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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

Suriya'n-Fantasy-World

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君の心を映す鏡 -24-

君の心を映す鏡 -24- (環&鏡夜)

一年前の夏。同じような場面があったというのに、何故、今更自分を責めるのかと、鏡夜は環に反発する。
そして鏡夜は環に告げる。一年前の夏の日から、今までずっと秘めてきた想いを……。

* * *

以前、鏡夜の婚約者騒動が起きた時、
鏡夜に婚約者がいることを、教えてもらってなかったことが悲しかったのか、
それとも、そういう相手が鏡夜に既にいるということ自体に驚いたからか、
本当の理由はどちらなのか、今もよく分からないけれど、
ものすごいショックを受けたことは覚えている。

結局、それは単なる相手の思い込みで、
そのあと鏡夜には浮いた話の一つもなかったし、
鏡夜自身の様子も、鳳の家のことや、
ホスト部で環のフォローをすることばかり気にかけて、
恋愛事には取り立てて関心がないように見えた。

だから、親友同士なら恋の話の一つもするのが普通だろうが、
環は、鏡夜に対してその辺りのことを、
今まで突っ込んで聞いてみたことはなかったし、
もちろん鏡夜から、その手の話題を振ってきたこともなかったと思う。

でも、今、鏡夜ははっきりと言った。

「俺はハルヒを本気で愛しいと想ってる。他の誰にも、渡したくない」

いつもみたいな迂遠な言い方じゃない。
環の目を見つめながら、ストレートに気持ちをぶつけてきた。

しかも。

鏡夜のハルヒに対する愛しいという感情は、
つい最近芽生えたものではないと。

「それは、本当なのか? 一年前から……今まで……ずっとハルヒのことを?」

後輩でもなく、ホスト部の仲間としてでもなく。


ただ一人の大切な女性として。



鏡夜はハルヒのことをずっと想っていたというのか?
この一年もの間、この俺に気付かせることなく?

「そんな……」

鏡夜がハルヒに、ある程度の「好意」を持っていることは分かってた。

鏡夜は心を許さない人間には、極めて丁寧な物腰でしか接しないのに、
ハルヒに対しては早々に、その仮面を剥いでいたんだから。

でも、それが何時の間に恋愛なんてことになってたんだ?

余りのショックに、ますます気分が悪くなってきた環は、
こみ上げてくる吐き気に、右手で胸を押さえた。

全ては。

何事も無く終わっていたと、環が思い込んでいた、
一年前の夏の日の夜から始まっていた事だと気付かされて。


『俺がどういう気持ちでハルヒと一緒にいたか、
 当事者である俺に聞きもせずに、周りの奴らの言うことだけで、
 本当にそれでお前は全て分かった、と?』



他人の言葉からは、決して真実は導けないことを、
俺は十分に知っていたはずだ。

他人が他人のことをどう評価するのかは重要じゃない。
むしろ、その人自身がどう考えているのか、
その気持ちこそが一番大切なもので、
何にも代えがたい真実だって、俺はちゃんと知ってる。

なのに。


『何故、聞いてこなかった?』


どうして、分かったなんて思い込んでいたんだろう。
どうして、俺は鏡夜になにも聞かなかったんだろう。


『あの時は、俺の行動を放置していたくせに、
 今になって俺を責めるのは、一体どういう心境の変化だ?』



鏡夜の疑問は、そのまま環自身の疑問に摩り替わる。

自分でも分からない。

あの時のことを無意識に避けてた理由も。
さきほどの鏡夜の行動に、こんなにも苛立っている原因も。


自分の心が、分からなくなってしまった。


「お前がぐずぐずしているから、いけない」
「……俺が、悪いだって?」
「俺に対して、お前は何も聞いてこないし、
 かといってハルヒに対して、何か行動を起こすわけでもない。
 何時までも父親だの娘だの言って、
 お前がぐずぐずしているから、俺は我慢できなくなったんだよ

「ぐずぐずって……だって俺はっ!

皆が家族みたいに、温かく仲良く過ごして、
笑い合って過ごせれば、そしたら皆が幸せになれると思って。

皆が幸せなら俺も幸せだし。
幸せなら心から笑うことができる。

で楽しく過ごせたら、それが……一番の幸せだって……、
 それだけを思っていただけで……。
 そのことは、鏡夜だって分かってくれていることだろう?

自分が日本で楽しく幸せにしていれば、
離れ離れになってしまった母のことも悲しませずに済む。
それが、環の実現したい一番の願い事であったことは、
鏡夜なら理解してくれているはずだった。
今まで幾度と無く、環の母親のことについては、
心を砕いてくれていた鏡夜なのだから。

なのに、どうしてこんなにも、鏡夜はこんなことを俺に言うのだろう。

「俺が昨日……この怪我をした本当の理由を、教えてやろうか?

自然と俯いてしまっていた環の目の前に、鏡夜がすっと右手を出した。
痛々しく包帯が巻かれているその手を。

先ほどハルヒの腕を捕らえていた右手を。

「それは……さっき、ハルヒが『お前に怪我させた』って言ってたが……、
 一体、昨日何があったのだ?」
「昨日、お前が無責任に帰った後、
 双子達もミーティングが中止と聞いてすぐに帰ってしまってね。
 俺が一人残ってデータをまとめてるときに、
 ハルヒが遅れて準備室にやってきたんだ」

鏡夜がちらりと準備室の方に視線を動かした。

「ってことは……昨日、ハルヒとお前は二人きり、に?
「いつもはお前が鬱陶しいくらいに傍にいるから、
 ハルヒと二人きりになれる機会なんてそうないだろう?
 だから俺はハルヒに……俺の気持ちを打ち明けた

心臓が痛い。

どくどくと、徐々に早まる鼓動に、
身体が内側から蝕まれていくようだ。

「それで、ハルヒはお前に……なんて……答えたんだ?」

指先から背筋に掛けて、ぞっと鳥肌が立つ。

「余りに唐突だったから、ハルヒも本気と受け取ってくれなくてね」

鏡夜は左手の人差し指で、
両目の間の眼鏡のブリッジをすっと押し上げた。

「だから俺は実力行使に出ることにした」
「実力……行使?」
「ハルヒの答えを聞く前に、俺はハルヒを押さえつけて……」

鏡夜の左手がゆっくりと降ろされて、
怪我をした右手の甲を握る。


「無理矢理、ハルヒにキスをしようとして、
 その時に抵抗されて、この傷をつけられたんだよ」



鏡夜が、ハルヒを押さえつけて?

「なん……だと……?」


無理矢理、キスをしようと、した?


「無理矢理って、鏡夜、お前、それは本当のことなのか!?

何かの聞き間違いか、性質の悪い冗談かと思った。
いつも冷静な鏡夜が、まさかそんなことを、しかもハルヒにするなんて。

とても信じられなくて、嘘だと思いたくて、環は半信半疑で聞き返したのだが、
鏡夜は取り澄ました顔で、左手で右手の包帯を摩っている。

「じゃ。じゃあ、さっきのあれも、お前は……、
 は、ハルヒに、キ、キ、キスをしようと……?
それだけで済んだ、とは思えんがな」
「……え?」

鏡夜がハルヒの手を握り、
二人が長椅子の上、絡み合って倒れていて、
鏡夜は環を見て、表情を強張らせた。

その全ての状況に怒りを覚えて、身体が熱くなって。

一年前のあの日から、鏡夜はずっとハルヒのことが好きで、
昨日ハルヒと二人きりになって、
鏡夜はハルヒに思いを打ち明けた。

その全てに衝撃を受けて、心が握りつぶされそうで。

どういう……意味だ?」

感情の糸が切れそうになる。

鏡夜の想いが、環の心を、
今まで気付きもしなかった未知の方向へ引きずって行く。
環の気持ちなどお構い無しで。

そして、環の理性を繋ぎとめる糸が、
どんどんと細くなって、次第にほつれていく。

今にも、引き千切られてしまいそうに。

それでも、なんとか最後まで、冷静に話を聞くんだと、
自分の心を懸命に宥めていた環を、鏡夜がせせら笑った。

「くく……だから、お前は、間抜けだというんだ」

環が、自分の怒りの原因を理解よりも早く。

「一年前も、さっきも、お前がもし俺たちの前に現れなかったら……」

鏡夜の言葉が、環の弱りかけた理性に襲いかかる。



「俺はハルヒにそれ以上のことをしていた、かもな?
 力ずくでも……ハルヒを手にいれるために」




それが最後の一撃だった。

その言葉を発端に得体の知れない黒々とした気味の悪い熱が、
環の胸の奥で一気に爆発して、体中に蔓延していく。

【感情の炎が一気に燃え上がる、全ての理性を飲み込んで】

そして、その激しく渦巻く感情の炎が、



「鏡夜……お前という奴はっ!!」



解れかけた糸を……完全に焼き切ってしまった……。

* * *

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