『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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君の心を映す鏡 -34- (崇&光邦)
環の心を無意識に縛っていたものは、周りの皆を幸せにするという願いそのものだった。
けれども、曖昧な態度は却って周りを傷つけると崇に指摘され、環はようやく答えを見つけ出す。
* * *
道場を出ると、環は丁寧に自分に頭を下げ、
慌しくぱたぱたと走り去っていった。
「崇、終わった?」
それを見送ってから、扉に鍵をかけていると、
道場の壁の影から、ひょこっと光邦が顔を出した。
「光邦」
自分が環を説教している時に、
外に光邦が来たことは、気配から察知していたが、
どうやら場の様子を読んで、中には入ってこなかったらしい。
「しばらく外で聞いてたんだけど、
崇、たまちゃんに、ちゃんと話しをしてくれたんだね」
「……メール」
「あ……そっか。あれ、本当は途中だったんだけど。
でも良かった。崇がたまちゃんをつかまえててくれて」
環の去った方角に、
まるで、親がわが子を見つめるような、
温かい眼差しを向けている光邦の様子に、
ふと、鏡夜のことが気になって問いかけてみる。
「鏡夜はどうした?」
「……たまちゃんに自分の気持ちをぶつけて、
かなり落ち込んではいたけど……でも、
鏡ちゃんがこっそり身を引くような感じで、なんとなく終わるよりも、
一度、たまちゃんと本気でぶつかり合ったほうが、良かったんじゃないかな。
たまちゃんも……これでやっと前に進みそうだしね」
結局、昼休み前に到着したはずなのに、
気付いてみれば二時をとうに回っていて、
学院の食堂の利用時間も終わってしまっていた。
仕方なく、外で食事をしようということになって、
崇と光邦は事務室に、道場と第三音楽室の鍵を返却してから、
ロータリーに待たせている車のほうへ向かった。
「ねえ、崇」
「ん?」
車に乗り込む直前に、
光邦は、手にしたうさぎのぬいぐるみを、
ぎゅうっと胸元に抱き寄せながら言った。
「ハルちゃんは、こんなにも皆に想われて、幸せだね」
環と鏡夜という名指しではなく、
敢えて『皆』という言葉を使ったのは何故か。
「……」
頭の中で、光邦の言葉の意味を咀嚼するために、
少しの間沈黙していた崇は、
やがて、自分の中で納得すると、微笑みながら頷いた。
「ああ……そうだな」
光邦の気持ちが、こちらにちゃんと伝わっている事を、
わざわざ言葉に出さなくても、光邦なら分かるはずだから。
崇は多くを語ることなく、穏やかに空を見上げた。
そこには、とても綺麗な青空が広がっていた
* * *
続