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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

Suriya'n-Fantasy-World

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三つめの宝物 -14-

三つめの宝物 -14- (鏡夜)

全てを捨てて新しい道を選ぶこと。その場にしがみついて必死でもがくこと。
一方が正しく、一方が誤りなのではない。自分が選んだ道……それが一番正しい答え。

* * *

「さ、湿っぽい話は終わりにして、ガンガン飲むわよー!!」

蘭花の号令と共に、酒のボトルが次々と席に運ばれてくる。

「さあ、鏡夜くん、ぐいっとぐいっと!」
「は、はあ……」

まだまだ余裕がありそうな鏡夜を、
明らかに潰しにかかろうと、
蘭花が異常なほどのハイペースで酒を勧めてくる。
鏡夜が少しでもグラスを空けようものなら、
数秒後には別の酒が運ばれてくるのだ。

まったくキリがない。

「ちょ、ちょっと、蘭花さん。流石にペース早すぎなんじゃ……?」

向かいの席の馨は、その様子にすっかり呆れ顔だ。

「そんなことないわよ。鏡夜君は私より全然若いんだし、
 もっともっとイケるでしょー?
 光君も馨君も遠慮せず、もっとじゃんじゃん飲んでいいのよ?」
「……あははは、僕らは別に……あ!

蘭花の言葉に苦笑いをしながら首を振っていた馨だったが、
突然、ふっと顔を下に向けると、
ジャケットの内ポケットから携帯電話を取り出し、画面を確認しはじめた。

「ごめん、何度か着信入ってたみたい。
 鏡夜先輩、ここじゃちょっと騒がしいから、外行ってくる」
「そんなことを言って、馨。
 お前だけ逃げる気じゃないだろうな?
「や、やだなあ……そんなことしなっいって。
 人質に光置いていくし。美鈴っち、光をよろしく!」
「おっけ~。あたしにまかせといて♪」
「ちょっと待てよ、馨!
 外に行くなら俺も連れてけって……うあっ!

馨に付いていこうとした光を、
美鈴の太い腕がぐいっとひっぱり戻す。

「光君は、あたしと一緒にお酒飲みながら、馨君を待ってましょうね~♪」
「か、馨ぅ!!」

ごめんごめんと謝りながら、馨が席を外した後、
一人で美鈴の相手をしなくてはならなくなって、
光の飲むペースが、少々速くなったような気がする。

とはいえ、ただただ蘭花の攻撃に、耐え続けるしかない鏡夜には、
光の様子を構ってやれる余裕は全く無かったのだが。

ちょっと電話をしに出ていった割には、
馨はなかなか戻ってこなかった。

その間、際限なく強制的に飲まされ続けたせいで、
流石に気分が悪くなってきたな……と考えていた矢先。


「どーして、きょーやせんぱい、らったろ!!」


突然、光が大声を出して鏡夜に絡んできた。

「……光?」
「きょーやせんぱいらんて……なりかんがえれるら、
 ぜんっぜん、わかんらいし……まおうらし……はらぐろいし、
 ぜっらいおれろほーが……いいおとこらのに……」

なんと、鏡夜よりも早く、
光のほうが完全にできあがってしまったらしい。

「お……おい、光? ……お前……かなり酔ってないか?
「なにいっれるんら? おれは、よっれらんれないろ!!!

頻りに「酔ってない」と繰り返す光だったが、
目は座ってるし、全く呂律が回っていないし、
明らかに悪酔いしてしまっている。

「おれだっれ……はるひろこと……ずっとずっとすきらったのに、
 ろーして……きょーやせんぱいが……えらばれるんらよ」

鏡夜と光は、細長いテーブルを挟んで、
向かい合わせに座っていたのだが、
光は、舌足らずな様子で不満を言いながら、
美鈴の手を振り払うと、
コの字型にテービルをぐるりと囲んでいるソファーを伝って、
鏡夜の隣にふらふらと回り込んできた。

「れっらい、はるひのこと、いつもみたいに、
 なんか……うまいこといっれ……だましたんら。
 ひどい、ひどいよ……うわあああああん

ついに、光は鏡夜の肩にしがみついて、
わーわーと大きな声で泣き始めた。

「ごめーん、遅くなっちゃった……って、光、酔っ払っちゃった?

アルコールが回り始めてきた所為で曖昧な感覚ではあるが、
馨は優に三十分以上席を外していたと思う。

ようやく電話を終えて、席に帰ってきた馨は、
光の様子をみてやれやれと溜息をついた。

「……知らなかったが、光は『泣き上戸』だったのか?」
「そう……みたいだね。
 光がこんなにお酒が弱いなんて、僕も知らなかったけど。
 ごめん、美鈴っち、水もらえる?
 ……ほら、光、ちょっとこっちきて、これ飲みなよ」
「うう。かおるぅ~。おれにはかおるだけらよ~

馨が帰ってきたことに気付いた光は、
再びソファーの上を這うようにして馨の側に戻ると、
今度は馨に抱きついて、しくしくと泣き始めた。

「……それにしてもいけ好かないわね。
 鏡夜君、全然お酒強いんじゃない。
 もうちょっと乱れてくれれば良かったのに

未だに、表向き冷静な様子の鏡夜を見て、
蘭花はとても悔しがっている。

だが、光のように無様に酔っ払って、
理性を飛ばしてしまうようなことだけは、絶対にお断りだった。

恥も理性も全て捨てて、自分の本心を曝け出す。


そんな格好悪い姿を見せるのは『彼女』の前だけで十分だ。


鏡夜は蘭花に気付かれないように、
ちらっと、腕時計で時間を確認する。
店に来たのは20時過ぎだったと記憶しているが、
時計の針は間もなく23時になろうとしていた。

「……蘭花さん。流石に飲みすぎのような気がしますし、
 そろそろ勘弁してもらえませんか?
「そんなこと言っちゃって、まだ余裕がありそうじゃなーい。
 まだ11時よ? お店の営業時間も終わってないのに、もう帰るつもり?」
「ですが、店に来てから二時間ほど経ちますし、
 もう、充分お付き合いしたかと思うんですが……」
「いーえ! 全然足りないわよ。ほら、もう一杯!
 今度はウイスキーで勝負よ! ロックにする? それとも水割り?」

父親の自棄酒に付き合う、という趣旨が、
完全に『飲み比べ』に変わってしまっているようだ。

「……では、ストレートで」

アルコールが入った所為か、若干暑くなってきた気がして、
ネクタイを緩めながら、鏡夜は渋々頷いた。

「あら、なかなか通な飲み方をするのね」

蘭花はウイスキーを、
グラスの底から指二本分の高さまで注いで鏡夜に手渡すと、
もう一つ別のグラスにミネラルウォーターを注いで、
鏡夜の前に静かに置いた。

「味と香りが薄まるのが嫌なんですよ。
 まあ……父からの受け売りですけどね」

* * *

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