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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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君の心を映す鏡 -3-

君の心を映す鏡 -3- (鏡夜&光&馨)

鏡夜の受験の話に混乱した環は、なんで秘密にしていたのかと鏡夜を責めるが、
今からではどうしようもない事実を突きつけられ、鏡夜を残して一人先に帰宅してしまい……。

* * *

「もういい……今日は、先に帰る」
 
そう言って、散々わめいていた環が居なくなって静かになった教室の中は、
徐々に夕焼けの赤い色も消え始めて、
夜の闇が窓の外を紺に塗りつぶしていく。

窓の外は夜の闇

「……参ったな」

案外、逆効果だったか?

環が取り乱して慌てるところまでは、
鏡夜にとっては予想通りの反応だったわけだが、
その後、急に深刻な表情で出ていってしまった環の様子に、
鏡夜はどこで計算を誤っただろうかと、やや後悔をしていた。

いや、だがあの馬鹿はこれくらい追いこんでやらないと、
すぐ本筋とは外れた方向に走ろうとするからな。

須王の家のことも、母親のことも、
簡単に流せるような話ではないはずなのに、
いつも茶化して終わらせようとしているのは、
環が、周りの人間の幸せとか笑顔に、人一倍敏感だからだ。

そして、何より始末が悪いのは、
そういう行動が『周りに気を使っている』ことに他ならないという事実に、
環自身、全く自覚がないこと。

そう。相変わらずの家族設定で守り続ける、ハルヒとのことだって……。

「鏡夜センパーイ」
「光、馨」

最近はそれぞれ独立して行動することも多くなった双子が、
準備室を覗き込むなり、久しぶりに揃いのユニゾンで鏡夜を呼んだ。

「今、廊下で殿とすれ違ったんだけどさあ。
 なんだかこの世の終わりみたいな顔して歩いてっちゃったけど、何かあったの?」
「今日はミーティングするから絶対に集まれって、
 僕らに念を押してたのは殿じゃなかった?」

あと数ヶ月もすれば、環と鏡夜も桜蘭学院を卒業してしまう。

自分達が卒業したあともホスト部が続くなんてことは、
鏡夜は最初から思ってもいなかったし、
事実、部長である環も廃部を考えていたらしい。

しかし、光と馨、そして未だに男子学生として装っているハルヒは
意外にもホスト部にかなりの愛着を持ってくれていたようで、
環と鏡夜が卒業後も、部活動を存続したいと、三人で環に申し出てきた。

そのため、今日はその引き継ぎをする予定になっていたのだ。

「まあ、大したことじゃない。
 俺が国立受験するということを伝えたら、
 急に機嫌が悪くなって『先に帰る』と言い出しただけだ」
「え? 鏡夜先輩、受験のこと殿にまだ言ってなかったの? 
 俺と馨には結構前から言ってたよね」
「向こうから聞いても来なかったしな」
「いや、そうだとしても、それって鏡夜先輩さすがに酷いんじゃ……

双子の矢継ぎ早の突っ込みに、鏡夜がじろりと鋭い視線を投げかけると、
光と馨はぎくっと肩を震わせて、
額にうっすらと冷や汗を浮かべ、
誤魔化し笑いを浮かべながら鏡夜の向かい側の椅子に座った。

「そういえば、ハルヒは一緒じゃないのか?」

先ほどまで環が座っていた椅子には光が、
その隣の席には馨が座って、二人とも同じ様に机の上に肘をついている。

「文化部連合に顔を出してからくるって。来期の部費の補助とかの相談で」
「流石に僕らだけになったら、独立体制続けるのも難しそうだからね」
「……そうか」

ホスト部が文化部にも運動部にも所属していない独立した部活動であることは、
部としての一つの特徴でもあったのだが、
それもこれも部長が理事長子息であったからこそ黙認されていたことなので、
この先、正式に部として存続させていこうとするなら、
ある程度、既成の組織に組み入れられるのも止むを得ない。

「まあ、部長がいないんじゃ引継ぎどころじゃないからな。
 今日のミーティングは中止だ。二人とも帰っていいぞ」
「って、鏡夜先輩は?」
「環に邪魔された所為で作業が途中だったから仕上げてから帰るさ。
 今まで取引した業者との見積もりの資料や、
 部費の会計帳簿をメールで送っておくから、二人とも目を通しておいてくれ」
「全く殿も仕方ないなあ……んじゃ、俺達は先に帰るね」

鏡夜の指示を受けて、
光は素直に頷いて立ち上がり準備室を出て行ったのだが、
同じように立ち上がった馨は、
すぐには光の後を追わずにそこに留まっていた。

「ねえ、鏡夜先輩」
「何だ?」
「確かに、鏡夜先輩の言う『メリット』は分からなくはないけどさ。
 それでも人脈を広げるためだったら内部進学したって良かったわけでしょ?」
 大学部から入学してくる連中だって多いんだし」
「そうだな」
「それに殿と別々の大学に行くのは、
 須王とのつながりを考えれば逆に『デメリット』じゃん。
 それなのにギリギリまで受験のことを殿に教えもしないで、
 殿に自分と同じ大学を受験することも出来ないようにしちゃってさ」
「馨。お前、何が言いたい?

作業の続きを始めようとノートパソコンを開けていた鏡夜は、
液晶画面の縁を掴んだまま、上目遣いで馨を睨め付けた。

「……鏡夜先輩。僕ね、思ったんだけど」

どこか物憂げな表情で、馨は鏡夜と視線を交錯させる。


「鏡夜先輩が敢えて他の大学を選ぶ本当の理由は、
 あの二人のことを、これ以上傍で見ていたくないから、なんじゃない?」



* * *

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