忍者ブログ

『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

Suriya'n-Fantasy-World

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


君の心を映す鏡 -41-

君の心を映す鏡 -41- (環&ハルヒ&鏡夜)

人が、自分本位の感情を出すことは、得てして他人を傷つけることがある。
両親の許されざる関係が、環の心に、そんな「絶対の法則」を刻みこんでいて……。


* * *

ハルヒ。君は、皆に愛されているよね。

蘭花さんはハルヒのことをすごく大事にしているし、
ホスト部の連中だって、皆、ハルヒのことが大好きだ。
君はとても純粋で、感じたことを包み隠さず率直に言ってくれる。
そういう屈託のない態度に、俺達は一緒にいて救われるんだ。

「自分本位な感情が、他の人にとって、笑顔の無い、
 冷たい世界を作り出すことがあるってことを、
 俺は……自分でも気付かないうちに、
 心のどこかに『絶対の法則』みたいに、刷り込んでいたんじゃないかと思うんだ」

だから。

ハルヒが、俺だけじゃない、
皆にとって、とても大切な存在なんだと理解した瞬間に、
俺の意識は閉じてしまった。

そこから、俺の無自覚な勘違いは始まったんだ。

「俺が今までずっと、ハルヒの父親なんて言ってたのは、
 もしも、ハルヒのことを皆よりも一歩進んで、
 俺にとって特別な人だと考えてしまったら……、
 もしも、俺が……皆のためじゃなく、
 ただ、自分自身の気持ちを満足させるために、
 ハルヒとのことを考え始めてしまったら、
 ハルヒを大好きな人達、皆を悲しませるんじゃないかって。
 多分無意識に俺はずっとそういう風に思ってて、
 考えることから逃げていたんだと思う」

目を逸らして「逃げる」というマイナスの感情は、
「憎しみ」と並んで、環自身が、もっとも毛嫌いする感情の一つだ。

けれど、自分を無意識に恋愛事から回避させていた負の感情は、
あまりにも自然に自分の人格の中に溶け込んでいたから、
自分が、こういう意識を持っているんだと自覚するまで、
随分と沢山の人に迷惑をかけたように思う。

「今日の午後、色んなことがあってね、
 色んな人に言葉をもらって、それでやっと、そのことに気付いてさ、
 俺は本当に自分が情けなくなった。
 俺が、自分のために、どんな行動を取ったとしても、
 その結果を受け入れてくれる強さが皆にあるって、
 心から信じていれば、こんなことにならなかったはずなんだ


本当ならもっと前に、気付くべきだったのに。
そのヒントは沢山散らばっていたはずなのに。
いくらでもチャンスはあったはずなのに。


……本当に、俺は間抜けだったよな。


「……」

先ほどまで何度か口を挟んできたハルヒも、
もう、今は、唇をぴたりと合わせたまま、
その綺麗な目で静かにこちらを見つめている。

答えはもうとっくに出ているから、
あとはそれを恐れずに伝えるだけ。

自分がハルヒにこの想いを伝えることで、
周りにいる人に悲しい想いをさせると同時に、
もしかすると、ハルヒ自身を困らせてしまうかもしれないという、
漠然とした恐怖も無いわけじゃない。

でも、黙って目を背けて逃げ続けたとしても、
それが自分自身も、周りの人も傷つけて、結局何も解決しないんだったら。

「ハルヒ。俺は……ようやく分かったんだ。
 父親代わりとかじゃなくて、娘とかじゃなくて、
 一人の男として、ハルヒのことを大切にしたいんだって、
 一人の女の子として、ハルヒのことを守っていきたいって……、
 随分時間はかかったけど、今日、やっと分かったんだ」

皆の心の強さを信じて、一歩でも先に進むほうがいい。

「だから、ハルヒ……これからは」

驚いて目を丸くしているハルヒに向かって、
環は恭しく頭を下げた。



「ただの『須王環』として、ハルヒの傍に居させてくれないか?」



【寄りそう白と赤の薔薇】



彼女にそう告白をして、翌日。


「鏡夜。人の話をちゃんと聞け! 俺はお前に言っておきいことがあるんだ」


鏡夜の家に押し掛けて、部屋を訪れて、
メインフロアーのテーブルを挟んで向かい側に立って、
環が鏡夜を見下ろすと、雑誌を読んでいた鏡夜は、ようやく顔を上げてくれた。

「言っておきたいこと?」

疎ましいものを見るような目で、鏡夜は自分を見つめている。
その重い空気に負けまいと、
環は前屈みになって、テーブルの上に勢い良く手を付いた。

「俺は昨日……ハルヒの家に行ってきた

環が余りに力強く手を付いたために、
その弾みで、テーブルの上に乗っていたティーカップが、
かちゃかちゃと耳障りな音を立てた。

「……ほう? ハルヒの家に、お前がねえ」 

鏡夜は呼んでいた雑誌を膝の上でぱたりと閉じると、上目遣いで環を見る。

「で、一体、何をしに行ったんだ?」

鏡夜は、感情の動きが見えない、能面のようなj顔で、
こちらの目の奥をじいっと覗き込んでいる。

「昨日……俺は……」

環は机の上についた指先にぐいっと力を込めると、
鏡夜に向かって大声で宣言した。



「ハルヒに告白したぞ!!」



何を反論されても、全て跳ね返して見せると、
思い切り気合を入れて環はそう言ったのだが、

「へえ? 告白ねえ……」

昨日、激しくバトルを繰り広げたばかりだったから、、
どんな反応されるかと、身構えていた環にとっては、
拍子抜けするほど静かな反応で、鏡夜は呟いた。

「それで? 一体、『何を』告白に行ったんだ?」
「な、何を……って、決まってるだろう! 
 俺は、ハルヒに、父親代わりとか娘とかじゃなくて、
 一人の男として、ハルヒのことを守りたいって、
 傍にいさせてくれって、俺はそう告白したんだ!


大袈裟に身振りを加えながら話す環とは対照的に、
鏡夜は無感動な様子で、はあ、と大きな溜息をつくと、
目の前に置いたティーカップに手を伸ばして紅茶を啜った。

「ハルヒのことをどう思っているかと、
 昨日、俺が聞いたときには、
 ろくな返事もできなかったくせに、随分な急な心変わりだな」
「それはっ………、俺が自分の本当の気持ちに気付くのが遅かったのは、
 確かに馬鹿で間抜けだった……それは認める」
「ふうん?」

環がトーンダウンして、すんなり頷いたのが意外だったのだろうか、
カップを置いた鏡夜は、少し眉をひそめた。

「けど……、気付くのが遅くなったからって、
 それでお前に負けることにはなるとは俺は思わない!

鏡夜の口調は、予想外に穏やかではあったが、
環を見つめる、その視線は優しいものではない。
厳しくこちらを突き刺してくる。

でも、目を逸らさない。逸らしたら負けだ。

俺は……確かに間違っていた。
それはとても間抜けな勘違いだった。
だから、これ以上、醜態を曝して、誤魔化したりなんてしない。
俺は自分の過ちを全て認める。認めた上で……。



鏡夜がハルヒを想う気持ちに勝ってみせる!



「俺は……ハルヒのことが好きだ。ハルヒは俺にとって大事な人だ。
 昨日、これから俺が傍にいてもいいかって聞いたら、
 ハルヒは俺と一緒にいてもいいって言ってくれた。
 だからもう、お前に勝手な手出しはさせない。俺は堂堂とハルヒを護る!
「……」

一気に言葉を叩きつけると、
環は大きく胸を上下させ、ぜいぜいと息をついた。
余りの剣幕に、鏡夜は気圧されてしまったのだろうか、
どこかぼんやりと環を見ながら、言葉を発しない。

「今日、俺は、これを言いたくてここに来たんだ。
 だから、もしお前がまだ、ハルヒにひどいことをしようと考えているなら……」
「…………く、くくっ」

いくらでも俺が相手になる! と、
格好良く決めようとしていた環の言葉を遮ったのは、
鏡夜のくぐもった笑い声だった。


「くく、くくくっ……あはははは


環が部屋に入ってから、ずっと無表情だったというのに、
何の前触れもなく、突然、鏡夜が笑い出して、
最初は、左手で前髪を掻きあげて、その手の平で顔を覆っていたが、
その笑い声は治まるどころかどんどん酷くなって、
ついには弾けるような大声で笑い出した。

「な、何がおかし……」
「おい、お前達、ちゃんと聞こえたか? 『告白した』そうだ」

鏡夜の不可解な態度に気色ばんだ環を余所に、
鏡夜はにやにやと笑いながら、顔をくいっと後ろに向けた。

「もう、降りてきていいぞ?」
「え?」

鏡夜の視線は、鏡夜の背後にある、
ベッドルームへと続く階段のほうに向いている。

環がゆっくりとその階段の上のほうへ視線を動かすと、
そこから降りてくる二つの人影が視界に入った。

「あーあ。鏡夜先輩が言ってた通りになっちゃった。
 流石だなあ。ねえ、光?」
「ホントホント。殿にここまで言わせるなんて、
 一体どんな手、使ったのさ? 鏡夜先輩」

降りてきたのは光と馨だった。
ぶつぶつぼやきながら、二人仲良く階段を降りてくる。
どうやら、鏡夜が寝室として使用している二階部分に隠れて、
今までずっと自分達の話を聞いていたようだ。

「…………へ?」

キラキラと目を輝かせて楽しそうな双子達の顔と、
ソファーに座って足を組んで、薄笑いを浮かべている鏡夜の顔を、
交互に確認しながら、環は放心状態で問いかけた。



「なんで……光と……馨が……ここにいるのだ?」



* * *

PR
06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

プロフィール

HN:
Suriya
性別:
女性

バーコード

<<君の心を映す鏡 -42-  | HOME |  君の心を映す鏡 -40->>
Copyright ©  -- Suriya'n-Fantasy-World --  All Rights Reserved
Designed by CriCri / Top-Photo by Suriya / Background-Photo by 壁紙職人 / Powered by [PR]
/ 忍者ブログ