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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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君の心を映す鏡 -25-

君の心を映す鏡 -25- (環&鏡夜)

昨日、環が帰ったあとの第三音楽室で、鏡夜がハルヒにしようと思ったこと。そして、彼の怪我の理由。
鏡夜の胸の内を明かされた環は、彼の挑発的な言葉に激怒して……。

* * *

俺は、今まで生きてきて、沢山の人に出会ったけれど、
その中で嫌いだと感じた相手は殆どいない。

俺と母さんが離れ離れになる原因を作り出した、
お祖母様や父さんのことだって、
母さんのことを思えば、寂しい気持ちにはなったけれど、
それ以上にその人たちのことを、大好きな気持ちの方が強かったから、
恨むとか憎むとか、そういう風には今も昔も思っていない。

だから、ホスト部で他のメンバーに対して、
時には拗ねたり、時には怒ったりしてみても、
そこには相手を嫌うという意味は全くなくて、
むしろ、相手に対する好意や甘えがあるからこそ、
自然とそういった素直な行動が出せたりもするんだ。

なのに、妙なことが一つある。
事がハルヒに関わると、俺はいつも冷静でいられなくなってしまう。

れんげ君のプロモーションビデオの撮影のときに、
ハルヒがD組の連中に絡まれていたときも。

一年前の夏に不良達からお客さまを庇おうとして、
ハルヒが海に突き落とされたときも。

初詣の人ごみにまぎれて、須王の下請けの業者の人に、
ハルヒが誘拐まがいのことをされたときも。

ホスト部員の一人として、いわば家族の一員として、
大切にしたいとか、愛しいとか思っているなら、
こんなにも、ハルヒのことにだけ、頭に血が上って、
訳が分からなくなってしまうのは、何故なのだろう。

「鏡夜……お前と言う奴はっ!」

ハルヒを苦しめる相手は「憎い」と思ってしまう。
それが例え、親友の鏡夜であっても。

こんなにも醜い感情が、
彼女に対してだけ、生まれてくるのは一体何故なのだろう。

「見損なったぞ、鏡夜! 
 お前はハルヒにそんなことをしようと思ってたのかっ!」


かっとなった環が、我に返った時。


【環の目の前に転がっているモノ】


「……っ」

その目の前には、床に倒れている鏡夜の姿があって。

呻きながら仰向けに倒れている鏡夜の脇には、
鏡夜が掛けていた眼鏡が転がっていて、何故か、右手の拳がひどく痛む。

「まさか……急に……殴られる……とはね」

全ては、自分が今、鏡夜を殴ったからだと、
環がようやく自分がしたことに気が付いたのは、
鏡夜がそうぼやきながら、ゆっくりと身体を起こそうとしたからだった。

床の上に足を投げ出したまま、上半身だけ起こした鏡夜は、
環に殴られて赤くなった左頬を、指先で触れて顔を歪めている。

「お、お前が変なことを言うからだろう!」

鏡夜が立ち上がるよりも早く、環は鏡夜に近づくと、
馬乗りになって彼の胸倉を両手で掴んでいた。

「いくら鏡夜でも、ハルヒを傷つけるようなことをするなら、
 俺は絶対に許さんぞ!
「許さない……だと?」

殴られたばかりだというのに、
鏡夜はひるむ様子もなく、環を睨んでいる。

「好意を持った相手に思いを打ち明けて、
 キスをしたいと思ったり、抱きしめたいと思ったり、
 そういうことをしたいと思って何が悪い」
「まだお前はそんなことをっ!」
「大体、な」

鏡夜のブレザーの襟元を、がっと手繰るように持った環の腕を、
鏡夜は憮然とした表情で握り返してきた。

「お前が怒るのは、一体なんの資格があってのことだ?
 ハルヒはお前の恋人でもなんでもないだろう?
「お、俺は、ハルヒの父親代わりなんだから、
 ハルヒの気持ちも考えないで、
 無理矢理押し付けるようなことに、怒って当然だろう!」
「無理矢理、押し付け……?」

環の腕を握る、その左手の指先が腕の肉に食い込むくらい、
鏡夜は環の腕を容赦ない力で握ってくる。

父親とかとか? 俺が母親だとか?
 そういうくだらん家族設定を持ち出すことこそ、
 お前の勝手な思い込みで、押し付けがましい行為じゃないのか!」
くだらない思い込み……だって?」
「ああ、そうだ。実にくだらないね。
 お前がハルヒのことを娘のように思ってようが、
 ただの、後輩として思っていようが知ったことじゃない。
 お前が一人で思い込んで浮かれているだけなら、
 別にどれだけくだらん妄想だろうが、勝手にやっていてくれて構わない。
 だが、それを俺にまで押し付けるな!

いつもは透明なガラスの向こう側にある瞳が、
今は、直接環を捉えている。

「俺はお前とは違う。言っただろう?
 俺は本気でハルヒが好きなんだ。大切な相手だと思ってるんだ。
 その相手を自分のものにしたいと考えて、何が悪い!
 ただの『父親代わり』を気取ったお前に、俺を止める権利があるか?
「気取るだって!? 俺だってハルヒのことは大切に思ってる!」
「それは単なる父性愛なんだろ? お前の妄想と一緒にするな!」
「俺のハルヒを大切に思う気持ちは、お前には負けない!」

本気と本気の激しい感情がぶつかりあって、
恐ろしい勢いで、互いに罵りあう環と鏡夜。

一歩でも引いたら、一瞬でも言い澱んだら、
ハルヒにひどいことをしようと考えていた、
鏡夜の行為を正当化してしまいそうだったから、
環も必死に、感情のままに言い返していた。

負けない、だと? じゃあ何か?」

けれども、環の言葉に反発して、鏡夜が次に返してきた言葉が、
環の返事を詰まらせた。


「お前は、ハルヒのことを、娘としてじゃなく『一人の女性』として、
 大切だと考えているとでもいうのか? 俺と同じように」



打ち返したくても、すぐに答えを打ち返すことはできなくて、
環はただ、鏡夜から問われた言葉をなぞる。


「俺がハルヒを、一人の女性として……大切、に?」


* * *

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