『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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魔王様誕生日企画短編
恋人達の休日 -2- (鏡夜&ハルヒ)
誕生日の朝(というか昼)に、彼女の素っ頓狂な叫び声で眠りから覚めた鏡夜。
寝起きでぼんやりとしている鏡夜を残して、彼女は急用で出かけてしまって……。
* * *
彼女の部屋で彼女の帰りを待っていると、
鏡夜の携帯電話に着信が入った。
彼女からだろうかという期待に反して、着信の名前は別の人物だった。
「……」
出た瞬間の大声を予想して、
やや耳から離し気味に携帯電話を持つと、
鏡夜は通話のボタンを押す。
『きょ~ちゃん、お誕生日おめでとおお~!!!』
予想以上の大声が、鏡夜の耳元で弾ける。
「……ハニー先輩、お久しぶりです」
『久しぶりだねぇ。元気~?』
「ええ、特に変わりはありませんよ。わざわざお電話ありがとうございます」
『鏡ちゃん、相変わらず仕事忙しいみたいだけど、誕生日くらいは休めてるの?』
「ええ。今日は休みですよ。
ハニー先輩は、確か、今、アメリカにいらっしゃるんでしたよね?
そちらはどうです? 例の問題の余波で、
日本企業への風当たりがは強いんじゃありませんか?」
光邦は大学卒業後、埴之塚家の新規事業として、
玩具メーカーを立ち上げて、いまや海外進出も果たしている。
『う~ん、まあ、最初はね。でも実はちょっと風向きは変わってきたんだ』
「というと?」
『日本のメーカーって言っても雇ってる人はほとんど現地の人だからね。
あまりにネガティヴキャンペーン張って工場閉鎖されたら困るって、
一部の有力紙が擁護に回りはじめたんだよ。
でも、アメリカで聞いた限りだと日本のメディアは相変わらずみたいだね」
『ええ。相変わらずですよ。困ったことに』
「本当は、年末のクリスマス商戦まではアメリカにいるつもりだったんだけど、
実は、今日、日本に帰ってきたところなんだ。
もう一つの仕事の方で、急に呼びもどされちゃって』
「もう一つというと要人の警備関係です?」
『うん。なんだか日本も最近物騒だよねぇ~。
あっ、そうだ! 鏡ちゃんは今どこにいるの?
さっき、鏡ちゃんに誕生日プレゼントのアメリカ土産を渡そうと思って、
鏡ちゃんの家に寄ったんだけど、いなかったから』
「え……あの……」
今いる場所を答えるのを少し渋っていると、
鋭く状況を察したハニーが代わりに答えを言ってくれた。
『あ、そっかぁ。ごめん……今、ハルちゃんの部屋にいるんだ?』
「はあ……まあ……そうです……」
別にいけないことをしているわけでもないんだし、
もっと堂堂としてても良いとは思うのだが、
色々と今まで二人の事を気にかけてくれていた光邦を相手にすると、
どうも弱みを握られているようにも思えて、
どことなく照れくさい気分が未だに抜けないのだ。
『そっかぁ。ハルちゃんとも久しぶりにお話ししたいな。
少し代わってもらってもいい?』
「いえ、それが……急用ができたようで、今、出かけてるんです」
『そうなの? じゃあ、鏡ちゃん一人でお留守番?』
「そうなりますね」
『ふうん……』
鏡夜の答えに、何か考え込んでいた光邦は、
『ねえねえ、きょ~ちゃん。僕、聞きたいんだけど』
と、唐突に鏡夜に質問をしてきた。
「何です?」
『鏡ちゃん、最近はハルちゃんと喧嘩とかしてない? 仲良くやってる?』
「まあ、それなりには」
『本当に?』
「ええ……ハニー先輩。どうしてそんなに詳しく聞きたがるんです?」
二人の関係についてはとっくに知っているだろうに、
最近の様子を、事細かに質問してくる光邦の様子を、
なんとなく奇妙に思って、鏡夜は逆に聞き返した。
『実は、かおちゃんに頼まれてて』
「馨に?」
『うん。かおちゃんは、ずっと、ひかちゃんの味方だからさ、
鏡ちゃんとハルちゃんのことがすごく気になってるみたいだよ?
だから、二人の様子に変化があったら教えてって、僕、頼まれてて~』
「ああ、なるほど。そういうことですか」
鏡夜とハルヒが付き合っているのは、
今やホスト部員達の周知の事実であったのだが、
光からは堂堂と『ハルヒが今でも好きだ』宣言をされていたし、
横取りとまではいかなくても、
二人の仲が悪くなるような隙があれば自分が、と、今でも機会を伺っているらしい。
「残念ながら、光と馨の期待には応えられそうにありませんが」
『そっかぁ。まあでも、かおちゃんや、ひかちゃんには悪いけど、
僕はそのほうが嬉しいかな』
馨に言われて二人の様子を探っていた、なんて言うから、
光邦は馨と光の味方なのかと思いきや、
光邦は鏡夜とハルヒの仲が上手くいっていることを喜んでくれているようだ。
それから、しばらく他愛のない話をしただろうか。
『今日はさすがにお邪魔だよね。
僕、このまましばらく日本ににいると思うから、
来週いっぱいはちょっと忙しいんだけど、
その後で時間が合ったら、また皆で遊ぼうね』
「はい。是非」
久しぶりということもあって、かなり長い間電話をしていたように思う。
通話を終えてベッドの置時計を見たら、
六時半を過ぎようとしているところだったから、
三十分以上、話し込んでいた計算になるが、
昼に出かけて言った彼女は依然帰ってこない。
置いてけぼりの虚しさはさておいて、
流石に連絡一つも無いことに少し心配になってきた鏡夜は、
彼女の携帯電話に連絡を入れてみたのだが、
よほど『急用』とやらに手間取っているのか、彼女は電話にも出てくれない。
とりあえず「一段落したら連絡をくれ」と、
留守番電話にメッセージを吹き込んでから、
鏡夜は独り部屋の中で溜息をついた。
* * *
続