『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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魔王様誕生日企画短編
恋人達の休日 -extra episode 1- (ハルヒ&鏡夜)
……たまにはベタに幸せな二人を書いても良いですよね?
* * *
出かけると決まってからの鏡夜の行動は、
いつも以上に迅速だった。
携帯で連絡を取って、早々に家から車を回させると、
素早くスーツに着替え、
慣れないパーティードレス姿に恥ずかしがっているハルヒの手を引き、
マンション前に到着した車の後部座席に彼女を強引に押し込む。
そうして、全ては彼の為すがままに、
気が付けばハルヒは、
都内某所の高級ホテルの一室に連れてこられてしまっていた。
「こ、この部屋は……一体……」
ハルヒが今住んでいるマンションの部屋よりも、
遙かに広いホテルの部屋に通されて、
ハルヒは、ぽけっと口を開け、
その豪華な部屋のリビングで立ち尽くしていた。
「何をそんなに驚いているんだ?」
「だって、なんか……ものすごい広さじゃないですか?」
マンションからホテルにやってくるまでに、
鏡夜が部屋の予約を取っていた様子はなかったから、
おそらく、ここまで自分たちを車で送ってくれた、
鏡夜のボディガードである橘が、この部屋を手配してくれたのだと思う。
「何を今更。スイートを取ると言っただろ?」
いや、確かにそれは鏡夜の言うとおりなのだが。
それにしたって……広すぎやしないだろうか。
「これがスイートルームなんですか?
なんか、妙に広いし、家具も鏡夜先輩の家の家具みたいに豪華だし、
ここがホテルの一室なんて信じられないです」
「正確にいうと『エグゼクティブスイート』だがな」
「それはスイートルームとは違うんですか?」
「まあ、スイートルームに比べて、
より設備が整った部屋、といったところか。
本当はインペリアルスイートを押さえたかったところなんだが、
急なことだったから空きが無くてね」
「なんですか? その『インなんとか』って」
「このホテルに一室しかない特別ルームのことだ。
まあ、それは次回のお楽しみということで、今日はここで我慢してくれ」
「我慢なんて。十分すぎるぐらい豪華じゃないですか」
「これでもこの部屋は、このホテルの客室の中では、
上から数えて三番目のランクの部屋だぞ」
「ええ! これで上から三番目!?」
この広さと豪華さで上から三番目のランクの部屋ということは、
鏡夜が当初押さえようとしていた、
『インペリなんたら』という部屋は、
一体、どれくらいの広さの部屋なのだろう。
「ここのルームサービスは、
24時間いつでも食事を頼めるから使い勝手がよくてね。
お前、何か食べたいものはあるか?」
「いえ、そんな、先輩の誕生日なんですから、
鏡夜先輩の好きなもの選んでください。
それにどうせ自分がメニューみても良く分からないでしょうし」
「なるほど。じゃあ、お言葉に甘えて」
ホテルに到着してから鏡夜は、
ハルヒがマンションにに帰ってきた直後とはまるで別人で、
不気味なほど機嫌が良さそうだった。
にこにこと眼鏡の下の目を細めながら、
早速、部屋に備えられた電話の子機のようなもので、
ルームサービスを頼んでいる。
鏡夜がフロントに電話をかけている間に、
ハルヒは、だだっ広い部屋の中を一通り巡ってみることにした。
小さなテーブルと椅子が置かれた書斎のような部屋や、
何人かで打ち合わせできるような会議用の大きなテーブルが置かれた部屋、
さらに奥には広いベッドルームもあって、
合計すると六つの、用途の異なる部屋が、
リビングから四方に繋がっている間取りになっている。
「あの……鏡夜先輩。聞くのがちょっと恐ろしいんですが、
やっぱり……とても……気になるので……、
聞いても……いいですか?」
「何だ?」
ハルヒがリビングに戻ってくると、
鏡夜はソファーに深く腰を降ろし、
背もたれに寄りかかって腕組みして、ハルヒのことを待っていた。
「あのう……一体……この部屋は……、
一泊、いくらくらいするものなんですか?」
「ん、宿泊代か?
そうだな。いつも気にしたことは無いんだが……、
相場的に一泊30万前後といったところじゃないか?」
「さ、30万!?」
料金を気にせずこういうホテルに泊まることだけでも驚きなのに、
30万という宿泊費を、さも当然とばかりにさらりと言い放つ、
彼の中の『常識』には毎度のことながら驚いてしまう。
「このランクの部屋なら妥当な線だと思うが、何か問題が?」
「そりゃ、こんなに豪華ならそれくらいするとは思いますけど、
自分が言いたいのはそういう意味じゃなくてですね、
ただ一泊するだけなのに、30万なんて、
ちょっと、もったいなくないかなあ、なんて」
「……」
ハルヒとしては、さしたる深い考えもなく、
ただ、感じたままを率直に答えただけだったのだが、
終始笑顔だった鏡夜の顔が、
ハルヒの感想を聞いて、少し曇ったように見えた。
「……お前……」
鏡夜は、まるで頭痛でも覚えたかのように、
こめかみを付近を押さえて、うーんと唸りつつ目を閉じてしまった。
何か、気に障ることを言ってしまっただろうか?
黙り込んでしまった鏡夜の前で、
ぼ~っと立ち尽くしているのも手持ちぶさたなので、
とりあえず空いているソファーに座ろうと、
ハルヒは鏡夜の前を横切ろうとした。
「ハルヒ」
ハルヒが、ちょうど鏡夜の前を通り過ぎようとした時、
鏡夜は突然ハルヒの名前を呼ぶと、
ハルヒに向かってすっと腕を伸ばしてきた。
「ひゃっ!」
鏡夜に腰の辺りを掴かまれ、
奇声を上げてしまったハルヒは、
彼が座っているソファーの方へ身体を横に引っ張られ、
慣れないヒール(当然借り物)を履いていた所為もあって、
ぐらりとバランスを失すると、
そのままごろんと、横長のソファーの上に仰向けに転がってしまった。
「な、なにするんですか、いきな……」
「お前な」
上半身を起こそうとしたハルヒの肩を、
鏡夜の両手が上から押さえつける。
「俺は今まで、極力、お前の生活スタイルに合わせてきただろう?」
「は、はい? いきなり何のことを……」
「どうせ誘ったところで、お前は全く興味もないだろうと思ったから、
クラッシックコンサートやオペラの観劇にも連れて行かず、
海外旅行に行くことも、
高級レストランに連れていくこともほとんどせずに、だ」
「それは……分かってます……よ?」
「だったら、今日くらいは俺のライフスタイルに、
お前が合わせてくれてもいいんじゃないか?」
鏡夜は、なんだかハルヒのことを試しているかのような、
意地の悪い表情でハルヒを見下ろしている。
「どうだ? それくらいは、お前にだって『簡単に出来ること』だろ」
「そ、それは、そうかも……しれま……せん……けど……」
鏡夜の言っていることは、
表面上の意味としてはわからなくは無かったが、
なんとなくそれだけではないような嫌な予感がして、
ハルヒの答える声は徐々に小さくなっていく。
「よく聞こえないな。ハルヒ、どうなんだ?」
どうやら、ハルヒがはっきり答えるまでは、
鏡夜はハルヒを押さえつけたまま、
彼女の上から退くつもりはないらしい。
「まあ、今日一泊のことですから……、
ちょっと広すぎて落ち着かない感じもしますけど……、
今更、帰るわけにも……いきませんし……」
「では、明日の朝までは『俺に合わせる』ということでいいな?」
なんだか無理矢理答えを言わされている感は拭えないものの、
ハルヒは、鏡夜の勢いに、こくこくと首を縦に振るしかなかった。
「わ、分かりました! 合わせますよ!
分かりましたから……先輩そろそろ退いてくださいってば」
「ふうん? このまま退いて……いいのか?」
「え?」
いつの間にか。
互いの吐息が唇に触れるほどに、
間近まで迫った鏡夜の顔。
優しく自分を見つめる彼の瞳。
柔らかく自分の頬を包む彼の指先。
……。
彼が今自分に、何をしたいのか、
察したハルヒはそこで、そっと目を閉じて……。
ピン、ポーン。
「……」
唐突に聞こえてきたのは部屋の呼び鈴の音色。
待ち構えていた彼の行動が無かったので、
ハルヒがそっと目を開けたら、
鏡夜が顔をしかめて部屋の入り口の方を睨んでいた。
「ルームサービス……ですかね?」
「そのようだな。随分、手際が良いことだ」
明らかに「渋々」と、鏡夜はハルヒの頬から手を離して起き上がる。
「で、何の料理を頼んだんですか? 鏡夜先……」
鏡夜に続いて起き上がろうとして、
ハルヒがすっかり油断していたところに、
一足早く立ち上がった鏡夜は、
ハルヒの顎に手を伸ばし、ハルヒの顔をくいっと持ち上げると、
「……!!」
……避ける間もなく、
ハルヒの唇の上に彼の唇が重ねられてしまった。
時間にしたらほんの数秒。
唇の先が触れただけの軽いキス。
「な、な、な」
何食わぬ顔で立ち上がった鏡夜とは対照的に、
ハルヒはぺたりとソファーの上にへたりこんでしまった。
「な、なんで、そういつも突然、
鏡夜先輩は私にこういうことをするんですかっ!!」
ハルヒの必死の抗議にも、鏡夜はくすくす笑うばかりだ。
「それは、不意打ちのほうがお前の反応が楽しいから、
……に決まってるだろう?」
「なっ……」
あまりといえばあまりの鏡夜の発言に、
唇を押さえて絶句するハルヒを残し、
鏡夜は部屋の入り口の方へ歩いていってしまう。
「ま、今の続きは食事の後にするとして、だ」
部屋のドアを開ける前。
「ハルヒ、くれぐれも……」
鏡夜は一旦ハルヒを振りかえると、
今日見た中で一番の笑顔を浮かべて、ハルヒにこう言った。
「さっきの約束は、忘れるなよ?」
* * *
続
(このくらいの糖度が、管理人の能力の限界です……)