『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
君の心を映す鏡 番外エピソード
私の心の半分 -3- (ハルヒ&鏡夜)
シャワーの音にかき消される嗚咽。未だに消せないあの人のアドレス……。
* * *
シャンプーの良い匂いに包まれながら、
水面に浮かんで、ただゆらゆらと空を見上げて漂っている時ように、
ぼんやりとした時間を過ごすのは嫌いじゃない。
「あの……鏡夜先輩、起きてますか?」
小声で問いかけると、
耳元で「ああ……」と答える彼の声がする。
「さっき転寝したせいか、まだ眠くなくてね」
「珍しいですよね。先輩が炬燵で転寝するなんて。
今日は貴重なものを見せていただきました」
ハルヒがくすくすと笑っていると、
「お前こそ珍しいじゃないか」
鏡夜がハルヒの首筋を撫でながら、反論する。
「いつもは、さっさと寝るくせに、今日は起きているんだな」
「そ、それは……『鏡夜先輩の所為』じゃありませんか!」
「俺の?」
彼のことだけで体中の感覚が支配された後は、
大抵、すぐに眠りに落ちてしまうことが多かったけれど、
今日はいつもより彼が、優しく自分に触れてくれた気がする。
「そうですよ。今日の先輩はいつもと比べて……、
その……ちょっと……優しかったっていうか……」
「いつもの俺は『優しくない』とでも?」
「まあ……端的にいうと、そういうことになりますね」
「おい」
ぽんと頭を軽く叩かれて、
それからぎゅっとその腕の中に抱きしめられると、
心地よい温かさに肩まですっぽりと包まれる。
「実はちょっと意外だったんですよ」
「意外? 俺がお前にこういうことをするのが?」
「まあ、それもそうなんですけど……、
それだけじゃなくて、鏡夜先輩って、結構はっきり言うんだなあ……って」
「はっきり言うって何を?」
「それは……その……私に対して……、
あの……その……なんといいますか……」
「ああ」
こめかみあたりに唇の感触を感じたあと、
ハルヒの耳に、彼の吐息がかかる。
「『お前を愛している』とか……そういう言葉のことか?」
「そ、そ、そ……」
反射的に首をすくめたあと、上目遣いに鏡夜の顔を見る。
「それって、は……恥ずかしくないんですか?
いつも思ってたんですけど、
鏡夜先輩ってそういうこと積極的に言うようなタイプに見えな……」
「恥ずかしいもなにも、これは『お前の所為』だろう」
「え? 自分の所為ですか?」
「そうだ。お前は恋愛については、あまりに天然すぎるからな。
はっきり言わないと伝わらないから、わざわざ言ってやってるんだよ」
「そ、そんなに自分……鈍感ですか?」
「今までのことを考えれば、どれだけ好意的に考えても否定できないな」
「うう……」
言い返したくとも、思い当たることが多すぎて、
真っ赤になってハルヒが呻いていると、
鏡夜は笑いながら、再びハルヒの頭を撫で始めた。
「そういえば、鈍いという点では、あの馬鹿も似たようなものだったか……」
「……」
寂しげな口調が気になって見上げてみたら、
鏡夜はハルヒを抱きしめたまま、ぼんやりと天井を見つめている。
「鏡夜先輩。覚えてます?」
「ん?」
「高校の時に、環先輩が私に告白してくれたとき、
鏡夜先輩、随分呆れてたじゃないですか。
私達が『お友達カテゴリーから始めてる』と言ったら、
『人にはそれぞれペースがあるから』とか言って……」
「…………ああ、あれは余りに衝撃的だったんで、
忘れたくても忘れられないよ。ま、お前ららしいとは思ったがな」
あの時、彼の右手に自分が負わせた傷は、
白い筋となって微かにその掌に残っている。
自分は、当時、彼の心の中の真実を、
何ひとつ知らないままだった。
けれど、今、こうして傍にいることになって、
あの時の彼の言葉も、行動も、
全て単なる演技ではなかったと分かる。
「でも、先輩。気付いてました?
環先輩がお友達とか言いだしたのって鏡夜先輩の所為なんですよ?」
「……俺の……?」
「ええ、実は前に環先輩が言ってたんですけど……」
* * *
続