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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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私の心の半分 -6-

君の心を映す鏡 番外エピソード
私の心の半分 -6- (鏡夜&ハルヒ)

「お友達カテゴリー」は、彼女への気持ちが誰にも負けないと、言い切れるまでの助走期間。

* * *

今日はどうやら、現実の時間が、
さっきまで見ていた夢に半分くらい喰われてしまっている気がする。
ゆるゆるとすすむ時間の中で、彼女との会話は続く。

「気付いてなかったですか?」
「まあな」

自分の首の、少し下あたり、
胸に抱いたままのハルヒから聞こえてくる声が、
なんだか自信なさげに震えている。

もしかすると、環の話をしてしまったことを、
少し後悔しているのかもしれない。


『鈍いという点では、奴も似たようなものだったか』


単なる独り言のつもりで、ぽろっと漏らした言葉が、
結果としてハルヒに環の話をさせたしまったわけだが
鏡夜がハルヒの話を聞きながらずっと黙っていたのは、
少し感傷に浸っていた所為であって、
別にハルヒが環の話をしたことに、腹を立てていたからではない。

「奴の思考回路は、大方、理解していたつもりだが、
 だからといってあいつの考えてたことが、全て分かるわけはないだろう?」
「そうですか?」

相変わらず、彼女の声のトーンは小さいが、
これだけ傍にいればそれだけでも十分彼女の声は聞こえる。

ついさっきまで、こちらの機嫌を伺っていた彼女が、
少し寂しそうに聞き返してきた。

「なんだ? 随分不満そうだが」
「いえ、不満というか……ちょっと意外だったもので」
「何がだ?」
「だって、鏡夜先輩っていつも、
 人の考えを怖いくらいに読むじゃないですか?」
「その、人を魔王のように扱うのはどうにかならないのか?」
「感心してるんですよ……まあ、今でも時々怖いけど
「それは独り言のつもりか? 聞こえてるぞ、ハルヒ」

からかわれたお返しに、首筋をくすぐってやったら、
素っ頓狂な声を上げたハルヒは、
身をよじって鏡夜の腕から逃げようとする。

「ま……まあ、魔王云々は別としてですね。環先輩がいつも言ってたんですよ」
「どうせ俺に対する愚痴か何かなんだろう?」
「いえいえ、環先輩は、いつも鏡夜先輩を褒めてましたよ?

じたばたと足掻いた結果、逃げられないと悟ったハルヒは、
自分をくすぐり続ける鏡夜の左手を、両手で握り締めて押さ込むと、
弾んだ息を戻すために、何度か深呼吸している。

「鏡夜先輩って、冷たくみえるかもしれないけど、実はすごく熱血で、
 いつも黙って影で動かれたりするのは、ちょっと腹が立ったこともあるけど、
 でも、それは大抵間違ってないし、
 自分がやりたいって思っていることを、口に出さなくても、
 いつの間にか根回してたりして、ちゃんとかなえてくれるスゴイ奴だって。
 だから、あの頃の環先輩がどんなことを思っていたのか、
 鏡夜先輩なら実は分かってたんじゃないのかなって思ったんですよ。
 でも、鏡夜先輩にも環先輩のことで、分からないことがあるんですね」
「それは当り前だろう。大体、俺は……」

と、呆れ顔で頷きかけた鏡夜は、
突然、ハルヒから手を離し、ベッドの上で、がばっと上半身を起こした。
布団の外に出た肩口に、ひんやりと冬の寒さが張り付く。


『鏡夜は俺の考えてること、何もかも見通してるみたいだし。
 それに、いつだって……』



心の中に親友の、憎らしいくらいに幸せそうな笑顔と、
その笑顔と共に聞いた言葉が浮かび上がる。



『鏡夜は俺が何も言わなくても、俺がして欲しいことしてくれるから』



ああ、そういえば、あの馬鹿はいつもそんなことを言っていたか。
ホスト部なんて、随分突飛で奇抜なアイディアを言い出したあの日から。

「鏡夜先輩? どうかしました?」

ハルヒの言葉を無視したまま、
鏡夜はぼんやりと部屋の壁を見つめていた。

今でも『夢であったなら』と願ってしまう、あの暗黒の夜、
環が最後に選んだのは、今、自分の傍にいる彼女。

彼女だけが最後に環の声を聞くことが出来たことを、
鏡夜は、実のところ、ずっとずっと気にしていた。
表向きは何一つ気にしていない振りを装いながら。

それは、余りにも馬鹿らしい嫉妬。

分かっていたけれど、消せなかった、その醜い感情。
今でも、夢に見てしまうほどに。

ああ、でも、ハルヒには伝えたかもしれない。

地上に堕ちた彼女の心の傍に舞い降りて、
散らばった彼女の欠片を拾いながら、
『それでもお前はまだいい』とか、
『最後に環の言葉を聞けたのだから』とか、
まるで彼女を羨むような言葉を、恥も外聞もなくぶちまけた記憶がある。

それにしても、だ……。


今まで散々、人を好き勝手振り回しておいて、
最後の最後で、俺に対する仕打ちが……これか?



鏡夜は、心の中で、独り自分を嘲笑う。

なるほど、環。
つまり、お前は俺にこう言いたかったわけか?

俺には何も伝えなくても、大丈夫なのだと。
俺が今まで長い間お前の傍に居て、
お前の考えをいつも先回りしてお膳立てしてきた、それを信じて。

言葉なんてなくても、俺なら絶対に、
最後に伝えたかったお前の気持ちに気付くはずだと、
お前はそう俺に言いたかったわけか? 

「……くくく」
「先輩?」
「……あの、馬鹿が……」

鏡夜の口元に自然と笑みが浮かび、
唇の隙間から小さな吐息が漏れる。


「俺は超能力者でも何でもないと、ちゃんと忠告しておいたはずなのにな」


* * *

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