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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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春の光に風馨る -9-

春の光に風馨る -9- (光&鏡夜)

すっかり恋人同士の雰囲気になっている鏡夜とハルヒの様子に、どうしても納得行かない光は、
鏡夜にきっぱりと宣言した。今でも、自分はハルヒのことが好きだと……。


* * *

今でも僕はハルヒのことが好きだ。
だから、納得いく返事がなければ、僕は絶対に引かない。

「鏡夜先輩が言えっていうから、俺はちゃんと言ったよ。
 だから、鏡夜先輩もごまかさないでちゃんと答えてよ」

怒って興奮していたせいもあるし、
待つことが性に合わないってこともあったと思うんだけど、
僕は苛々と足を震わせながら、鏡夜先輩の言葉を待っていた。

時を刻む針の音が苛立ちを倍増させていく。

聞きたいことがあるなら聞けといったくせに、
あまりに無言が続くから、僕が痺れを切らして、
何か話そうと口を開きかけたとき、
やっと、鏡夜先輩が喋りだした。

「……去年の春……環の事故があった日」

殿の名前を鏡夜先輩の口から聞くと、どきりとする。

もちろんホスト部のメンバーが集まって、
殿の話題が出るときには話を合わせることはあったけど、
この一年、鏡夜先輩から殿のことを口にするなんて、
記憶を追う限り初めてだったんじゃないかと思う。

「事故の連絡を受けた後の記憶が、俺には無いんだ」

僕の質問に答えてくれるのかと思いきや、
いきなり明かされた事実に、
僕の中の怒りは瞬間的に吹き飛んでしまった。

「……えっ?」

鏡夜先輩が殿のことで傷ついているのは、
理解しているつもりだったけど、
僕らと会う時にはいつだって冷静な鏡夜先輩が、
殿の事故のことで、そこまでショックを受けていたなんて。

でも、そんなに深刻なことを、今、僕に明かす意図は何だろう?

「何、それ……どういうこと?」

ハルヒが鏡夜先輩に付き添っていることと、
鏡夜先輩の、殿の事故の日の記憶と、
一体、何の関係があるっていうんだろう?

「橘から事故のことを聞いて、そこから記憶が曖昧なんだが、
 でも、俺は無意識にハルヒの家に向かってたらしい」

ハルヒの幸せの輪が切れてしまったその日。
そして多分、鏡夜先輩にとっても、大切なものが失われてしまった日。

「あの日、ハルヒの家に鏡夜先輩が行った?」

春の悪夢が冷たく世界を包んだ瞬間に、
鏡夜先輩とハルヒが……一緒に……居た?

「俺が正気に返ったときにはハルヒの部屋の中に居て、
 事故のニュースが速報で流れていて、
 ハルヒは俺の目の前で、狂ったように大声で泣いていた」
「それで……鏡夜先輩はどうしたの?」
「俺は一晩中、いや、次の日の夕方近くまでずっとハルヒの傍にいた」

いつのまに抜け駆けされたのかと考えていたけれど、
まさか、そんなに早く鏡夜先輩が行動を起こしていたなんて。

僕も、もっと早くハルヒのところに行っていればと、
後悔の念に、胸が締め付けられる。

でも……もしも、僕が鏡夜先輩と同じ立場にあったとして。


その時、僕はハルヒの傍に行ってやれただろうか?


「多分あの時……俺は少し、心がおかしくなっていたんだと思う。
 だから、ハルヒを支えてやっていたつもりで、
 すがっていたのは、逆に、俺のほうだったのかもしれない」

僕と馨は海外の大学に進学していて、
ハルヒの卒業式に行くことはできなかったから、
代わりに僕と馨で袴を一式デザインしてプレゼントした。

けれど、その後、ハルヒの卒業式の前日に、
殿が飛行機事故に会ったことと、
そして、ハルヒが卒業式には出なかったことを聞いた。

殿の事故の知らせが来たときには、
僕は何も考えられなくなってしまって、
馨と一緒にわんわんと泣いて、
正直ハルヒのことを気にしてやれる状況じゃなかった。

気を取り直したのは数日後。

そしてやっと、ハルヒがどうしているのか、
心配できる余裕が生まれたんだけど。

「その日から俺はハルヒの傍にいる。
 ハルヒが俺のことを受け入れてくれるまで、随分時間はかかったがな」

殿との関係を考えれば、
きっと僕ら以上に深く大きな衝撃を受けたはずの鏡夜先輩は、
僕らが泣いてばかりいるときに、
無意識にハルヒのところに向かっていたんだ。

「じゃあ、この一年、ずっと鏡夜先輩はハルヒを慰めて、
 それでハルヒは少しずつ殿のことを吹っ切って、
 今は……鏡夜先輩を選んだってこと?」

僕だって、ハルヒに電話したり、メールをしたり、
色々と励ましていたつもりだったけど、
僕の言葉は全て上滑りで、ハルヒの心に直接届いているようには思えなかった。


ハルヒが受け入れたのは、鏡夜先輩の一体どんな言葉だったんだろう。


ハルヒのことを好きだなんて大口を叩きながら、
結局、肝心なところを押さえていない自分の行動が、
なんだかとても情けなくなって、
僕がしょんぼりと落ち込んでいると鏡夜先輩が僕の言葉を否定した。

「いいや、それは違う」

鏡夜先輩はちょっとの間、
唇をかみしめるような感じで口を閉じていたけれど、
しばらくして、ふうっと静かに溜息を吐いた。

見れば鏡夜先輩の左手が、軽く拳を握っている。


「ハルヒは環のことは忘れていないさ。今でもな」


* * *

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