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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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君の心を映す鏡 -second intermission-

君の心を映す鏡 -second intermission- (鏡夜&橘)


* * *

これで、何か間違いはないだろうか。

環が桜蘭学院に転入してきて、最初に迎える冬。
学院へ登校する前、
鏡夜は自分の家の和室の内装を入念にチェックしていた。

畳に掛け軸。中央に炬燵が一つ。

奴のことだから、自分の想像とマッチしていないところがあれば、
また、無駄にオーバーなリアクションをされるか、
お前を買いかぶってたとか、お前に言っても無駄だよな、とか、
こちらが勘に触るような文句を、無自覚に呟くに決まっている。

奴に振り回されるのは癪だが、
あの馬鹿に、憐憫の眼差しを向けられるのだけは、どうにも我慢ならない。

念には念を入れておかないと。

理事長の妾の息子ということで、
普通なら学院に居づらいのではないかと思うのに、
気付けば、いつの間にかクラスにも馴染んでいる、
妙に人を惹きつける、不思議な魅力を持った環の、
予測不可能、意味不明な言動の数々に、
ここ数ヶ月振り回されつづけれたために、
流石に完璧な免疫が出来てしまったようだが、
それにしても、ほんの些細な妄想と現実のズレに、
事あるごとに見せる環のがっかりとした態度が、
鏡夜の神経を逐一、逆撫でしてくることは、
一緒につるむようになって、春夏秋と、季節を三つ越えた今も何ら変わりない。

今年の秋の終わり、
桜蘭祭という毎年の「任務」も終わって落ち着いた頃、
鏡夜が環との約束を実行するために、
鏡夜付きのスタッフ頭である橘を部屋に呼んで、
家具などの手配を頼んだ時のこと。


「は? 天板はリバーシブル、でございますか?」


橘はきっと、高級木材を使用した家具調の、
デザイン性の高い炬燵を指定されると思っていたのだろう。
鏡夜に『リバーシブルの天板』などと指定されて、ひどく、うろたえていた。

「環の想像する『炬燵』が、そういうものなんだそうだ」
「はあ……」
「それで、炬燵に蜜柑で紅白歌合戦を見ながら家族麻雀をするんだと」
マージャン、でございますか」

鏡夜の要望をメモに取っていた橘は、
鏡夜の口から、またも意外な単語が出てきたことに戸惑っているようだ。

「恐れながら……鏡夜様はマージャンをご存知で?」
「麻雀は、古代中国で皇帝の傍に仕えた女官達が、
 宮中で興じた遊びが原形になったといわれている卓上ゲームで、
 この宮中の遊びが、一般に伝わったのは、
 義和団の乱の最中に、多くの宮女や官人が故郷に逃げ帰り、
 この遊びを伝えたのが、中国全土に普及するに至った初めであると言われて……」
「い、いえ、鏡夜様。そういうことではなく」

インターネットで調べて頭に叩き込んだマージャンの定義を、
すらすらと語り始めた鏡夜に、橘は首を振って手帳を胸ポケットにしまった。

「その、マージャンと言うのは『ゲーム』でございますから、
 遊ぶ際のルールですとか、
 実際にプレイなさったことがあるかということで……」
「一応、奴に散々騒がれたときに、ルール自体は調べたが、
 しかし、かなり複雑な遊戯だな。正直、まだ理解に苦しむところもある」
「でしたら、私ども鏡夜様チームが、
 鏡夜様とご一緒にマージャンをいたしましょうか?
 物事を学ぶには、実践されるのが一番ですし、
 なにより、本来マージャンは四人でやるものですから」

サングラスをかけているため、
相変わらず目の表情はわからないが、
頬を少し赤らめて、口元を緩めているから、
橘が嬉々とした様子なのは、明らかに分かる。

「橘。お前、何か企んでいないか?

鏡夜が目を細め、疑惑の眼差しを向けると、
橘は頬をぴくっと痙攣させつつ、慌てて弁明してきた。

「い、いえ。そんな、企むなどと……。
 私は鏡夜様をお守りし、そしてサポートするチームのリーダーとして、
 鏡夜様が、母君と離れ離れになってしまったご親友の環様のために、
 いろいろとご配慮なさっていることに、
 僭越ながら、私共なりにお力添えできればと考えただけでして、
 その、私は、決して、鏡夜様と一つの炬燵を囲みたい、ですとか、
 鏡夜様がマージャンに興じるというスペシャルな場面を、
 デジカメで隠し撮りしたいとか、
 そういった邪なことは全く考えておりませんから……」
「……」

見事に語るに落ちている橘の提案を、
鏡夜は嘆息まじりに否定した。


「…………却下だ」


* * *

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