シャロンっていつも私に背中向けて寝るよね。たまにはこっち向いて寝たら?」
シャロン
「姫。君はどこまで私を苦しめれば気が済むんだ?」
姫
「苦しめるって何のこと? ……あ、そっか!
シャロンって顔に似合わず結構身体大きいから、
もしかして一緒に寝るの窮屈だった?」
シャロン
「べ、べつに窮屈だから嫌というわけではないが……、
とりあえず、姫が一緒が良いというのであれば、
この状態は仕方ないにしても……これが私の限界だ」
姫
「ふうん? 変なの。まあ、でも、シャロンの背中好きだから、これでも別にいいけど」
シャロン
「私の背中が?」
姫
「うん。私とは違って肩幅あって、
大きくて、がっちりしてて……まるで父様の背中みたいだから。
……そういえば……父様元気かなあ……」
シャロンの背中にそっと手を当てるアスパシア。
姫のぬくもりが、薄手の衣服を通してシャロンの肌に伝わって来る。
シャロン
「姫……」
彼女の呟きを聞いたシャロンは、
一度、身体を起こすと、くるりと身体を反転させて横になると、
そのままアスパシアの肩に手を回した。
姫
「え? シャロン?」
一つの寝具の中に横たわり、
キスをしてしまいそうなほど近くで、
顔を突き合わせている二人。
シャロン
「……すまない、姫。私が『君に傍に居てほしい』と願ったばかりに、
君はEVUUに戻って父上に会うこともできず、
従者であったウンバラ殿も君の傍を離れることになってしまった。
さっき、私は君のことを『ずっと一人ではなかった』と言ったが……、
今の君は、これまで傍にいてくれた者達から離れて、
たった一人、キングダムに残ってくれたのだったな。
そのことをすっかり忘れていた。本当に寂しい思いをさせてすまない」
姫
「……寂しくないっていってあげられたらいいのかもしれないけど、
それは嘘になるから、そうは言えない。
でもね、シャロン。私はキングダムに残って本当に幸せだと思ってるんだよ?
シャロンが傍にいてくれて、シャロンの傍にいることができて、
キングダムに住む沢山の人達と一緒に過ごすことができて、本当に幸せなの。
今まで私を守ってくれていた、父様やウンバラとは別れなくちゃいけなかったけど、
それと同じくらい、ううん、それ以上に大切なものを、
これからシャロンと作っていきたいなって思うから。
だから、私は魔神に戻れなくてもいい。EVUUに戻れなくてもいい。
私のその選択に後悔はしてない。それが、私の今の本当の気持ちだよ。
それに、私にはシャロンがいる。だから私は一人じゃない。そうでしょ?」
シャロン
「私の存在一つで、君が今まで生きてきた、
世界の全ての代わりに足るかは分からないが、
この命ある限り、君の傍で、この世界で共に生きることを誓うよ、姫」
姫
「ふふ。それって、なんだか結婚するときの『誓いの言葉』みたいだね」
シャロン
「プロポーズはとっくにしてあるはずなんだがね。答えはまだ聞いていないが」
姫
「……え? それって、いつの話?」
いつか、すべてが終わり
もし再び再会できるのなら、その時は、私の……。
姫の返事に少し意地悪く目を細めたシャロンは、
アスパシアをぎゅっと抱きしめた。
シャロン
「…………さて、姫。おしゃべりしすぎて夜更かしするのは良くない。
早く寝ないと明日は早く出立するのだからな」
姫
「もう、また話をはぐらかす! ……って、背中、向けなくていいの?」
シャロン
「今日はこのまま眠りたい気分なんだ。嫌だったか?」
姫
「嫌じゃないけど……なんだろ、自分で言っといてなんだけど、
ちょっと恥ずかしい気分になるような」
シャロン
「ふ……一応私も『男』だと思われてる、ということかな?」
姫
「え? それは知ってるって前に言ったじゃん?」
シャロン
「あはは……君と話してると、つい時間を忘れて長話になってしまうな。
さ、そろそろ寝よう、姫」
姫
「変なシャロン~。ま、いっか。続きはまた明日ね。おやすみ、シャロン」
シャロン
「おやすみ、アスパシア。良い夢を」
キングダムロードを一路ヴェルサーチェスへ。
旅を続ける中、夜、隣に眠る姫に対して、
ずっと背中を向けて眠ってきたシャロンは、
その夜、初めて姫を、
自分の腕の中に抱きしめて眠った。
彼女の父や、彼女の従者、彼女の大切だった者達に代わり、
自分が彼女を生涯守ってやるのだと、そう決意して……。
* * *
イシュマールルートが、あまりに美味しすぎる展開だったので、
そのシチュエーションを盛り込んでみました!
シャロンと姫の関係、本当に大好きです!
あまり売れまくったゲームではないようですが(苦笑)
世界観もキャラクターもシナリオもかなり好きな作品なので、
これからも、まったりDKシナリオ更新していこうと思います!
了