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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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恋人達の休日 -6-

魔王様誕生日企画短編
恋人達の休日 -6- (ハルヒ&鏡夜)

約半日も彼を待たせたあげく、ようやく部屋に帰ることができたハルヒは、
煌びや
かにドレスアップした姿を、そして、首のストールで隠していた『ある物』を彼に見せる……。


* * *

今朝、ハルヒが目を覚ますと、
鏡夜があまりにぐっすりと熟睡していたので、
ここで起こすと、寝起きの悪い彼に、
また何をされるか分からない、という恐怖も若干あって、
鏡夜が自然に起きてくるのを、
ハルヒは環のノートを読んで待っていることにした。

環のノートを手に取ったのは単に時間つぶしのためではなくて、
それなりに訳がある。

ハルヒの誕生日の時には、
鏡夜は、ハルヒをなんと沖縄まで連れて行ってくれて、
日本で一番早く咲くという桜を見せてくれた。

敷地に見渡す限りのその桜は、
ハルヒに見せるためにわざわざ植えてくれたものらしい。

まあ……その日の夜はそのまま鳳家の別荘に泊ることになって、
それなりに彼にお返しをしたことはしたというか、
せざるをえなかったというか、
一体誰の誕生日祝いなんだと、心の中で毒づくことしきりだったというか……、
それはまあこの際、別の話ということで横に置いておくとして。

自分の誕生日には、
あんなにもスペシャルなことをしてもらえたのだから、
鏡夜の誕生日にも、
それなりに特別なことをしてあげたい気持ちはあるのに、
何をしたら鏡夜に喜んでもらえるのか、
なかなか良いプランが思いつかなくて、
結局あんまり普段と変わらない、
自分の部屋に呼んで手料理を食べてもらうという、
シンプルなことしかできないことを、
ちょっと申し訳ないなと悩んでいたときに、
ふと環のノートのことを思い出したのだ。

親友同士、長い間一緒にいた二人だから、
環のノート中になら、鏡夜が喜びそうなことのヒントがあるかもしれない。

理事長から渡された環のノートは数冊あって、
その中から、たまたま最初に手にしたノートの中に、

『フランス研修旅行』

というタイトルと、その下に、

『鏡夜に頼むお土産。2mのエッフェル塔の置物!!!』

との記載を、ハルヒは発見した。

環はフランス生まれのフランス育ちのはずなのに、
なぜ、エッフェル塔の置物が欲しかったのか、
そこにも不自然さを感じなくもなかったが、
ハルヒにとって問題だったのは、その書き込みではなく、
そこから引かれた矢印と、その続きの文章の方だった。

『→× ハルヒには二つもお土産を買ってきたのに』

そういえば、あの時は、鏡夜先輩からお土産でチョコレートと、
高そうなネックレスをもらったんだっけ……。

……って。


「ああああっ!!!」


ここでハルヒは、鏡夜からフランス研修旅行の土産として、
かつてネックレスをもらったことがあるのを思い出して、
つい、大声をあげてしまったのだ。

「それが、あの叫び声か?」
「だって、鏡夜先輩、去年のクリスマスに言ってたじゃないですか?
 本当はアクセサリーをプレゼントしようと思ったけど、
 使わないものをあげてもしょうがないから時計にしたって。
 私が、ちゃんと使いますって言ったら、
 実践できてないのに言われても説得力がないとかどうとか……」



(Cf.『聖夜の願い事 -4-』)

「……腕時計、ですか?」

上品に布が張られた専用BOXの蓋をハルヒが開けると、
中には淡いピンク色を基調とした時計が納められている。

「ああ。うちの父親がよく使う宝飾店に立ち寄ったら、
 お前に似合いそうなものを見つけてね。
 本当は指輪とかネックレスをプレゼントしたいとも思ったんだが、
 まあ……今回それは止めておいた」

折角のプレゼントだというのに、
ハルヒが蓋を開けたまま時計をまじまじと眺めて、
なかなか取り出そうとしないので、
焦れた鏡夜は、代わりにその時計を台座から取り出すと、
ハルヒの左腕に付けてやった。

「すごく綺麗な時計ですね、でもどうして時計を選んでくれたんですか?」

思ったとおり、ハルヒには桜色が良く似合う。

「ホスト部のコスプレ以外で、
 お前がアクセサリーの類をつけているのを見たことがなかったからな。
 どうせ贈っても使われないなら、
 毎日使える実用的なもののほうが良いだろう?」
「それは、自分はちっとも女らしくありませんし、
 普段は確かにアクセサリーなんて全然付けませんけど、
 でも、先輩が選んでくれたものなら、ちゃんと使いますよ?」
「実践できてもいないのに、そんなことを言われても説得力がないと思うが」
『実践できてない』ってどういう意味ですか?」
「……やっぱり、お前、忘れているだろう?」
 
きょとんと自分を見上げるハルヒを、鏡夜は半眼で睨むと、
彼女を抱きしめていた腕を解いて立ち上がり、
ネクタイを緩めながらバスルームの方へ向かった。
 
「忘れてるって、一体、何のことです?」

背後からハルヒの不満そうな質問が飛んでくる。

「わざわざ教えるてやるほど俺は寛大じゃない。まあいい。シャワー借りるぞ」
「だから、何のことですか!?」
 
そんなハルヒの疑問を曖昧にはぐらかしたまま、
鏡夜はぱたんとバスルームの扉を閉めた。



「ああ……『ようやく』思い出したのか?」

鏡夜はひどく呆れた表情で、
『ようやく』という部分を特に強調しつつ、
ここぞとばかり、ハルヒに嫌味を言ってくる。

「す、すみません。それで、実家に置いてあったと思って、
 今日取りに戻ったんです……そのう、今日は誕生日ですし、
 先輩に少しでも喜んでもらえたらなあいいなと思って」
「それが、どうしてこんな時間までかかったんだ?」
「それがですね……」

往復の時間を考えても、二時間はかからないと思われたのに、
事はそう簡単には終わらなかった。

実家に帰ったハルヒは、
ネックレスを保管していたと思しき場所を早速探してみたのだが、
洋服ダンスの引き出しや、勉強机の引き出しや、押入れなど、
いくら探しても、ネックレスが全く見当たらなかったのだ。

何度も何度も探しまわったのだが、
ハルヒの荷物が置いてある一帯にはどうしても見つからなかったので、
留守中の父親には悪いと思ったものの、
蘭花が専用で使っている化粧台の周りを探してみることにした。

「あ、あったっ!」

引き出しの中に、ようやくネックレスのケースを発見して、
安心したのも束の間、念のため中を開けてみると、
肝心の中身が入っていない。

「ということは、あれか? これは蘭花さんが使っていたのか?」
「そうなんです……なんだか、常連のお客さんにもらった、
 プレゼントと勘違いしてたみたいで……」
「……」

蘭花が持ち出していることは分かったものの、
今度はその本人が、何処に出かけているのかが分からない。

今日は土曜日だからバーの仕事はないし、
全く当てがないので携帯に電話をしてみても、
蘭花はどこで何をしているのか、なかなか出てくれない。
ハルヒの携帯電話に光から電話が入ったのは、
そんな状況に、ハルヒが途方に暮れていた時だった。

「それで、ネックレスのことを光に相談したら、すごく怒られたんですよ。
 『それは、絶対、今日中に探さないとだめだ!』とか言われちゃって、
 光から、馨とハニー先輩とモリ先輩にも連絡してくれて」
「ふうん。光が、ねえ」
「あれ? なんだか意外そうですね」
「…………まあな」

光は、

『もしかしたら、三連休だから、職場で旅行にでも行ってるんじゃない?』

と予想し、すぐに、蘭花の同僚の娘であり、
ハルヒ達の友人でもあるメイに連絡をとってくれた。

光の読み通り、メイからは、

『そういえば、慰安旅行で熱海に行くとか言ってたわよ』

という情報を得ることができた。
しかし、何処の旅館に泊まっているかまではわからないという。

そこで、光邦と崇が活躍することになったのである。

「ハニー先輩とモリ先輩が、まあ、何をどうしたのかは、
 私には正確にはわからないんですけど、
 警備関係の会社経由で、熱海の全旅館の宿泊者名簿を確認させて、
 父の泊まっている旅館を探し出してくれたんです」
「……なるほど」

宿泊先が分かったところで、次に登場したのが、
常陸院家所有の自家用ヘリコプターだった。

光は馨と一緒に実家のアパートまで車で迎えに来てくれて、
常陸院邸で合流した光邦と一緒に、
何かあったときのために東京で待機することになった崇を残して、
四人で熱海に飛ぶことになったのだ。

「それで、あの騒音か」
「気付いてたんですか?」
「聞きなれた音だったからな。
 だが、お前がどうしてヘリに乗ってるかが分からなかったから、やっと納得したよ」

熱海で、三人は無事蘭花に会うことができて、
ネックレスを受け取ると、すぐさま常陸院邸に引き返してきた。

東京に戻ってヘリコプターを降りた直後に、
鏡夜からかかってきた電話で、
ハルヒは『もうすぐ着く』と言っていたこともあって、
一刻も早く自分の部屋に戻りたかったのだが、
皆にお礼を言って常陸院邸を出ようとしたとき、
光と馨に引き止められてしまった。

「ハルヒ、お前、その格好でそのネックレスつけていくつもり?」
「うん。そのつもりだけど?」
「もう半日以上鏡夜先輩を待たせてるんでしょ?
 こんなに待たせてるんだから、ここは一つ、
 ネックレスに合わせてドレスアップくらいしてかないと。
 ほら、僕らがちゃんとコーディネートしてあげるから」
「え、ええええ、そんなの別に、いいってば、恥ずかしいし」
「だめだよ。折角素材がいいのに、
 相変わらずハルヒはファッションには無頓着なんだから。 ねえ、光?」
「馨の言うとおりだよ。それに、
 その格好にこのネックレスを合わせるなんて、俺には絶対許せない!

光と馨の剣幕に負けたハルヒは、
そのまま常陸院邸で何着かドレスを試着させられ、
続けて、髪までセッティングされてしまう。

「これなら大丈夫! 完璧!」

と、二人に太鼓判を押されるまでが、小一時間。

今、鏡夜の前に曝している格好がようやく完成し、
ハルヒはやっと、常陸院邸からハルヒの部屋へ車で送ってもらえることになったのだ。



「なるほど。今日はそういうことがあったのか」

この半日に起きた出来事の全てを、
ハルヒは鏡夜の顔色をちらちらと伺いながら説明して、
全てを話し終えたところで、もう一度、鏡夜に頭を下げた。

「すみません。本当に、折角の誕生日だったのに、
 もうあと二時間しか残って無いですし、
 ……とりあえず……先輩、まだ夕ご飯とか食べてませんよね?
 これ、すごく恥ずかしいので、そろそろ着替えますね。
 何か食べたいもののリクエストはありますか?」

ネックレスの存在を忘れていたこともそうだが、
ずっと鏡夜を一人きりにしていたことも後ろめたくて、
鏡夜と目を合わせることもできず、
ハルヒはそそくさと立ち上がって、クローゼットに向かおうとした。

「……おい……ちょっと待て

その時。

背後から、明らかに怒った様子の鏡夜の声がして、
歩き出そうとしたハルヒは、
座ったままの鏡夜に、背後から腕を捉まえられてしまった。

「わっ!」

鏡夜がハルヒの腕を後ろに引っ張ったので、
ハルヒは後ろ向きにバランスを崩して、
鏡夜の足の上にどたっと倒れこんでしまう。

「え、あの、きょ、鏡夜先輩?」
「お前、まさか、今日あったことを一方的に喋っただけで……」

膝の上に乗っかったハルヒの、
手首をぎゅうっと握った鏡夜は、下からハルヒを睨みつけている。



「俺が許す……とでも思ってるのか?」



* * *

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