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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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君の心を映す鏡 -19-

君の心を映す鏡 -19- (環&鏡夜&ハルヒ)

昼休みに第三音楽室に行くというハルヒに、環と鏡夜の様子がどうなったか確認してほしいと頼む光と馨。
表向きは環をからかっていても、双子なりに二人の様子は心配しているようだ。一方、環は……。

* * *

怪我が完治するまで、鏡夜の荷物は自分が持つ!
と、宣言した環は、
本当は、鏡夜と一緒に第三音楽室に行く気満々だったのだ。

ところが。

「須王さん。ちょっとお待ちになって」

三年生は午前中で授業が終わるから、
日誌をささっと書き上げて席を立とうとしていた環の所に、
つかつかと歩み寄ってきたのは、
本来は今日、日直であったはずの城之内女子だった。

「今日はどうしても日直をやりたいと、
 職員室前で泣いて懇願されましたから、
 私、仕方なく日直を交代したのですわよ。
 それなのに、適当に日誌を仕上げられても困ります」

城之内綾女。

環のクラスの副委員長で、
環や双子達は彼女のことをモールス女史、と密かに呼んでいる。
その所以は、彼女が長い台詞を途切れなく喋ってくるからなのだが、
今も、息継ぎなく一気に喋り切られて、その迫力に蒼ざめた環は、
浮かしかけていた腰を、再び椅子の上に戻さざるを得なかった。

「ほ、ほら、ちゃんと日誌なら書き終わって……」
「常々、私、須王さんには申し上げておりましたわよね?
 定規を使うべきところは使い、綺麗に見やすく、
 次に書く方のことを考えて、日誌は仕上げてほしいと。
 そもそも、自分から日直をすると言い出したからには、
 責任を持って仕上げるべき義務があると思いませんこと?」
「いや……綾女姫……それは十分分かって……」
「これで『綺麗に仕上げた』とでも言うおつもりですか?
 いくら交代したとはいえ、私に元々日直だった責任がございます。
 このまま黙って見過ごすわけには参りません。
 僭越ながら、この私。お手伝いさせていただきますので、
 一緒に日誌の書き直しをいたしましょう」

今朝、咄嗟に日直であると嘘をついてしまった環は、
その嘘を本当のことにするために、
丁度、職員室に日誌を取りに来ていた城之内女子に頼み込んで、
日直を代わってもらったのだった。

しかし、交代を頼んだ相手が悪かった。

環は細かな体裁は気にしないし、
書くべき内容がちゃんと記載されていればいいではないかと思うのだが、
綾女姫はそういうことは許してくれそうもない。
環が急いで書き上げた文言は、
どうやら、一から書き直しをしなければならないようだ。

そもそも、鏡夜の手の怪我がきっかけで、
ぎくしゃくした感じもなくなって、
いつも通り鏡夜と話すことができるようになって、
自分の悩みの相談に乗ってもらうことも承諾してもらえたわけで。

それなら、鏡夜に下手に突っ込まれないように、
わざわざ繕って日直を代わる必要もなかったわけで……。

「きょ、きょうやあああ」

くすんくすんと涙目の環を、ご愁傷様と横目で笑いながら、
鏡夜はさっさと自分を置いて第三音楽室に行ってしまった。

うう……。

「須王さん、手が止まっておりますわよ!」

早く第三音楽室に行って、
鏡夜に相談したくてたまらないというのに、
環の席の前に座った綾女の眼鏡の奥の瞳が、
どんな小さな手抜きをも見逃すまいとキラリと光っている。

「は……はい」

結局、一度は仕上がったはずの日誌の文字を消して、
綾女姫の指導どおりに丁寧に書き直す羽目になったために、
環が席を立つことができたときには、
鏡夜が教室を出て行ってから、三十分近くも遅れてしまっていた。

心と身体にぐったりとした疲れを抱えながら、
環は足早に職員室を経由して日誌を提出してから、
南校舎へ向かい、第三音楽室へ続く階段を昇っていた。

もう、ハルヒは教室へ戻ってしまったのかな?

音楽室に向かう途中で、
もしかしたらハルヒとすれ違うかも、何て、ちょっとどきどきしていたのだが、
第三音楽室に向かう道中、
ハルヒはおろか他の生徒にも一人も会うことのないまま、
環は音楽室の前に到着してしまった。

「鏡夜、すまん! 待たせた」

かなり急いでいたから、中の様子も確かめず、
両開きの扉を、両手で勢い良く左右に押し開けた環だったが、

「綾女姫が手厳しく、て……」

扉の向こうにいた人物達の様子に、
環の声が急速に萎んでいく。


「ハルヒ……鏡夜……?」


角度の緩い冬の陽の光は、
窓から音楽室の奥まで差し込んで、
部屋の中をぽかぽかと温めているというのに、
目の前の状況に、環の頭の中はざあっと黒く冷たくなっていって、
頬がぴくりと痙攣する。

【窓から音楽室に差し込む陽光も、色を失って……】

環の目に映った光景、それは……。


「……環?」


驚いた声を上げるのは、
長椅子の上に仰向けに倒れていた鏡夜。


「環、先輩?」


その鏡夜に腕を掴まれて、
彼の体の上に倒れこんでいるのは……ハルヒだ。

環の突然の登場に、環の名前を呼んだあと、
鏡夜もハルヒも一言も言葉を発せずに、
ただただ環の姿を、目を丸くして見つめている。

環の顔から笑顔が消えた。



「ハルヒ、鏡夜……お前達……一体、何を……しているのだ?」



* * *

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