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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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三つめの宝物 -21-

三つめの宝物 -21- (鏡夜)

酔いが回ったあげく、ついに意識を失ってしまった鏡夜。
そして、翌朝。元々寝起きの悪い鏡夜は、ちゃんと目覚めることができたのか……?


* * *

輝くばかりに幸せな未来を、
彼女は本来、手に入れることができたはずなのに、
突然それを失ってしまった。

これから、彼女を幸せにしてやりたくとも、
かつて彼女が手に入れるはずだった幸せと同じものを、
自分は彼女に与えてやることはできない。

中途半端な真似事なんて、全くする気はないから。

それでも、自分は、この先も、
ずっと、彼女と一緒に居ようと思います。

自分に今できることの全てを、
彼女とのこれからのために捧げます。

だから、蘭花さん。許してください。

今は遠く夏の日に。


愚かにも彼女を裏切った自分が、彼女の側に居続けることを。


* * *

……。 

それは、今から思い返してみても、
人生の中で一、二を争うほど、最低最悪の朝だったと思う。

昨日の夜に家に帰りついて、
ベッドに入った記憶もなければ、
朝、起きた時の記憶すら曖昧なのだ。

鏡夜自身、自分の寝起きが悪いことは百も承知なので、
毎朝、寝過ごしたりしないよう、
ベッドサイドには、アラームが大音量で鳴る目覚まし時計を、
常に三個は設置している。

しかし、その三つのベルを、
今日は夢の中でも聞いた記憶がない。

今朝、いつものように、
鏡夜の部屋、入ってすぐのメインルームで、
待機していたらしい橘の証言によれば、
二階にあるベッドルームから、
これまたいつものように、けたたましい目覚まし時計の音が鳴り響き、
ちゃんと起きれるかどうか、心配になった橘が、
ベッドルームを見上げ、はらはらと状況を見守っていたところ、
いつもならありえない、ガチャンガチャンと、
何かが壊れるような大きな音が聞こえてきたために、
驚いてベッドルームへの階段を上がってみたら、
目覚まし時計が無残にも、壁に叩きつけられ針を止めていたという。

「鏡夜様、申し訳ございません。
 下で待機していたのですが、
 勝手ながら、寝室に上がらせていただきました。
 鏡夜様? 起きておられますか?
「……」

橘には、メインルームへの立ち入りまでは許可していたが、
それを越えて、べッドルームまで上がりこんでくることは、
流石に許していなかった。

しかし、この日ばかりは、めざまし時計の破壊音と、
刻一刻と迫る時間を考えて、やむを得ず階段を上がってきたらしい。

「そろそろお支度をなさいませんと、
 午前の会議に間に合いませんが」
「……」

ぐらぐらと、頭の中で縦横無人に暴れまわる、
激しい頭痛に耐えていた鏡夜は、
橘に強引に揺すり起こされて、
仕方なくベッドの上で半身起こしてみたものの、
そこからどうにも動けないでいたところ、
いつもなら寝起きで不機嫌な自分を、
遠巻きに見守っているはずの使用人達が、
鏡夜がぐったりとしていて抵抗できないのをいいことに、
ここぞとばかりに、わらわらと群がってきて、
そのまま階下のバスルームに強制的に連れて行かれ、
なんだか分からないうちにシャワーと着替えをさせられた。

「鏡夜様、朝食はいかがなさいますか?」
「…………今日は……いい」
「では、お薬をお持ちしましたので」

何か食べれるようなところまで、
とても体調が回復していなかったので、
橘から渡された二日酔いの薬だけを飲み込んで、
ふらふらの状態で玄関を出た鏡夜は、
送迎車の後部座席に倒れこんだ……。

……とまあ、橘の説明によれば、
今朝の自分の様子はこんな感じだったらしいのだが、
実際のところ、この日の朝の過程の全ては、
ほとんど曖昧なままだった。

鏡夜の意識がようやくしっかりしてきたのは、
送迎車が発車してしばらくしてからのことになる。

「鏡夜様。この時間でしたら、
 なんとか定例会議には間に合うと思いますのでご安心ください」

今朝、鏡夜を起こす時には、
きっといつも以上に苦労したと思われるのに、
橘は、何故か普段よりも嬉しそうな様子で運転席に座っている。

「…………分かった」

おそらく、今までメインルームにしか、
入ることを許されていなかった自分が、
緊急事態とはいえベッドルームに入れたことが、
嬉しくてたまらないのだろう。

橘が機嫌が良い理由について、想像することは容易だったが、
それを言葉に出してからかう気力まではなく、
鏡夜はただ短く返事をすると、車の後部座席で額を押さえて目を閉じた。

頭が痛くて、胃のあたりもむかむかする。
薬が効いてくるまでには、まだ時間がかかりそうだ。

それにしても、昨日は一体なんだったのか。

光と馨が帰った直後、店のスタッフ総勢で、
誕生日を祝われた辺りまでの記憶は、
辛うじて残っていたが、
恐ろしいことに……そこから先の記憶がさっぱりだ。

闇に埋もれた記憶を掘り起こそうとすると、
何故か妙に気恥ずかしい気分にもなってくる。

記憶は全く無かったから、単に直感的なものではあるが、
ものすごく恥ずかしいことを、
いくつか口にしてしまったような……そんな気がする。


自分は昨日、蘭花の前で、
一体どれほどの醜態をさらしてしまったのだろう?



* * *

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