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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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春の光に風馨る -7-

春の光に風馨る -7- (光&鏡夜)

鏡夜とハルヒの様子に疑問を覚えつつも、その場しのぎの雑談を繰り返していた光は、
逆に鏡夜から問いかけられてしまう。「何か言いたいことがあるんじゃないのか?」と……。

* * *

鏡夜先輩に促されるままに、僕の聞きたいことをぶつけてしまったら、
感情がセーブできるか、さすがに怪しかったから、
僕はなんとかその場を誤魔化そうと、もごもごと口の中で呟いた。

「言いたいことなんて、別に……」

普段から、人に遠慮なんてする柄でもないんだけれど、
こんなに心の中がかき回されている状況では、
どんな酷いことを言ってしまうか、わかったものじゃなかったから。

「まあ、言うつもりがないなら、それでも構わないが、
 光が何も言わないなら、俺からは何も説明する気はない」

鏡夜先輩はきっと全部分かっているんだ。
僕が何でこんなに不機嫌なのか。

「もう一度聞くが、本当に言いたいことはないんだな?」

鏡夜先輩はいつもそうだ。

僕らがどんなに慌てていても、自分だけは全てを見通していて、
一歩引いたところから余裕ぶって、皆のあたふたする様子を見物している。

殿は僕らのことを『双子は悪魔だ』なんてよく言ってたけど、
鏡夜先輩が裏でめぐらす策略に比べれば、
僕らの悪戯や嘘なんて子供だましで可愛いものだと思うし、
正直、鏡夜先輩には敵わないって感じることはすごく多い。

でも。

「怪我してる鏡夜先輩には悪いけど、遠慮とかそういうの、出来ないからね」
「ああ、構わない」
「じゃあ、聞くけど……」

僕だって今度ばかりは簡単には引けない。

「ハルヒは殿のことは忘れて、今度は鏡夜先輩を選んだの?」

ハルヒがここにいることが気になって、
僕が苛々していたってことは十分予想していたと思うのに、
意外に鏡夜先輩の返事は遅かった。

「……どうして、そう思う?」

言いたいことがあるなら言えといったくせに、
まだはぐらかそうとする鏡夜先輩に、
僕の頭の中は一気にかあっと熱くなって、
僕は椅子から立ち上ると、ベッドの端にばんっと両手を付いた。

「だって、全然違うじゃん! 前に会ったときと。
 ハルヒはずっと殿のことが忘れられないって言っていたのに、
 さっきからずっと鏡夜先輩の手を握ってて、
 ……あんなの……まるで、恋人同士じゃんか!」

駄目だ。やっぱり抑えが効かない。
鏡夜先輩を責める言葉が次々と出てきてしまう。

殿のことを鏡夜先輩の前で話すのは、
本来ならタブーのはずなのに。

「一体何がどうなってこんな雰囲気になってるわけ?」

でも、殿のことを思い出させて、鏡夜先輩が傷ついたとしても、
それは僕の所為じゃない。

僕にこんなことを、言わせたのは鏡夜先輩だ。


「鏡夜先輩、俺の知らないところで、ハルヒに何をしたんだよ!!」


僕はハルヒのことが大事だ。
僕にとってハルヒはとても大切な女の子だ。
その気持ちは、鏡夜先輩にだって負けるつもりはない。
でも、あまりに大切で、あまりに大好きだったから、
僕はハルヒの傷が癒えるのを、ただ待つしかなかった。

なのに、こんなの抜け駆けじゃないか。

「なんでだよ。ハルヒは殿のことが好きだったんじゃなかったの?
 だから、俺はあいつのこと諦めたのに……」

一気に思いをぶちまけたあと、なんだか急に力が抜けてきて、
僕は、はあはあと大きく息を吐き出しながら、椅子に腰を下ろした。

頂点を越えた怒りは一転して、僕はなんだか泣き出したくなってきていた。

高校の時にハルヒが殿を選んだから、僕はハルヒを諦めて、
それから殿が突然いなくなったから、僕はハルヒを見守ってた。
こんな性格だから、表向きはからかうことしかできなかったけど、
僕の言葉で少しでもハルヒが笑ってくれれば嬉しかったし、
いつか、時間が傷を癒して、ハルヒが殿とのことを吹っ切って、
閉じこもったその場所から出てきてくれたら、
その時、僕の気持ちをハルヒに伝えようって、そう思っていたのに。

その壁の内側に、いつの間にか鏡夜先輩がいたなんて。

同じ条件でスタートしているはずなのに、
僕がぐずぐずしている間に、なんて間抜けな結果だろう。

「鏡夜先輩。俺は、高校の頃からハルヒのことが好きだった」
「それは……知っている」
「今でも」

鏡夜先輩の指がぴくりと動く。



「今でも、俺はハルヒのことが好きだ」



* * *

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