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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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私の心の半分 -2-

君の心を映す鏡 番外エピソード
私の心の半分 -2- (ハルヒ&鏡夜)

現実の記憶は夢の世界に溶け込んで、今でも心を惑わせる。

* * *

バスルームの扉の向こう側で、シャワーの音が聞こえ始めたから、
彼の着替えを準備して、バスルーム前の洗面台の脇のカゴに入れて、
鏡夜にドア越しに声をかけようとした時。

『……』

とても微かな、注意して聞かなければ気付かないくらいの大きさだったけれど、
細かく連続的な水の音の中に、彼の嗚咽が混じっているのが聞こえてきた。

……鏡夜先輩……。

その様子に声もかけれなくて、
自分が扉のこちら側にいることを気付かれないように、
ハルヒは、そおっと足音を殺してとリビングに戻った。


本当に、どちらが良かったんでしょうね。


コタツの上に置きっぱなしにしていた、
自分の携帯電話を手にすると、ハルヒはベッドサイドに腰掛けた。

あの人が居る世界と、あなたが隣に居る世界と。


一体どちらが夢で、どちらが現実だったら、
私達は、本当に幸せだったんでしょうね。



シャワーの音は遠く続いている。

一瞬、バスルームの方へ視線を向けて、
まだまだ、出てくる気配が無い様子を確認した後。
ハルヒは携帯電話を開くと、
指先でアドレス帳を開いて辿っていった。

おそらく。

さっき、あなたが見ていた夢は、
きっと、とても優しくて柔らかくて温かくて光に溢れた世界。

けれどその光、が余りに眩しすぎるから、
残酷なまでにくっきりと、現実の悲しい影を浮かび上がらせる、
そんな切ない夢だったのでしょう。

もしも。

さっき、あなたが私に呟いたように、この世界こそが『夢』で、
今、私達が一緒にいることも、
あの人が私達の前からいなくなったことも、
全て、虚構の夢物語の出来事だったとするなら。

今、私と貴方が一緒にいる『この世界』は、
冷たく暗い悪夢でしょうか。

それとも。

ずっとこのまま眠り続けていたい、と願う甘い夢?

ハルヒの指先は、携帯電話の液晶画面に、
無意識に一人の名前を呼び出していた。

もう二度とかけることは無いはずなのに、
ずっと消さずに保存している、一つの電話番号。
二年前に、突然かかってきた電話の中、
私だけが聞くことができた、あの人の最後の言葉。
だからこそ消すことができない、あの人の名前。


これは、私の心の半分を、過去に繋ぎ止める最後の鎖。


これを残しているということは、
未だ、心のどこかで願っているのだろう。
この『夢』から目覚めて、『あの人のいる世界』へ還ることを。

そして。

あの思い出の場所に『還りたい』と願っているのは、
おそらく、私だけじゃなくて……。

気付けば、いつのまにかシャワーの音は止んでいて、
がたがたと戸の開く音や、
洗面台でドライヤーを操作する音が聞こえてきたから、
それに追い立てられるように、
ハルヒは急いで携帯電話を閉じて炬燵の上に置くと、
布団の中に潜り込んだ。

鏡夜先輩。

貴方と私は一緒に居ることを選びました。
きっと今の私達には、それが一番良いことなのでしょう。

でも。

目を閉じると、先ほど偶然にも聞いてしまった
彼の泣き声が耳の奥に蘇る。

鏡夜先輩。

あなたは私にその心を、全部くれるといってくれたけれど、
やっぱり未だ、あの人が『居るはずの世界』へ、
心の欠片をいくつかは、残してしまっていたんですね。


私がまだこの鎖を、断ち切ることが出来ないのと同じように。


* * *

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