『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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三つめの宝物 -4- (鏡夜)
蘭花が言うところの、鏡夜が忘れている「男と男の約束」とは……?
* * *
『思い出せないなら仕方ないわね、ヒントを出してあげましょうか。
鏡夜君。今年の六月に、君はあたしに電話くれたわよね? 「ハルヒに告白した」って』
今年の六月といえば、
環の事故の後、ずっと心を閉ざしていた彼女が、
初めて鏡夜の想いを受け入れてくれた時期だ。
環のことを愛したままでいいから、
それでもいいから彼女に、自分の側にいて欲しい。
そう願った自分の気持ちを、
彼女の父親である蘭花に正確に伝えておくために、
その時、鏡夜は蘭花に電話で、ハルヒに告白したことを宣言していた。
「ええ。確かに僕から蘭花さんにお電話したと思いますが、
その時に何かありましたか?」
『あら? 鏡夜君たら、あの日、あたしが君に言った言葉、覚えてないわけ?』
「蘭花さんから言われた言葉?」
あの時の蘭花さんは確か……。
「『大事な娘をどこの馬の骨かもわからない奴になんてやれない』とかどうとか?」
『それは単なるジョークでしょ。その後よ!』
「その後って」
『電話の切り間際に、あたし、言ったでしょ? 鏡夜君に』
「……」
ハルヒと正式に付き合う意味でのけじめとして、
蘭花と電話をしたことについては流石に忘れるはずもないが、
半年以上も前の細かい会話内容まで、
全て思い出せと言うのも酷な話だ。
『だーかーらー』
もったいぶって、答えをじらして、
鏡夜自身にその答えを言わせようとしているのに、
一向にこちらが思い出せない様子なので、
とうとう蘭花は痺れを切らしてしまったようだ。
『ハルヒを泣かせるようなことがあったら、
いくら鏡夜君でも許さない……って言った事よ。忘れたの?』
あ……。
「そう……いえば、蘭花さんは前にそんなことをおっしゃられてましたね」
「そうよ。で、君はその約束をちゃっかり破ってくれたわけだけど、
そのオトシマエはどうつけてくれるのかしら?」
「落とし前と言われましても……」
今年の六月。
何度連絡を取ろうとしても、
会ってもくれず、電話にも出ない彼女にしびれを切らし、
鏡夜は深夜、彼女の部屋に無理矢理押し掛けて、
環のことを愛していてもいいからと、
自分はその次でもいいからと、
ただ、自分のそばにいてくれればいいんだと、
彼女にすがるように、自分の感情を吐露した。
あの時の言葉は、全てが「詭弁」とまでは言わないが、
決して自分の気持ちの「全て」ではなかった。
ただ、自分の心の一部、綺麗な部分だけを切り取って、
見目良い言葉だけを彼女に見せることで、
一旦は、彼女を自分の側に引き止めることに成功したものの、
隠していた醜い気持ち、
「彼女を独占したい」という想いが、
徐々に表に出るにつれて、自分と彼女の心はすれ違い、
結局、自分は、彼女の手を離すと決めた。
それが、告白してから二ヵ月後の八月の事だ。
別れ話はドア越しに、
姿を見せあわぬまま、電話で互いの声を拾っただけだったけど。
あの時、彼女の声は確かに震えていた。
「あの時は、確かに僕はハルヒさんを、
悲しませてしまったかもしれませんが……でも、今はもう……」
『それは分かってるわよ。色々鏡夜君も大変だったし、
今はヨリを戻したってことも、よ~く、分かってるわよ。
でも、だからって君が、ハルヒをあの時泣かせた事が、
ま、さ、か、チャラになるなぁ~んて思ってないわよねえ?』
「いや、でも蘭花さん……あの時は……」
『問答無用よ!』
鏡夜の言い訳を、一方的にシャットアウトした蘭花は、
『ということで、ちょっと前置きは長くなったけど』
ふふふと含み笑いをしながら、こう切り出してきた。
『鏡夜君。今晩、お暇かしら?』
* * *
続