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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

Suriya'n-Fantasy-World

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君の心を映す鏡 -39-

君の心を映す鏡 -39- (ハルヒ&環)

大喧嘩をした翌日。予告通り鏡夜の家を訪れた環は、昨日ハルヒの家に行ったことを明かす。
金曜日の夜、環がハルヒに伝えた気持ちとは……。

* * *

……何だか妙な展開になってきた気がするけど……。

ハルヒが、アパートの前にいる環の姿を最初に見つけたとき、
気に掛かったのは、環が変な誤解を引きずってないかな、とか、
鏡夜との喧嘩は大丈夫なのかな、ということだった。

しかし、その話題は宙に浮いた……というより、
環にその話はするなと言われてしまったからなのだけど、
ともかく、ハルヒは今、環に謝られる立場になってしまっているのだ。

環の中で一体どんな心境の変化があったのか。

最初はいつものように、
ハイハイと適当な返事で受け流そうと思ったが、
あまりに環の顔が真剣そのものなので、
ハルヒは環に向かい合うように正座をすると、こくりと縦に首を動かした。

「ゆっくりと、環先輩のペースで話してください。
 自分は……最後までちゃんと先輩の話を聞きますから

聞きたいことは山程あったけど、
まずは環の話を聞くことが大事と感じたハルヒは、そう促して口を閉じた。

「俺はね、ハルヒ」

ハルヒの答えを待って、環は喋りだした。
その声は普段に比べ、一際、優しく聞こえる。

「母さんと離れ離れになってから、
 自分が悲しんだりしてちゃいけないって、
 そう思ってずっと日本で生活してきた。
 離れて寂しいのは俺も母さんも一緒だけど、
 日本に来るって決めたのは俺自身だからね。
 なのに、俺自身がこっちで悲しんだりしてたら、
 母さんに合わせる顔がないだろう?」

さっき環は、母のことを寂しがるなんてハルヒに悪い、
なんて言って謝ってきたけれど、
ハルヒからすれば、そういう姿を間近で見せられても、
またそういう話をされても、嫌な心地は全くしなかった。


環が母親のことを話すときは、
いつだって優しくて温かい気分になるから。



「だから、俺はいつも笑顔でいたいって思ってさ、
 で、笑顔でいるには自分が嬉しいって思うことが必要で、
 じゃあ、自分は何を見たら嬉しくなるだろうって考えたら、
 母さんの笑顔が浮かんできてね。その時に思ったんだ。
 俺は周りの人の笑顔を見るのが何よりも好きなんだなって。
 よし、じゃあ皆が笑顔になるには、
 まずは皆を楽しませて幸せにしなきゃだめだよなって思って。
 それで、ホスト部っていう、お客さんと話をして、
 楽しませることができる部活動を立ち上げてみたり、
 体育祭とか皆でワイワイ騒ぐことができるイベントを企画したり、
 日本に来てから色々やってきたんだ」

環の話を聞いて、こんなにも穏やかな気持ちになるのは、
きっと、母親を思いやる環の純粋な気持ちが、
ハルヒの心の中にある母への思慕と共感するからかもしれない。

「そうですね。皆、環先輩の色んな企画のおかげで、
 すごく楽しい学院生活が送れていると思いますよ。
 自分も、まあ最初は驚くことばかりでしたけど、
 今はとっても学院生活が楽しいですし、
 それに、ホスト部に限らず環先輩が何かしようとすると、
 自然と人が集まってくるじゃないですか。
 皆、環先輩がやることなら楽しいに違いないって、
 期待してるんだと思いますし、
 環先輩の試みが成功してるってことじゃないですか。
 環先輩の積極的な行動には正直憧れますし、
 とても素敵なことだと思いますよ?」

ハルヒの言葉に環は目を細め、にっと微笑んでくれたが、
何故かその笑顔には寂しげな影が、ちらちらと見え隠れしているように感じる。

「うん……自分でも、そう思ってたんだけどね」

ずっとハルヒを見ていた環の視線が、
徐々に下の方、正座をしている自身の膝元へ降りていく。

「でもね、よく考えてみたら、
 俺が率先して『やりたい!』って思って、
 今までやってきたことは、全部、
 周りの皆を楽しくするにはどうしたらいいかってことを、
 ただ、考えてやってたことで、
 周りに皆がいてこそ成り立ってたものっていうか、ね。
 だから、去年のフランス研修旅行の時に、
 俺は一人で日本に残ってたわけだけど、
 ハルヒ達にも旅行を欠席してることは隠していたから、
 学校にもいけないし、電話もできないし、
 それじゃあ、思いっきり家で遊ぶか! なんて思っていたのに、
 いざ一人になったら何をしていいか、全然分からなくなっちゃってさ

環は恥ずかしそうに右手で首の後ろの方をさすった。

「だから、まあ、なんていうか……、
 俺が何かやろう! とか考えることの原動力は、
 常に周りの皆を楽しませることにあって、
 自分自身がこれをやってみたい! 
 という意味での積極性では無かったんだよね……、
 俺の言ってること、分かる?」

ちゃんと話せているか不安だったのか、
環は下に向いていた視線をそろそろっと持ち上げて、
ハルヒの顔色を伺っている。

「はい、大体は……」

自由気ままに行動しているように見えて、
実は周りに気を配って常に行動している。

環の行動の理由を、
ハルヒはそんな風に、自分なりに噛み砕いて理解していたのだが、
今の環の言葉は、それを別の角度から表現したものなのだろう。

「まあ、俺としては、
 皆が楽しく思ってくれれば、それが一番だって思ってた。
 だから、ホスト部が家族って言い出したのも、
 実はそういう考えが基本にあって……、
 ハルヒは気付いているかどうか分からないけど、
 俺が部活動を家族に例えて言い出したのって、
 実は、ハルヒが入部してきてからなんだよね

「え? そうだったんですか?」
「うん。ハルヒが入部するって決まってから、
 鏡夜から色々とハルヒのデータを見せてもらってね。
 唯一の奨学生で、しかも高等部からの入学だと、
 慣れないことが多くて大変だろうし、
 ハルヒがそれまでクラスに馴染んでないってことは、
 双子からも聞いていたから、
 ハルヒを心から楽しませるには、
 まず、ハルヒのことを学院の中で守ってあげなきゃなって。
 そしたら自然と、自分が父親で、ハルヒが娘で、
 俺のフォローをしてくれる鏡夜はお母さんで、
 まだまだ世界が狭かった光と馨はお子様扱いでね。
 モリ先輩とハニー先輩は、
 こちらを見守ってくれているお隣さん夫婦、ってことにして、
 なんかそういう世界を作ってた。……俺、変かな?


【さあ楽しいホスト部の時間です!】


「まあ、最初は……『何言ってるんだ、この人は』と思いましたけどね」

と、ハルヒが遠慮ない感想を述べたら、
環が「ええっ?」と声を上げて、
まるで迷子の子供みたいな目をしたから、
ハルヒは慌てて、フォローの言葉を繋いだ。

「いえ、でも、先輩が『家族』にこだわるのは理解できますし、
 それでホスト部が一丸となっているっていうか、
 まあ、あんなに個性豊かなメンバーが一つになってるのは、
 環先輩のことを皆、信頼しているからだと思いますよ?
 環先輩が皆のことをいつも考えてくれていることを、
 皆、知ってますから……」

もちろん、自分も……と、付け足しかけて、
なんだか恥ずかしくなって、言葉をそこで止めてしまった。

「そうなのか?」
「いつも、部長らしい扱いは全くされてないですけど、
 それも皆の愛情の裏返しだと思いますし」
「それは、ハルヒもかにゃ?
「ええ」

間髪入れず頷いたのは、ほぼ条件反射に近かった。

「えっ?」

環がびっくりしたような声をあげたことで、
『自分が何を肯定したのか』ということに気づいた時。

「いえ、あの、今のは、ちが……」

ハルヒは、途端におろおろとし始めて、
両手を体の前で振って大慌てで否定した。

「ち……違うのか?」
「いえ、違わないですけど、違うっていうか、いえ、あの……」
「そうか、そうだったのか。
 俺はハルヒにも部長として扱われてなかったのか

環は、くすんくすんと鼻をすすり、目元の涙を拭う仕草をした。

「え、部長? え、ああ、いえ、そういう意味なら、
 そう、そうです。環先輩のことは尊敬してますし。
 ええ、はい、まあ、そういうことでオネガイシマス
「何故、棒読みなのだ?」
「いいえ、キニシナイデクダサイ

ハルヒの明らかに不審な言動を聞いて、環は大声で笑い出した。


「今のハルヒは、なんだかとっても可愛いぞ」


満面の笑顔で、そんなことを言われて、
ハルヒの頬や耳が一気にぶあっと熱くなった。


「そ、そういう言葉を、節操なく垂れ流さないで下さい!」


この人の直球な言葉は、本当に心臓に悪い。

「何故だ? 可愛いものを可愛いといって悪いことはないだろ?
「か、可愛かろうが可愛くなかろうが、とにかく、ダメです!」

ハルヒはドキドキ跳ねる心臓の鼓動を感じながら、
ぜいぜいと反復する激しい呼吸を、必死で落ち着けようと努力していた。

「っていうか、環先輩。伝えたかったことって、どうなったんですか?
 なんか色々お話しを伺ったように思いましたけど……、
 結局、環先輩のホスト部に対する思い入れが、
 今日、自分に話したかったことなんですか?」
「あ、いや、そうじゃない……ごめんね。
 どうも俺は夢中になると、すぐ本筋を逸れる癖があるみたいで、
 いつも鏡夜にも注意され……

それは、環も無意識のことだったのだろう。

笑って気が緩んだせいか、
つい、ぽろりと鏡夜の名前を口にして、
それに気づいた瞬間、環の顔から笑顔がさっと消えた。

そして、その後、突然。

環は自身の胸の中心に、どんっと右手の拳を叩きつけたのだ。


「た、環先輩!?」



そのまま、右手の拳で胸を押えた環は、
胸が急に痛み出したかのように背中を丸め、俯いてしまった。

「環先輩、大丈夫ですか?」 

環の様子が急におかしくなったので、
ハルヒは膝を立てて、環に近づくと、その肩に手を触れた。

「どこか気分でも?」
「ううん……ごめん……気分が悪いとかじゃなくて……」

苦しそうに返事をする環の身体は小刻みに震えている。


「……今、すごく……嫌な自分が、
 俺の心の中に……出てきてしまってるみたいなんだ。
 だから、ごめん、ハルヒ。ちょっと……待って……」


* * *

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