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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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三つめの宝物 -5-

三つめの宝物 -5- (鏡夜)

「男と男の約束」を果たさせるため、蘭花は鏡夜に、今日の夜の予定を尋ねて来た。
(嫌な予感ほど、的中してしまうものなのです。)

* * *

「今夜ですか? ええと、今夜は……」

先ほどまでは、しっかり、予定は入っていたのだが。

『暇なの? 暇じゃないの? どっちなのよ』

当初の予定通り、新作発表会へ出席することに変更がなければ、
澱みなく堂堂と蘭花の申し出を断れたのだが、
その予定はキャンセルしようと決めたばかりだったこともあって、
少々言葉尻が覚束なくなっていたところを、蘭花に即座に突っ込まれてしまった。

「いえ、特に予定はありません、が……?」

これだから、小手先の嘘が通じない相手というのは、
会話がし辛くて苦手だ。

『じゃあ、今夜、「うちのお店」に来てくれるかしら。
 大切なお客様として、VIP待遇でおもてなしするわよ?』
「え!? 蘭花さんのお店に僕が客として伺うんですか?」

あまりに予想外の蘭花の申し出を、鏡夜が声高に反復すると、

「……ごほ、ごほん」

突然、運転席に座った橘が不自然に咳きこみ始めた。

電話中で、橘に声をかけることができない鏡夜は、
不満そうに眉をしかめると、ぎろりと運転席の橘を睨んだ。

「も、申し訳ございません。鏡夜様」

後部座席で蘭花と電話をしている鏡夜の言葉を、
「絶対に聞くな」と運転席の橘にいうことは、
この距離では物理的に不可能なことだ。

それでも、何も聞こえていない素振りで流すのが、
使用人としての暗黙のルールだというのに、
『蘭花の店に鏡夜が行く』という台詞には、
流石に橘も動揺を抑え切れなかったようだ。

なぜなら、蘭花の職場である「店」とは、
繁華街の一角にある『オカマバー』なのだから。

機会があれば店に遊びに来いと、
蘭花から常々言われてはいたのだが、
どうにも、そこは自分が訪れるには場違いな場所に思えて、
全く気乗りがしなかった鏡夜は、
あれこれ理由をつけて今日まで、
蘭花の勤務先に足を運ぶことはなかった。

「あの、蘭花さん? 別の方法でお詫びするということでは、いけないのですか?」
『なあに? あ、もしかして、鏡夜君。バーに来るのが怖いの?』
「そういう意味ではないのですが……」
『まあ、怖かったら誰かお友達を連れて来てもいいわよ?
 それくらいは、譲歩してあげるわ』
「他に選択肢はないんですか?」
『あたしからは「逃げるつもりはない」んでしょ?
 だったら、あたしが指定する場所には、どこにだって来てくれるわよね?』
「……」

以前、蘭花が自分の職場に乗り込んできたときに、
蘭花に対して告げた言葉を、
今や完全に逆手にとられてしまっている。

『じゃ、宜しくね。ボックス席一つ空けて、今夜お店で待ってるわ♪』

最近姿を見せない常連客に、
営業の電話をかけて、店に来るように誘いをかけているかのような、
艶っぽい言葉を残して、電話は強引に切られてしまった。

「……」

ぱたりと携帯を折りたたんだ鏡夜は、
けだるそうに重たい息を吐き出すと、
しばらく携帯電話の本体を、手の中でもてあそびながら、
蘭花の真意を考え込んでしまった。

蘭花がわざわざ自分を、
しかも、誕生日前日に当てつけのように呼びつけるからには、
おそらく単純に「接待されるだけ」ではないだろう。

病み上がりの自分を、まさか殴りはしないだろうが、
少なくとも、そうそう簡単に解放してもらえるとは思えない。

友達を呼んでも構わない、ねえ……。

そんなことを言われても、
まさか蘭花のことを全く知らない人物、例えば社内の部下などを、
一緒に連れて行くわけにも行かないので、
誘うことのできる人間というのは、おのずと限られてくる。


まあ、この際、あの『二人』に、借りを返してもらうことにするかな。


* * *

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