『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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春の光に風馨る -8- (馨&ハルヒ)
光が何に苛立っているのか、全く分かっていない様子のハルヒに怒りを覚えた馨は、
ハルヒの手を握りしめて問い詰めた。ハルヒは、また……別の人を選ぶのかと。
* * *
ハルヒ。どうしてなのかな?
僕らに大事なことを気付かせてくれた、
君はとても大切な存在なのに。
ねえ、ハルヒ。答えてよ。
僕らはこんなにも君のことが好きなのに。
どうして君が選ぶのは、いつも違う誰かなんだろう?
「馨、痛いってば。手を離して」
「嫌だ」
ハルヒの手を握りしめていた僕の体は、少し震えていたように思う。
昔、光が僕の手を握って震えていたみたいに。
この震えが止まらないのは、
おそらく、すぐ傍にある大切なものが、
手の届かない場所に行ってしまいそうな怖さのせいだ。
「……馨」
僕の隣で、ハルヒが吐いた小さな溜息は、
どんな意味があったんだろう。
ハルヒは僕の手を振り払おうとしていた動作を止めると、
僕の名前を呼んでくれた。とても、落ち着いた声で。
「私は、どこにもいかないよ?」
僕の怯えを、ハルヒは見抜いていたんだろうか。
ハルヒは驚いている僕をじいっと見上げて、
それから僕の手をぎゅっと握り返してくれた。
「ちゃんと説明するから。だから、離して」
手を伸ばせばハルヒを抱きしめてしまうことだってできた。
でも、ハルヒは慌てたり怒ったりせずに、
ただ真面目な表情で僕を見てくれていたから、
僕は急に自分の行動が恥ずかしくなってきて……。
これ以上、ハルヒに触れていてはいけないと思った。
「ごめん……僕……」
僕は一体何をしているんだろう。
あまりに素直なハルヒの態度に自己嫌悪に陥った僕は、
ようやくハルヒの手を解放してあげた。
指先に残った水滴は、すぐに空気に触れて乾いていってしまう。
「こっちこそ、ごめんね」
突然手を握ったりしたのは僕なのに、
ハルヒがそう謝ってきたから、
僕はぎこちなく笑顔を浮かべるしかなかった。
「なんで……ハルヒが謝るの……?」
悪いのは僕だ。
ハルヒが誰のことを選んだって、
僕が、それを責めたりできる立場じゃないのに、
こんなときに無理矢理その感情を押し付けるなんて、
とても乱暴な、ハルヒの気持ちなんてお構いなしの行動だ。
だから、ハルヒが謝る必要なんてないのに。
どうしてそんなことを言ってくれるの?
「私ね。気付いたことがあるの」
「気付いたこと?」
「うん」
ハルヒは僕の目を覗きこみながら微かに笑ってくれた。
どこか、寂しげな眼差しをしながら。
「大切な相手を傷つけないように、
自分の気持ちに嘘をついて誤魔化しても、
いつまでも自分の気持ちをはっきりさせずにいることは、
結局その相手を傷つけるだけだって、気付いたの。
だからもう、何も分からない振りで逃げたりしないよ」
ハルヒってこんな顔をしていたっけ?
「だから、ごめん。馨」
こんなにもハルヒは、綺麗だったかな?
僕を見上げるその顔が。
僕を見つめるその瞳が。
僕に届くその声が。
僕の心に触れる、ハルヒ、君の心が。
僕は、とても綺麗だと思った。
涙が零れてしまいそうなほどに。
君はどうして、そんなに綺麗になってしまったの?
戸惑う僕の前で、
少し憂いを帯びた大人びた表情を見せながら、
ハルヒはこう僕に言ってくれた。
「ずっと、馨の気持ちに気付かない振りをしていて、ごめんね」
* * *
続