『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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今年の冬は例年に比べ、
暖かい日が続いていたというのに、
二月に入ったあたりから、気温が下がる日が増えて、
時には大雪に見舞われたりすることがあるかと思えば、
その翌日には、最高気温が十五度を超えて、
ぽかぽか春めいた陽気が訪れたりと、
やたら寒暖の差が激しくて、
外に出歩くことの多い仕事をしているハルヒは、
着る服に悩む日々が続いていた。
三月に入って、週間天気予報では、
まだまだ真冬の厳しい寒さがぶり返す日もあるらしい。
確かに、頬を撫でる風の冷たさは相変わらずだったけれど、
それでも数日おきに温かい日を迎えると、
一歩ずつ、季節は着実に春に向かって進んでいるんだなあ、と思う。
そんな、とある金曜日。
朝、目を覚ました直後から酷い頭痛がして、
ハルヒはその痛みを堪えるために、
顔をしかめながら、布団の中で小さく身体を丸めた。
なんだか全身がとても気だるい。
毛布と布団を被っているというのに、
背中から這い上がってくる寒気に、体が小さく震えている。
できればこのまま、しばらく休んでいれたら良かったのだが、
今日も当然仕事は入ってる。
いつまでも布団の中に居る訳にはいかない。
……くしゅんっ。
朝食の準備をしようと無理矢理起き上がったら、
今度はくしゃみが止まらなくなって、
体温計で熱を測ってみたら、37度を少し超えていた。
どうやら風邪をひいてしまったらしい。
普段は都内で民事の事件の相談を専門にしているから、
あまり出張などすることはないけれど、
この間、債務の強制執行で、
財産の差押えのために地方に行くこととかもあって、
慣れない仕事に疲れが溜まっていたのかもしれない。
まあ、単に、こんなに気温の差が激しいのに、
ここのところずっと、一張羅の薄手のコートで歩き回っていたのが、
一番の原因のような気もするけれど。
頭痛がして、熱があって、だるくて、くしゃみも止まらない。
明らかな風邪の症状、とはいえ、
微熱程度で仕事に穴を空けるわけにはいかないので、
市販の風邪薬をざらざらと喉の奥に流し込んで、
仕事に向かったハルヒだったが、
時間がたてばたつほど、
症状は治まるどころかどんどん症状は悪化して、
いつもより少し早めに仕事を切り上げて、
夜中の十二時を越える頃、マンションに帰りついた時には、
熱が今朝よりも上がってきて、歩く足もおぼつかなくなっていた。
熱を計らなきゃ、と思っていたにも関わらず、
無意識にベットの上に倒れこんで、少し、うとうとしていたらしい。
はっと目を覚まして携帯電話を見たら、
着信が2件とメールが1件入っていた。
全て同じ人物から。
時計を見たら、日付は変わって土曜日、
真夜中の二時を回っている。
帰ってきてから一時間強、寝てしまっていた感じだ。
今から電話で返すのも遅すぎると思って、
メールを開いてみることにする。
普段の週末は、大抵金曜の夜に、
ハルヒの部屋に来ることが多い彼が、
今週はホワイトデーが14日なので、
13日の土曜日の夜にハルヒの家に行く……という連絡と、
あとはハルヒの仕事を気遣ってくれている内容だった。
ハルヒはあまりイベント事に執着しない性格だったけれど、
一方の彼は、誕生日とかクリスマスとかイベントを、
かなり大事にしてくれるタイプだったので、
(まあ、それをダシにして好き勝手されている、という噂もあるが)
それに釣られてハルヒも、
最近では暦を気にするようになってしまった。
先月のバレンタインデーには、
駅前のデパートで……どういうブランドはよくわからなかったけど、
店員に進められて、少々値段が張る(といっても数千円)のチョコレートを買っていったら、
彼にとっては大した金額でもないだろうに、
ものすごく喜ばれたのを覚えてる。
で、ホワイトデーのお返しを楽しみにしておけとか、
そんなような話になっていたので、
今日のメール自体は念を押すというか、確認の意味で送ってきたものだろう。
ホワイトデーのことは事前に聞いていたことだったから、
予定自体は空けていたものの、
風邪の症状がどんどん悪化していて、
ふらふらの状態のハルヒは、ちょっと返答に困ってしまった。
風邪をひいたなんて……先輩に正直に話したら……、
ものすごく心配されそうだし……感染すわけにもいかないし……。
それに……。
『すみません。実は父が風邪をひいたらしくって、
明日は看病に実家にいってきます。
状況が分かったらまたメールしますけど、
実家に泊ることになるかもしれません』
仕方なく、父親をダシにして、
暗に『明日は会えない』という趣旨のメールを打つことにした。
電話じゃなくて良かった。
声を出したら、風邪をひいて具合が悪いということが、
すぐに彼にバレてしまっていただろうから。
かなり熱が上がってきて、ひどくぼんやりとした状況で、
なんとかメールを打ち終えたハルヒは、
送信ボタンを押した後、ぱたりとベッドの上に倒れこんだ。
* * *
続