『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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三つめの宝物 -3- (鏡夜)
電話口で、退院したばかりの鏡夜を気遣ってくれていた蘭花は、
不意に「忘れていることはないか」と尋ねてきて……。
* * *
忘れていること?
午後、取引先に向かう車中で、
突然かかってきた蘭花からの電話。
明日の自分の誕生日には、
ハルヒの家で、彼女と二人で過ごすことになっていて、
それを聞きつけたという蘭花からは、
父親としての嫌みの一つや二つ言われるのかと思いきや、
蘭花が電話をかけてきた理由は、
鏡夜が蘭花に対して、何やら「し忘れてること」があるからだと言う。
自分は、何か蘭花さんから頼まれ事をしていただろうか?
いくら数か月入院していて、
久々に現場に復帰したからといって、
よりにもよって蘭花からの頼み事を、
すっかり忘れてしまうほどに、自分が休みボケしているとは思えない。
「ええと……」
携帯電話を持つ手と逆の手を額に当てると、
鏡夜は脳内をフル回転させて、
蘭花の質問の答えを探そうとしていたのだが、
一向に思い当たることがない。
『あら? 忘れてるわけ~ぇ?』
蘭花は意地悪そうに言葉尻を伸ばす。
「いえ、その……ああ、そういえば、
僕のお見舞いにきていただいたお礼がまだでした……か?」
鏡夜が入院生活を送っている間、
蘭花は暇を見つけては、ちょくちょく見舞いに来てくれていた。
もっとも、それは、最愛の一人娘であるハルヒが、
毎日鏡夜のところに来ていたから、
「娘ついた悪い虫」を見張る……という意味もあったかもしれない。
まあ、その蘭花の本当の目的はともかくとして、
少なくとも、鏡夜の身内とホスト部のメンバーを除けば、
蘭花が、一番多く見舞いに来てくれた人物であることは間違いない。
退院して一週間。
そろそろ鳳家から正式に、
関係者に快気祝いが贈られる首尾になっているはずだが、
そういう一般的かつ形式的なものだけではなく、
蘭花にだけは、個人的にきっちり礼をしておく必要があるだろう。
蘭花が、鏡夜とハルヒの別れ話を聞きつけて、
鏡夜の所に押しかけてこなければ、
きっと、あの夜、自分はハルヒに別れを告げたまま、
二度と彼女と共に歩くことはなかっただろうから。
『快気祝いなら、昨日、鳳家名義で、
とっても高級そうな鍋料理セットが宅配で届いたわよ。
ものすごくおいしそうなお肉が入ってたから、
ハルヒと一緒に食べたいなと思ったのに』
「それは申し訳ありませ……」
『でも、それはまあいいのよ。
別に快気祝い目当てで、お見舞いに行ってたわけじゃないし。
あたしが言いたいことは、そういうことじゃなくて……』
鏡夜が丁寧に謝罪の言葉を口にしようとすると、
蘭花がその流れをぴしゃりと断ち切った。
『もう、鏡夜君、本当に思い出せないわけ?
全く信じられないわ。男と男の約束を忘れるなんて!!』
「は……? 男と男の約束?」
* * *
続