『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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君の心を映す鏡 -50- (ハルヒ&鏡夜)
やっとハルヒに告白したというのに、鏡夜の家に入り浸る環の様子が気になって話を聞いてみれば、
ハルヒをデートに誘うことは、鬱陶しく思われないか不安があるらしい。それを聞いた鏡夜は……。
* * *
鏡夜と環の喧嘩も落ち着いて、年も変わった一月、
センター試験を翌週に控えた金曜日の夜。
『明日から一週間、環の相手をしてやってくれないか?』
鏡夜からハルヒの自宅に電話が入り、開口一番、
鏡夜は、ほとほと呆れたといった感じでハルヒに頼み込んできた。
「……は? 相手って……自分がですか?」
『他に誰がいるんだ』
「はあ、まあそうですよね。でもどうして急に、そんなことを?」
『先月喧嘩して依頼、奴は何かと理由をつけて、俺の家に来るからな。
さすがに試験前一週間くらいは静かに過ごしたいんだ』
「ああ、そういえば来週はセンター試験でしたよね」
そう答えながら、ハルヒは壁にかけてあるカレンダーで日付を確認した。
今日は1月11日。
来週にはセンター試験が行われて、
そこからはいよいよ受験シーズンも本番となる。
「でも、馨から聞きましたけど、鏡夜先輩が外部受験するのって、
環先輩を追い込むためとかなんとか。でも一応、受験はするんですか?」
せっかく環と仲直りしたわけだし、
環を追い込むという鏡夜の当初の目的も達成したわけだから、
外部受験を止めるのではないか、という憶測が、
鏡夜を除くホスト部員達の間で流れていたのだが、
喧嘩が収束しても、鏡夜は受験を止める様子はなかった。
『それとこれとは話が別だ。
俺は別に環のことだけで国立受験するわけじゃない。
まあ、隠していたことは意図的だったけどな。
お前には前に説明しただろう?』
確かに、鳳家三男という鏡夜の立場を思えば、
兄達が辿ったルートとは別の道を選ぶという、
その進路を言いだすのは、余程の覚悟があってのことだろうし、
鏡夜の性格上、一度やると言い出しておいて引っ込めるというのも考えにくい。
「そういえば、そうでしたね。でも、鏡夜先輩なら、
今更、家で猛勉強しなくても大丈夫そうですけどね。
学校でもセンター試験用の特別授業をやっているわけですし」
『環の相手はそれなりに体力を使うんでね。
とにかく、試験前の最後の土日だから、
これから一週間……最低限今週末だけは、奴を俺の家には来させるなよ』
鏡夜からの頼みというのは、元々断れる類のものでは無いし、
少なくとも、受験直前に集中したい、という気持ちは、
高校受験で推薦を取るために、
猛勉強したハルヒには分からない気持ちではなかったから、
ハルヒは素直に頷いておくことにした。
「わかりました。でも、来させるなと言っても、
自分はどうしたらいいんでしょう?」
『お前から、あの馬鹿を誘うなりして、
デートの一つでもしてやったらいいだろう?
一応、ああ見えてもうちの学年の次席だからな。
この際、勉強でも見てもらったらいいじゃないか』
この時期は、入試直前の三年生だけではなく、
下級生達も、この時期は期末考査前ということもあって、
テスト勉強に追われている。
特にハルヒは、特待生制度を利用し続ける条件として、
主席のキープがかかっていたので、
実は今日もテレビも見ずに問題集を解いていたのだ。
「で、デート?」
なので、二人で勉強、という提案は、
ハルヒにとっても非常に有意義だったかもしれないが、
むしろハルヒが過剰に反応してしまったのはその前の単語で、
変に意識してしまって、声が裏返ってしまった。
先月、環に告白をされてから、
環は毎日のようにハルヒにメールをまめに送ってくるし、
ハルヒも慣れないながらも、それに返信をしたりしていたのだが、
二人でどこかに出かけたいという環の申し出は、
ハルヒは時期が悪いとずっと断っていた。
受験シーズンだからというもっともな理由がちゃんとあったけれど、
実際、少し恥ずかしい気もしていたからだ。
それに……。
『なにをそう驚く? 環は父親気取りはやめると言って、
お前にちゃんと告白して、晴れて恋人同士になったんだろ?』
「え、まあ、周りから見れば、当然そうなりますよね」
先月以来、ホスト部員達の様子は、
もうハルヒと環が正式に付き合っていることが前提で、
二人を周りで温かく見守るモードになっているのは、
さすがに鈍感なハルヒにも分かったけれど、
実際のところ……ハルヒと環の仲は皆が想像しているものとは少し違っていた。
『なんだ? その煮え切らない言い方は』
鏡夜がこう聞いてくると言うことは、
きっと環は鏡夜には話していないのだろう。
「はあ……まあ……環先輩が父親設定を止める、というのは、
鏡夜先輩のおっしゃる通りなんですけど」
環が自分に告白に来た、あの日の夜のやりとり。
それは、余り外聞のいい話でもなく、
どちらかといえば恥ずかしいというか、
かなり間抜けた状況だったのではないかと、ハルヒは思っていたから、
出来れば隠しておきたかったけれど、
ちゃんと答えなければ、鏡夜が自分を解放してくれることもないだろう。
「えっと、なんだか皆が盛り上がってるところ、
非常に申し訳ないというか、どちらかといえば、
ものすごく間抜けと言うか、恥ずかしい話なんですけど、
……あの、笑わずに聞いてもらえます?」
『一体、何の事だ?』
「実はですね……」
ハルヒは無意識に、指先で鼻の頭をぽりぽりと掻く。
「まだ自分達は正式に恋人っていうわけじゃないんですよ」
と、仕方なく鏡夜に自分達の現在の状況を打ち明けたら、
数分前に自分が発したのと同じ疑問符が、今度は鏡夜の口からぽろりと零れた。
『……は?』
* * *
続