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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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君の心を映す鏡 -13-

君の心を映す鏡 -13- (環&鏡夜&ハルヒ)

鏡夜の隠し事に加え、父親から出された宿題に悩む環。
環への想いを口にしてしまったハルヒ。
ハルヒに告白を拒絶されて、咄嗟に自分の想いを偽ってしまった鏡夜。

それぞれの想いを抱えたまま、舞台は翌日の桜蘭学院へ……。

* * *

翌朝。

【眩しい朝の光が、無情に部屋に差し込む】 

凶悪なまでに朝が弱く、寝起きの悪い『親友』とは違って、
目覚ましのアラームが鳴らなくても、
毎日、ほとんど誤差なく同じ時間に起床して、
朝は爽やかに迎えるのが環の習慣だったはず……なのだが。

「環坊ちゃま。そろそろお支度なさいませんと、学校に遅刻いたしますよ」

シマの厳しい声に急かされて、
ようやく、のろのろ着替えを始めた環の頭の中は、
どんよりと暗く澱んでいた。

眠い……ていうか……全然寝れなかった……。

窓の外は爽やかに晴れて、
きらきらした朝日が部屋の中を照らしだしているというのに、
こんな風に睡眠不足の、
気持ちの悪い朝を迎えるのは、どれくらいぶりだろう?

フランスから日本に来た直後に、
若干そういう期間があったくらいだったろうか。

病弱な母親の生活を保障してもらうことを条件に、
一人日本に行くことを決断したのは、最終的には環自身だった。

しかし、母親と離れ離れになったことは、
父と一緒にいられる嬉しさをプラスしてもなお寂しさが残ったし、
話に聞いていたとはいえ、
初めて訪れた日本という慣れない国、
そして須王第二邸という、
祖母からは未だ正式に認めてもらえていないという緊迫した環境の中、
父が雇ってくれた使用人たちは、皆よくしてくれたけれど、
正直、日本に来たばかりの頃はぐっすりと眠れない夜が続いたものだ。

夜、眠りにつく時は、つい母親のことを思い出してしまって。

ちゃんと眠れるようになったのは、
桜蘭学院に編入が決まって登校をしたその日からだったと思う。

始まりのその日に、早速出会った一人の人物に興味を持ってから、
毎日学校に行くことが楽しくて、学校で起きる出来事が楽しくて、
それをシマや使用人達にはしゃいで話をしているうちに、
母親のことが気になって眠れない、ということはすっかり無くなっていた。

以来、ほのぼのとした雰囲気の中で、
毎日夜十時には必ず就寝して、
朝は元気よく起きるという繰り返しだったというのに、
こんなに眠れずに朝を迎えるなんて。

ああ、でも……確か去年の夏休みは、
ドッペルゲンガーズの所為で寝不足になったんだったかな。

ハルヒが、夏休み期間中のバイト先として過ごしていた軽井沢のペンションに、
ホスト部の全員で押しかけて、
ペンションの空き部屋一室に泊まる権利を賭けて、
ホスト部員全員(一名傍観者含む)で、
ペンションのオーナー美鈴が主催した、
『爽やか選手権バトル』で競い合った時のこと。

ピアノを弾くという奥の手まで使ったものの、
最終的に、双子の『絆』の爽やかさに見事に敗れてしまった環は、
その夜、ハルヒのことが心配のあまり、眠れないまま朝を迎えてしまった。

それ以来になるのかな。こんなに眠れなかったのは。

軽井沢の一件の時に眠れなかったのは、
父として娘のハルヒのことが心配で、
一晩中双子の携帯に電話をかけ続けていたからだった。

じゃあ、今日の寝不足の原因はなんなのだろう?

鏡夜が自分とは別の大学に進学することに驚いたのか。
それを隠されていたことが寂しかったのか。
熱に浮かされハルヒにキスをしていたという事実を、
よりにもよって父から教えられたということに焦ったからだろうか。

それとも。


『お前は私のように後悔することないようにしっかり考えなさい。
 これからの自分にとって大切なものが、一体なんなのか』



父に出された宿題。
『大切なもの』とは何か。その意味が気になったからだろうか?

シマに怒られない程度に、若干急いで朝食を食べ終えた環は、
使用人に見送られて学校への送迎の車に乗ったのだが、
もやもやとした思いに心が支配されたまま、
車内でも環の憂鬱な時間は続いていた。

鏡夜が言うことは確かに正論なんだ。

将来自分が進むべき道は、他人に左右されるものではなく、
自分自身で決めるものだということは、
鏡夜に諭されるまでもなく、環も当然分かっている。

それに、鏡夜が内部進学をせず、
国立大学の経済学部に行くというのは、
二人の兄達が歩んだ道、即ち、


『医学部へ進み医者になって、鳳家の三男として兄たちの下で働き、
 病院経営を主軸とする鳳グループの企業活動をサポートする』


という、予め敷かれた真っ直ぐなレールを『自ら外れる』ということ。

つまり。


『兄達を越えたいなら越えればいい』


かつて、環が鏡夜に向かって言い放ったあの言葉を、
ついに実行に移すことを意味しているのは、環にもよく分かっていた。

一見クールな仮面の下、
内実、誰にも負けない熱い想いを抱いてる。
鏡夜がずっとひた隠しにしていた、ある種の野心を、
隠すことは無いのだと、すべてを暴いたのは環だ。

だから、鏡夜が兄達を越えるその一歩として、
兄達が進んだものとは違う道を進むと言うなら……、
それが外部受験をして経済学部に行くということなら、
唆した張本人としては、素直に喜んでやるのが筋だったのかもしれない。

たとえ、親友だと思っている相手から、
重要な進路のことを事前に相談してもらえなかったことが、
どんなにショックだったとしても。

「いってらっしゃいませ。環様」

学院の正門に続く道は送迎の車が連なっている。
上品な朝の挨拶が、そこかしこで交わされる中、
環の目は自然と鏡夜の姿を探していた。

まず鏡夜に会ったらなんて声をかけるべきか、それが問題だな。
何事も最初が肝心だからな。
うーむ。やっぱり普通に「おはよう、鏡夜」かな。
それとも「昨日は悪かった」とか?
いや、別に喧嘩をしたわけじゃないし、
俺が悪い訳じゃないんだから、俺が謝る必要はないのか。
じゃあ、やっぱり普通にいくべきなのか。
でも、何もなかったように振舞うのはなんとなく気まずいよなあ。
いや、だがしかし、父さんの宿題のこともあるし、
鏡夜には今日、色々話を聞かないと……。

環がうんうん唸りながら、
自分の動きを脳内劇場でシュミレーションしていた時。


「何を朝からそんなにウザイ顔をしているんだ、お前は」


すっかり耳に馴染んだ声が聞こえてきた途端。


ボカッ。


「……ぬあっ?」

突然、後頭部を何か鈍器のようなもので殴られた環は、
その勢いに押され、二、三歩前の方につんのめってしまった。

「な……」

痛そうに顔を歪め、後頭部を擦りながら環が振り返ると、
そこには環の憂鬱の原因、
気まずさの相手方である鏡夜が、呆れたような顔で立っていて、
左手で振り上げていたらしい学生鞄を、
すっと右脇に抱えなおしていた。

「きょ、鏡夜!」

その動作から察するに、先ほど鈍器と感じたものは、
どうやら鏡夜が環を学生鞄で殴りつけたもののようだ。

「こんなところでぼけっと立ち止ってると通行の邪魔だ」
じゃ、邪魔とはなんだ! 俺は真剣に考え事をしていたのだぞ!
 大体、鏡夜。元はといえばお前が昨日突然、
 あんなことを言うからいけないのだろう!?」

さっきまで、正門前で色々なパターンをシュミレーションしていたというのに、
結局、全て無駄になってしまったようだ。
口を開けば鏡夜を責める言葉が自然と出てきてしまう。

昨日、突然……ねえ」

環が使った単語のいくつかを、
鏡夜はゆっくりと重低音で繰り返して。


「昨日、突然、『部長主催』のミーティングが中止になったのは、
 一体『誰の』所為だろうね? 環」



登校時間の正門前は、他の生徒も大勢いるから、
ホスト部内では『魔王』の異名を取る鏡夜も、
明らさまに般若の表情を見せることはない。

「いや……その……それは……だって……」

けれども、にこにこと笑顔を浮かべる副部長の、
その裏に潜む殺気のような空気を敏感に感じ取った環は、
ぶるりと身体を震わせた。

自分の周りの温度が一気に氷点下に下がった気さえして、
とても『鏡夜の隠し事の所為だ』と言える雰囲気ではなくなっている。

すっかり萎縮してしまった環が、
いつものように白旗を上げようとしていた、その時。


「鏡夜先輩。た、環先輩。おはようございます」


そう言って、二人の前に現れたのは、
昨日から環を悩ませている、もう一方の原因である『彼女』だった。

* * *

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