『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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魔王様誕生日企画短編
恋人達の休日 -1- (鏡夜&ハルヒ)
彼女と晴れて恋人同士になってから一年後、再びやってきた彼の誕生日。
去年と同じように、鏡夜は彼女の部屋を訪れていたのだが……。
* * *
11月22日。午後18:00頃。
時間的にはまだ夕方といってもいい頃合かもしれないが、
冬の陽は、もうすっかり暮れて、
窓の外を見上げれば、真っ暗に夜の空が広がっている。
カチャカチャと、一心不乱にパソコンのキーボードを打ち続けていて、
ふと、カーテンを開けっ放しにしていたことに気付いた鏡夜は、
コタツから立ち上がると、カーテンをさっと横に引いた。
そして、再びコタツに戻ると、
パソコンの前で頬杖をつき、憮然とした表情で画面と睨めっこをし始める。
確か、今日は俺の誕生日だったはずだが……?
鏡夜がいるのは『彼女』の部屋。
しかし、部屋の中には鏡夜の姿があるだけで、他に人影はない。
11月22日という彼の誕生日は、翌日23日が祝日ということもあって、
週末にくっつくと、暦の上では連休になることが多い。
もちろん、カレンダー的に連休とはいっても、
鏡夜には、平日休日関係なく、常に仕事は詰まっているのだが、
弁護士事務所の相談窓口を開けている平日よりも、
法廷が閉まっている祝日の方が、彼女が予定を立てやすいということもあって、
鏡夜は、昨日、夜遅くまでやりかけの仕事に没頭して、
なんとかこの連休を自由に使えるように調整してきたのだ。
年末は割りと忙しい時期なので、
休日を丸々休もうとすれば、
その分、前倒しする仕事の量が増えるのはどうしようもない。
そんなわけで、昨日、鏡夜が彼女の部屋に着いたのは、
深夜三時は優に過ぎた、
深夜というより早朝といったほうがいい時間のことだった。
今日はかなり遅くなりそうな予感がしたので、
『先に寝てていい』というメールは打っておいたから、
部屋の中に入ると、彼女は先にベッドで一人すやすやと眠りこんでいた。
彼女の仕事も、自分と同じくらい、いや、それ以上に大変なことは分かっている。
本当は、もっと自分の身近で、目の届く所で、
一緒に働いてもらいたいとは日々思うけれど、
彼女は、鏡夜と一緒に働けるための実力をつけるためにも、
今は敢えて別の場所で働いているんだと言っていたから、
その意思を無視してまで、無理やり自分のところに来てもらうわけにもいかない。
鏡夜としては、別に彼女は仕事なんてしなくたっていいと思ってるし、
あんまり苦労をさせたくない、というのが本音だったりするのだが、
少し前に、鏡夜が彼女のためを思って色々隠していた事が、
ひょんなことから彼女にバレてしまったことがあって、
このとき、鏡夜は、彼女にかなりこっぴどく叱られてしまい……、
いや、叱られたというより、
すさまじい癇癪を起こされてしまった、というほうが正しい気もするが、
それ以降、彼女がやりたいということを、
過保護に一方的に止めることはしないでおこうと誓った。
寝言一つ言わずに深く眠り込んでいる彼女を、
起こしてしまわないように、そっと隣に潜り込んだまではいつものこと。
明日は彼女と何をしようか、何処かへ出かけようか?
それとも家でのんびりすごそうか、などと、
取り留めなく考えている間に、鏡夜も眠りに落ちたわけだが……。
その翌日。
「ああああっ!!!」
時間は定かではないが、おそらく、正午は回っていたと思う。
鏡夜は彼女の素っ頓狂な叫び声に、
無理矢理叩き起こされることになってしまった。
一体何事かと、のそっとベッドの上で起き上がって、
先に起きていたらしい彼女の方をみたら、
なんだか、彼女はばたばたと部屋の中を駆け回り、
終いには、コートを羽織りはじめた。
「どう……したんだ?」
ぼんやりとした口調でそう尋ねると、
彼女はかなり慌てた様子で、バッグを片手に持ち、
「すみません、鏡夜先輩。あ、お誕生日おめでとうございます!
あの、ちょっと急用ができたので出かけてきます!
ごはん用意しておきましたので起きたら食べてくださいね。すぐ戻りますんで」
と、早口で言い捨てて、部屋を出て行ってしまった。
「……」
理由はよく分からないが、
とにかく彼女に何か用事ができて出かけた、ということだけは認識できた。
しかし、寝起きの鏡夜の頭には、
彼女がそれまで何をしていたのか、何故突然叫び声を上げたのか、
その辺りのことは全く分からなくて、
彼女が、ばたばたと部屋を出て行ってからおよそ数十分後、
ようやく鏡夜の意識がはっきりしたとき、
彼はひとりぼっちで、部屋の中に残されていた……というわけだ。
仕事はそれなりに終わらせてきたので、
急いで着手しなければいけないものは何も無い。
仕方なく、鏡夜は独り、彼女の用意してくれた庶民的な朝ごはんを食べ、
その後はネットで株価や通貨レートの変動をチェックしたり、
海外のニュースサイトなどを暇つぶしに巡りながら、
鏡夜は彼女の帰りを待っていたのだが……なかなか帰ってくる気配がない。
もしかすると、弁護士の仕事の関係で、
急にクライアントと会うことになったのかもしれない。
彼女の仕事は理解しているつもりだったので、
こういう日に急用が入ってしまうことは仕方ないにしても、
夕方になっても以前、連絡の無いまま帰ってこない彼女に、
鏡夜は少し苛々とし始めていた。
一体、ハルヒはどこへいったんだ……?
* * *
続