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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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君の心を映す鏡 -15-

君の心を映す鏡 -15- (鏡夜&ハルヒ)

昨日の父との会話の所為で、ハルヒの顔をまともに見れない環。更に鏡夜から冷たくあしらわれ、
双子から突然ミーティングを中止したことを口々に責められ、居た堪れなくなった環は……。

* * *

登校直後、正門を通り過ぎてすぐの所で環の姿を見つけ、
昨日のことをまだ引きずっていそうな彼に、
鏡夜の方から絡んでいったのは、
鏡夜なりに気を使ったつもり、だったのだが。

「今日は俺も確か日直だったのだ!」
「日直?」

今日は環の日直の順番でないはずだ。

鏡夜と環は同じクラスなのだから、
そんな嘘を吐いてもすぐにばれるのは分かっているだろうに、
何を思ったか、環は突然そんな嘘を口にした。

「おい、環……」

一体、何を言い出すんだと鏡夜は環を問い詰めようとしたのだが、
鏡夜の言葉を聞こうともせず、
環は鏡夜とハルヒを置いて職員室の方へ歩いていってしまった。

「環先輩?」

ハルヒも、環の様子が明らさまに変なことに首を傾げている。


それにしても……妙だな。


環の脈絡のない言動はいつものことだが、
急にハルヒに対して、どこかよそよそしいというか、
明らかに『何か後ろめたいこと』があるような、
不審な態度をみせるのは何故だろう。

環の背中を目で追いながら、
鏡夜は環の言動の理由を考えていたのだが、
視線の先、遠くなった環の影が、
何をそんなに慌てているのか、足をもつれさせて、
転びそうになって、わあわあと声を上げているので、
はあ……と困ったように息を吐き出した。

「一つ、確認しておきたいんだが、ハルヒ」
「なんですか? 鏡夜先輩」
「相変わらず環はお前の『お父さん』だそうだが、
 本当に、あんな馬鹿で……いいのか?
「は、はあ……自分でも時々、なんであんなにウザいのに……と、
 自問自答するときはありますけど」

ハルヒも、遠くなった環の姿を見ながら、
あの人は一体何をやっているんだろう? といった顔付きだ。

「でも、今はこのままでいいんです。
 だから、環先輩には絶対に言わないでくださいね?

鏡夜が、普段どれほど環に冷たい態度を取ってみせても
いざというときには環の味方をするということを、
この二年間の学生生活で理解したのだろう、
ハルヒがこちらに疑いの目を向けてくる。

「……ああ。わかってるよ」

ハルヒから念など押されなくても、
鏡夜から環へ、直接伝えてやるつもりは、全く無かった。

「お前の気持ちを、俺から環に伝えることは絶対にしない。それは約束する」

もちろん、このまま事態が遅々として進まなければ、
遠まわしに色々手を打って、環に自分から気付かせようかとは思っていた。
進路の件を明かしたのも、ある種、そのための布石でもあったわけだが、
釘を指されてしまっては、はっきりと約束してやるしかない。

「あの、鏡夜先輩」
「まだ何かあるのか?」
「いえ。右手……大丈夫ですか? ちゃんと手当てしましたか?」 
「ああ」

正門から玄関ホールにかけて、
大勢の生徒が往来する中で、大騒ぎされるのも面倒だと思い、
鏡夜は敢えて右脇に学生鞄で抱えて、腕を隠すようにしていた。

おかげで、会話に夢中だった双子も環も、
鏡夜の手の怪我には気付かなかったらしい。

鏡夜が左手に学生鞄を持ち変えて、
包帯を巻いた右手をハルヒに見せてやると、
ハルヒはぎょっと目を剥いた。


「って、なんですか! その手の包帯は!」


手首近くまでぐるぐるに巻かれた、仰々しい手当ての様子を見て、
ハルヒの顔が蒼ざめた。

「これについてはあまりコメントしたくないんだが」
「やっぱりすぐに保健室に行かなかったから、傷口が悪化を?」
「いや、そういうことじゃない」

本当は、姉が帰ったら包帯をきちんと巻きなおすつもりだったのが、
何故か姉はそのまま、実家に泊まるということになって、
今朝もしっかりと包帯を巻かれてしまって、
解いて巻きなおしてくる暇が無かったのだ。

「とにかく大袈裟に手当てされただけで、傷自体は問題ないから心配するな」

もっとも、問題ないとは言っても、シャーペンを握ったり、
パソコンのキーボードを叩こうとすると、
それなりに傷は痛んだから、全く大丈夫ということではない。

けれど……これは代償だから。


『環のことをお前が本当になんとも想っていないのなら、
 俺と、恋人として付き合ってくれないか、と言っている』



全ては自分の軽率な行為に対する報いなのだから、
これ以上、ハルヒに気を遣われたくは無かった。

「でも……」
「それより、お前こそ大丈夫か?」
「え?」
「文化部連合に提出する申請書だ。昨日、汚してしまっただろう?」
「そのことなんですけど、昨日見せてもらったイベントデータを、
 大体覚えてるつもりなんですが、ところどころ不確かで、
 後で新しい用紙をもらって書き直してきますから、内容を確認していただきたいんです。
 昼休みに第三音楽室で、お願いできますか?」
「ああ、それは構わないが……」

ハルヒの申し出に応える、鏡夜の言葉に被さるように、
再び、廊下に本鈴の鐘の音が鳴り響いて、
鏡夜とハルヒは二人揃ってびくりと顔を上げた。

「あ、しまった、遅刻!!
急ぐぞ! ハルヒ!」
「は、はい」

【人影の絶えた玄関ホール】

既に二人の周りに他の生徒の姿は無い。

人通りの途絶えた玄関ホールから高等部へ続く階段を、
鏡夜とハルヒは大急ぎで駆け昇り始めた。

* * *

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