『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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「う~ん。どうしよう……」
炬燵に入って熟睡している鏡夜の横顔を、
傍に座ってじいっと眺めながら、
ハルヒは今、ものすごい決断に迫られていた。
嫌なことを先延ばしにしていても、
いつかは着手しなければならないわけで。
……って、別にそんなに大袈裟に、
表現することではないのだけれど。
要するに。
ついさっき、お風呂がお湯が、
すっかり溜まってしまった、というわけで……。
「鏡夜先輩、お風呂の準備ができました、よー……?」
囁くような小さな声で、とりあえず呼びかけてみたけれど、
当然、鏡夜はぴくりとも反応しない。
はーっと溜息をついたハルヒは、
頬を軽くぱちんと叩いて気合を入れた後、
ごくりと唾を飲み込んで、
いよいよ、魔王様の肩を揺すって起こそうと、
意を決して鏡夜の方に手を伸ばした。
その時、鏡夜の身体の向こう側、
背広が絨毯の上に脱ぎっぱなしで放置されていることに気がついた。
炬燵でうたた寝してる姿も、今日初めて見て、
珍しいなあと思っていたけれど、
高そうな背広をぽんと放りだしているのも、また珍しい。
よほど、疲れていたのだろうか。
シワになっちゃうから、ハンガーにかけなくちゃ。
と、またも自分に言い訳して、
鏡夜を起こすことを回避したハルヒは、
立ち上がって、炬燵の向こう側に回り込むと、
その背広を拾い上げた。
「あ、何か落ちて……」
内ポケットからだろうか?
持ち上げた時に、するりと絨毯の上に、
「二つのもの」が転がり落ちた。
一つは、ハルヒの部屋の合鍵。
もともとは、鏡夜が勝手に作ったもので、
(これに対しては色々と言いたいこともあるけれど)、
とりあえず一度、ハルヒに返された後、
改めてハルヒから鏡夜へ手渡して以来、
常に持ち歩いてくれているようだ。
そして、もう一つは、小さくて赤い物体。
正確にいうと「二つの物」というか、
合鍵に括りつけられている赤いアクセサリーが、
鍵と一緒になって落ちてきてしまったようだ。
鏡夜が部屋にやってくる前に、
既にシャワーを浴びて部屋でくつろいでいたハルヒは、
コンタクトを外してしまっていたから、
近眼の視界は足元でぼけて、細かいデザインまでは分からない。
鏡夜先輩が、鍵にアクセサリーなんて付けてるんだ……しかも、赤……?
今日は、炬燵で転寝したり、背広を放置したり、
合鍵になにやら赤いアクセサリーを付けてたり、
鏡夜の意外な一面が沢山見れて貴重だなあ、などと考えながら、
ハルヒは鍵と一緒に、その赤い物体を拾いあげる。
「え……これって……」
モノトーンを基調としたファッションを好む鏡夜にしては、
真っ赤なアクセサリーなんて、らしくないなあと驚きながら、
その赤い物体を手にとったハルヒは、
それが、「見覚えのあるもの」であることに気が付いた。
「鏡夜先輩……まだ、これ持ってたんだ」
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