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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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君の心を映す鏡 -47-

君の心を映す鏡 -47- (馨&鏡夜&光)

馨は、鏡夜を問い詰める。鏡夜が環を怒らせることができたのは、そこに鏡夜の本気の気持ちが、
あったからではないかと。本当に、環とハルヒが結ばれる、この結末に後悔していないのかと。

* * *

「そこまで言うなら……一応、念のために確認するけどさ。
 鏡夜先輩は本当にこの結末に後悔していないんだね?

馨が質問すると、鏡夜の足が止まったので、
一体どんな返事が返ってくるのだろうと、
馨はじっと鏡夜の背中を見つめていた。

「……」

そのまま無言で、奥の勉強部屋へ入って行った鏡夜は、
数枚の紙を手に、メインフロアに戻ってきた。

「それに答える前に一つ、お前に確認したいことがあるんだが」

鏡夜はプリンターから打ち出された用紙を、ぱさりと馨の目の前に置いた。

「今日、お前が光を一緒に連れてきたことには驚いたんだが、
 一体どう理由だ? 俺は、お前一人にだけ、今日のことを頼んだはずだが?
「ああ……それはね」

金曜日の夜。

時間は夜の十時を少し回った頃。

その日、常陸院邸では、馨と光の母親が主催で、
留学時代の恩師や友人その他関係者数十人を招いての、
ホームパーティーが行われていた。

【華やかな食卓】

一通り食事が終わって歓談しているときに、
向こうの大学の雰囲気とか、講義の様子とか、
色々質問してみようということになって、
馨は、予め取り寄せてあった学校案内のパンフレットを取りに、
一旦、自分の部屋へ戻ってきていた。

パーティーが始まる直前まで、光と一緒に読んでいたから、
パンフレットはベッドの上に無造作に広げられている。

それを拾い上げようとしたとき、
窓際の充電台に置きっ放しになっていた携帯電話のうちの一つ、
自分の携帯電話の着信ランプが点灯しているのに馨は気が付いた。

「あれ?」

携帯電話を取って画面をチェックした馨は、
一瞬、何かの間違いじゃないかと思ってしまって、
もう一度、表示されている人物の名前とその時間を確かめた。

【12/7 21:50 鳳鏡夜】

鏡夜先輩から僕に電話なんて、一体、何があったんだろう?

鏡夜が外部進学のことを環に隠していたせいで、
環の機嫌が悪くなったところまでは、
相変わらずの夫婦喧嘩のように思えたけれど、
昼休みに第三音楽室から帰って来たハルヒの様子が変だったので、
休み時間に光とタッグを組んで聞いてみたら、
詳しいことはわからないけど、誤解がどうとかで、
二人の喧嘩は、朝よりも深刻な状況になってしまっているようだった。

環と鏡夜の喧嘩は、光と馨にとって心配事ではあったから、
その当事者から話が聞けるのであれば、それに越したことはないけれど、
このタイミングで自分のところに電話がかかってくるというのは、
なんだか、厄介なことに巻き込まれそうな嫌な予感がした。
留守番伝言サービスに、何一つ言葉が入っていないのも余計に不安をかきたてる。

でも……当然、無視するわけにもいかないよね……。

余り気は進まなかったものの、
鏡夜からの電話にかけ直さないという恐さがそれに勝ったので、
馨は左手にパンフレットを、そして右手で携帯電話を操作して、
ベッドに腰をかけて、おずおずと電話をかけ直して見た。

『馨か。接待中にすまないな。パーティーはもう終わったのか?』

まるで、携帯を手にして待ち構えたんじゃないかと思えるほど、
鏡夜が電話に出るのは素早かった。

「いや、まだやってるけど、ちょっと部屋に戻ってきたとこ。
 だからあんまり時間ないんだけど、僕に何か用?」
『ああ、そんなに長い話じゃない。
 実は、お前に折り入って頼みたいことがあるんだ』
「鏡夜先輩が、僕に……頼み事?

嫌な予感的中……なのかな、これは。

わざわざ夜中に電話をかけてきて、
しかも、何時になるか分からない折り返しの電話を、
今か今かと待っていたくらいだから、ただ事ではないだろう。

『なんだ、嫌そうだな?』

こちらの表情も見えないのに、
なんでこうもずばっと、こっちの考えが読まれてしまうのか。

「い、いや、そんなことはないよ。
 鏡夜先輩が僕に改まって頼みごとなんて珍しいなって思ってさ」
『どうしても、俺一人だとスムーズに解決できそうになかったんでね』
「そうなんだ。で、頼みごとって何?」

馨としては、面倒なこと(特に鏡夜からの)は、
出来ることなら断りたかったのだが、
さすがに「魔王」名高い鏡夜の頼みを、ストレートに断る勇気は無い。

『実は環の機嫌を直すために、お前にちょっと手伝ってもらいたくてな』
「殿の機嫌? 僕の助けが必要って、
 殿って鏡夜先輩の受験のこと、そんなに怒ってるんだ?」
『いや。環が怒っているのは俺の進路のことじゃない』
「え、違うの?」
『まあ、そもそもの喧嘩のきっかけはそうかもしれないが、
 だが、今、奴が怒ってるのは別のことだ』
「別のこと? 殿は一体何に怒ってるわけ?
『……』

少し不自然に、会話の間が空いた。

携帯の電波でも悪くなったのかと多い、
馨はベッドの上で体の向きを変えてしまったほどだ。

「あれ、鏡夜先輩聞こえてる?」
『……ハルヒ

自分の声が届いていないのかと、馨が聞き返したら、
鏡夜の口から出てきたのはハルヒの名前だった。

『ハルヒのことで、俺と環は喧嘩になったんだ』
「ハルヒのこと?」

心臓がどきりと跳ねる。

『今日、昼に音楽室でハルヒと一緒にいたときに、
 環が教室に入ってきて、俺達が二人でいるところを見て、妙な勘違いをしてね』
「勘違いって……あ~ハルヒが言ってたけど、
 二人でもつれて転んで立ってやつ? それに嫉妬とか、そういうこと?」
『はっきり嫉妬してくれたんだったら、まだ楽だったんだがね。
 あの馬鹿は相変わらず家族設定がどうのと言い出したんで、
 さすがに俺もうんざりでね。
 だから、俺は……わざとあいつを怒らせることにしたんだ

一年前。

馨がハルヒへの恋心に一つの区切りをつけた辺りから、
光のために、ハルヒの周りの人間関係により注意をするようになって、
その中で、環以外に、目に留まった人物は一人だけ。

馨はずっと鏡夜のことを疑っていた。
鏡夜がハルヒに対して、無自覚の好意を抱いているんじゃないかと。

「怒らせた……殿を……わざと?」
『ああ』

だから、鏡夜が内部進学をしないということを決めたとき、
「人脈を広げたい」という表向きの理由なんて全く信じずに、
馨はかなり穿って、その裏にある本当の理由を考えていた。

桜蘭学院の理事長の息子だから、
当然大学部に内部進学するであろう環と、
もともと、奨学金を得て特待生として、
そのままうちの法学部に進む目的で学院に入学してきたハルヒ。

その二人を前に、親友同士ぶつかりあう勇気も、
好きな相手に告白する勇気もないままに、
ただ二人の前から逃げようとしているだけなんじゃないのか。

それが、馨の予想する、別の大学を受験するという鏡夜の真意だった。

「なんで、殿を怒らせたの?」

だが、馨が考えていた『鏡夜の真意』は、正しくなかったのかもしれない。

『答える必要はないだろう?』

馨の質問を鏡夜が軽く笑い飛ばしたからだ。


『俺はお前が光にしたのと同じ事を、環にしただけだからな』


光よりは大人な視点で、
自分は周りのことを分析できると、馨は自負していたけれど、
その観察眼をもってしても、鏡夜の感情は読みづらかった。

馨が鏡夜の気持ちに疑問を抱いたのは最近になってのこと。

光のために、ハルヒの周りにいる人のことを、
より注意深く観察するようになって初めて、
鏡夜の行動の中にほんの少しだったけれど、
ハルヒに対する優しさのようなものを、汲み取ることが出来たからだ。 

けれど、馨にも、気付けていなかった鏡夜の気持ちがあって。

『もともと、別の大学にいくのも、それを隠していたのを、
 奴を追い込むためだったんが、
 回りくどい方法だと余りに奴が鈍すぎて、
 一向に進展しなさそうだったんでな。それで怒らせてみることにしたんだ。
 奴を本気にするためにな』

この電話で、馨は初めて知った。

鏡夜が環に対して取ってきた数々の行動が、
単に、二人の前から逃げるためのものではなかった、ということを。

怒るという行動は、いつもは理性や体面といった、
綺麗なカプセルの中に閉じこめられている本心を
良くも悪くも、一気に表に噴出させてしまう。

一度、心が殻を破ってしまえば、
閉じ込められていた他の感情も、
破れた隙間から表に出てきやすくなる。

「じゃあ、鏡夜先輩は、殿にハルヒへの気持ちを気付かせようと?」
『まあ、そういうことだ。直接言うのは簡単だが、
 こういうのは自分で気付かないと意味が無い。
 おかげで随分……手間はかかったがな』

通話時間は十分から二十分程度だったと思う。

その後は終始、鏡夜が一方的に話して、
馨が時々相槌を打ったり聞き返したりするという流れの中、
鏡夜が「一体どういう方法で環を怒らせたのか」ということについては、
最後まで明かされることはなかったけれど、
ともかく、無理矢理壊してしまった環との仲を、
どのようにして元に戻そうとしているのか、
鏡夜の策略の説明を最後まで聞き終えて、
ようやく馨は、自分がその作戦に必要な理由を理解した。

「それじゃあ明日は『元々そういう勝負をしてた』ってことで、
 僕が現れればいいわけだね?」
『ああ。具体的な段取りは明日決めるから、
 光には秘密で、昼前にはうちに来てもらえるか?』

鏡夜も、光がハルヒのことを好きなのは知っていたから、
光のことを配慮して、今回の作戦からは外すのだという。

「いいけど、ちゃんとランチはご馳走してくれるんだよね?」
『それくらいはこちらで用意しよう。
 ああ、念のために言っておくが、あまり早く来すぎて、
 人の寝室に勝手に入ってきたりは、もうするなよ? じゃあ、明日は頼んだぞ』

こんな感じに鏡夜との通話を終えた馨が、
先ず最初に考えたのは、光に今の話を伝えるべきか否か、と言うことだった。

……今の電話の内容は、

今日の午後、殿と鏡夜先輩が大喧嘩になって、
その後、殿がハルヒの家に言ってハルヒに告白したらしく、
ハルヒが鏡夜先輩に電話をしてきて、
それとは別に、土曜日に鏡夜先輩の家に行くというメールを殿が送ってきたから、
おそらく、ハルヒへの告白について、
殿から鏡夜先輩に、何か言いたいことがあるらしいから、
明日、殿が鏡夜先輩の家に現れたら、
鏡夜先輩が殿を怒らせた行動全てを、
僕との「勝負事」に勝つための演技とすることで、全てを水に流す。

……というもの。

馨にしてみれば、どういう手段を使うことになっても、
鏡夜が環と仲直りするためだというのなら、
その目的には異論はなかったが、心配なのは光のことだった。

ハルヒを巡っては、馨も光も色んなことがあったけど、
光がハルヒに告白して、でも受け入れられなくて、
それでも今もハルヒを好きでいて、
殿に負けないような立派な大人の男になるための修行中であることを、
馨は知っていて、そんな光を応援していたから、
明らかにハルヒと相思相愛の環が、
はっきりとハルヒに告白したなんて聞いたら、
光はどう思うだろうかと、そのことが馨は特に心配だったのだ。


鏡夜先輩からは、光には秘密で、って言われたけど。どうしようかなあ。



すっかり悩みこんでしまった馨は、
電話を充電台に戻すことも忘れて、
携帯電話を握ったまま、俯き加減で部屋を出た。

すると。

「馨」

ドアを開けた瞬間に呼びかけられた声に驚いて、
馨が横を向くと、出入り口のすぐ真横で、光が腕を組んで壁に寄りかかっている。

「ひかっ……いつから居たの?」

明らかにぎこちない動作で、
馨は携帯電話を持っていた右手を背中の後ろに隠す。

「馨がちっとも帰ってこないから見に来たんだよ。
 ……ていうか、馨。今、誰かと電話してただろ?
「あー、うん、友達とちょっとね」
「へえ? と・も・だ・ち?

明らかに不審な眼差しを向けた光は、ゆっくりと馨に近づくと、
馨が背後に回した手を強引に掴んで上に捻り上げた。

「ちょ、ちょっと、光!」
「友達って……履歴は鏡夜先輩になってるけど」

光は馨が持っていた携帯電話を奪うと、
素早く履歴を確認し、その画面を馨に突きつけた。

「何、これ。俺に黙って二人で何か企んでるわけ?
「そ、それは、え、えーっと……」

* * *

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