『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
* * *
予め伝えていたより、若干遅くなったが、
無事仕事を済ませ、鏡夜が彼女の部屋に到着すると、
玄関先でいきなり、「おかえりなさい」なんて出迎えられてしまったので、
ちょっと照れくさいような、妙な気分になってしまった。
退院明けで、仕事で疲れているだろうと、
ハルヒは風呂の準備をしておいてくれたのだが、
鏡夜としては、仕事の疲れよりも何よりも、
薬で抑えこんだとはいえ、
例の「二日酔い」の気だるさのほうが幾分辛かったから、
ハルヒの気遣いがとてもありがたかった。
早速風呂に入り、着替えを終えてバスルームを出ると、
ハルヒはキッチンで、鍋を火にかけてなにやら作業をしている。
「あ、先輩。座っててください。今、料理持っていきますね」
あの日、扉の向こう側に、
彼女の部屋の合鍵を落とし、背を向けてから数ヶ月。
実は、呼び鈴を押す直前まで、
あまりに久しぶりすぎて、鏡夜は若干緊張をしていたのだ。
けれど、扉を開けた彼女が、
いつものような笑顔で自分を迎えてくれたので、
そんな緊張感など一気に吹き飛んでしまった。
料理なんて一切したことのない自分が、
手伝うといっても彼女の邪魔になるだけだろうから、
言われるままにリビングに行くと、
部屋の中央のテーブルの上にサラダとワインが置いてあった。
ワインなんて見慣れないものが、
しかも、綺麗にラッピングされて置いてあるものだから、
一体どうしたことかと、驚いて質問したら、
初めて一緒に過ごす誕生日だから記念に買ってきた、との返事。
手にとってラベルを確認したところ、
自分の誕生年の、しかも、なかなかの高級ワインだ。
イベントごとには、とかく関心が薄そうなハルヒでも、
そういう気を使ってくれるものかと、
驚き半分、嬉しさ半分でテーブルを見渡したところ、
当然あるべきもの……ワイングラスが無い。
どうやら、普段飲み慣れないワインを買ってきたはいいものの、
ワイングラスを用意する、というところまでは気が回らなかったらしく、
普通の飲み物用のガラスのコップが二個置いてあって、
こういうところは、やっぱりハルヒはハルヒなんだと、
鏡夜はつい苦笑いしてしまった。
料理の準備が整うまでの間、
鏡夜は、今日の昼に蘭花から渡された、
誕生日プレゼントの封筒の中身を見て待っていることにした。
「先輩。さっきから、何を見てるんですか?」
料理を運びながら、
ハルヒがこちらをチラリと見つつ、尋ねてきた。
「今日頂いた誕生日プレゼントだよ」
「プレゼント? ……って、先輩、それ!!」
鏡夜が手にしていたものを覗きこんで、
ハルヒの顔がさっと赤くなる。
「それ、私の『子供の頃の写真』じゃないですか!
なんで勝手に、そんなのも持ってるんですか!」
慌てたハルヒが、
写真を奪い取ろうと手を伸ばしてきたので、
写真を持った左手を上の方に持ち上げて、
奪い返されることを防ぎつつ、ハルヒに事情を説明する。
「『勝手に』じゃない。
蘭花さんがわざわざ今日、会社に寄って届けてくれたんだ。
父親からもらったものなんだから、
お前がどうこういえるものじゃないだろう?」
「そ、そうだったんですか?
でも、なんで、お父さんは私の昔の写真なんか、
鏡夜先輩にプレゼントしたんだろう…………」
ハルヒは不満そうにぶつぶつ文句を言いつつも、
入手経路を聞いて、奪い取るのを諦めてくれた。
鏡夜の主観的感想を言うならば、
かなり愛らしい写真が多いのだから、
別に困ることはないと思うのだが、
本人にしてみれば、
子供時代の写真を見られるというのは、ひどく恥ずかしいものらしい。
まあ、逆の立場に立たされることを考えてみれば、
自分の子供の頃の写真なんて、
ハルヒに持っていられたら、たまったものではないので、
嫌がる気持ちは分からないではないが。
「そういえば、お前だけが映ってる写真がほとんどだが、
一枚だけ、お前と一緒に、蘭花さんと……、
それから、琴子さんが映っている写真を頂いたぞ」
「え……?」
亡くなった母親の名前を聞いて、
ハルヒの眉が少し下がり、少し寂しそうな表情になった。
「お母さんの写真、ですか?」
* * *
続