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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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春の光に風馨る -4-

春の光に風馨る -4- (光&馨)

光と馨の前で、鏡夜の手を握りしめいるハルヒは、とても優しい表情をしていた。
居なくなってしまった「誰か」と、かつて一緒にいた時のように。


* * *

僕ら桜蘭高校ホスト部のメンバーは、
皆、ハルヒのことが好きだったんだと思う。

もちろん「好き」という気持ちには、色んな意味があるから。

先輩達がどんな意味で、どれくらいハルヒのことを好きだったのか、
はっきりとは分からない部分もあったけれど。

僕は、馨と僕のことを、一人一人の別個の人間として、
自然と見分けてくれていたハルヒのことを、
かけがえのない存在だと感じていた。


『光はハルヒの事が女の子として好きなんだよ』


ハルヒが殿や他の先輩達と話をしているのを見る度に、
僕が感じていたもやもやとした黒い気持ちが、
恋なんだって気付けたのは、この馨の一言がきっかけだった。

友達としてでもなく、ホスト部の一員としてでもなく、
一人の女の子として……。


僕はハルヒのことを、いつのまにか大好きになっていたんだ。


もっとも、僕の(おそらくは馨にとっても)、
この初恋は最初から分が悪い勝負ということは、
殿に対するハルヒの態度で、十分わかっていたんだけど。

結局、ハルヒが選んだのは、僕ではなく殿のことで、
本当なら僕の初恋は、そこで綺麗に幕を閉じたはずだった。

けれども、物語には続きがあった。

ハルヒが選んだ、そして、僕らにとっても大きな存在だった殿が、
突然事故に遭って居なくなってしまったからだ。

「光と馨? 二人ともそこにいるのか?」
「ええ。二人とも、ついさっき来たんですよ」

目の上に包帯をされていて周りを見ることができない鏡夜先輩に、
ハルヒが状況を説明している。

「手術直後にどうかとも思ったんだけど、
 昨日橘さんから連絡があって、心配だったから、馨と一緒に来たんだよ」
「二人とも忙しいところ、すまなかったな」
「……こんな状況で謝らないでよ、鏡夜先輩」

馨はそれだけいうと、また口をつぐんでしまった。
蘭花さんとのことを気に病んでいるのか、まだ元気がない。

「そういえば、ハルヒと会うのは久しぶりだよね」
「そうだね。光や馨と会うのは一年ぶり、かな?」

鏡夜先輩とハルヒが一緒にいるところを見たのは、
一年前、ハニー先輩が企画したケーキパーティ以来だと思う。

ハルヒの卒業式前日に起きた殿の飛行機事故に、
僕らもかなりショックは受けていたんだけど、
ハルヒや鏡夜先輩の心の痛みは、僕ら以上だったはずで、
ハニー先輩もそれを心配して、
二人を励ますためにパーティーを企画した。

そして、パーティーが終わって、
珍しくハルヒは、僕らの車に乗って一緒に帰ることになったんだけど、
帰り際、僕らを見送る鏡夜先輩と、先輩に背を向けるハルヒの間には、
なんともいえない、ぎこちない空気が流れていたように思う。

そして、その日を境にハルヒは、
ホスト部の集まりに顔を見せなくなった。

そんなハルヒの様子はずっと気になっていたけれど、
僕も馨も日々仕事が忙しく、
一方でハルヒも修習が佳境で、卒業試験のために猛勉強中だったから、
なんだかんだで会えないままに、あっというまに一年経ってしまった。

そして今日、久しぶりに会うハルヒは、
僕の目の前で鏡夜先輩の手をしっかりと握っていて、
二人の間にあった壁が、すっかり消えている気がする。

「鏡夜先輩、傷は痛いの? 大丈夫?」
「さすがに……大丈夫とは、言い辛いがな」

馨がおそるおそる尋ねた言葉に、
答える鏡夜先輩の口調は、見た目の割りにはしっかりしている。
やや皮肉めいて強める語尾も、普段とそれほど変わらない。

その鏡夜先輩の姿を見て、昨日からの心配が安心に変わると同時に、
僕の心にはまた黒い疑問が沸き出し始めていた。


どうして、ハルヒは鏡夜先輩の手を握ったまま離さないんだろう。


僕と馨がいるのに恥じることもなく。
しかも、殿の飛行機事故以来、一度も見ることが無かった、


殿と一緒にいるときみたいな愛らしい笑顔を浮かべて。


目の前に、理解に苦しむ光景が広がっていた所為で、
後から冷静に考えれば、この時の僕はハルヒと鏡夜先輩の態度に、
腹を立てていたのかもしれない。

だから、僕はつい言ってしまったんだ。


「鏡夜先輩、その目は……大丈夫なの?」


馨もハルヒも、恐らく意識的に避けていた話題だというのに、
僕の遠慮のない一言に、
隣に座っているハルヒはもちろん、向かい側にいる馨も、
何てことを言い出すのかと、一斉に僕に非難の眼差しを向けた。 

* * *

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