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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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春の光に風馨る -14.5-

春の光に風馨る -14.5- (ハルヒ&鏡夜)

光と馨がお見舞いにきてくれてから、終始がやがやと賑やかだった病室も、
二人が帰った後は再び静かになって……。

* * *

がたん。

病室の扉が閉められて、遠ざかっていく光と馨の気配に、
ハルヒはほっと安堵の息をついた。

「鏡夜先輩、疲れませんでした?」

二人が早速かけつけてきてくれたのは嬉しかったのだが、
光も馨も、鏡夜を元気づけようとしているのか、
いつにも増してハイテンションになっていたから、
二人の話相手をして休むことができていなかった、
鏡夜の体調のことが気になっていたからだ。

「……まあ、多少な……。
 ところで、あいつら随分長いこと落書きをしていたようだが、
 何か変なことを書いていないだろうな?」
「ええと、そうですね……」

恐る恐るハルヒがギブスの表面を見てみると、
そこには文字は一つもなく、
代わりにイラストがいくつか描きこまれていた。

「えっと、クマちゃんとか、ウサちゃんとか、
 ポメちゃんとか、ピヨちゃんとか。なぜかハロウィンのカボチャとか。
 なんだかとってもファンシーなギブスになってますよ」
「なんでまたそんなイラストを……」

口の端をちょっと歪めながら、
何の嫌がらせだと、ぽつりと呟いた鏡夜に、
ハルヒは小首を傾げてうーんと唸った。

「これは私の想像なんですけど。
 多分、皆が傍にいるから頑張れって励ましてるんじゃないですか?
 素直じゃないし、二人とも」
「なるほどな……」
「鏡夜先輩、疲れてると思いますし、もう寝てくださいね」
「お前こそ、昨日の夜からずっといるんだろう?
 今日はもう家に帰ったらどうだ?」
「そうですね……それじゃあ……『先輩が寝たら帰ります』ね?」
「……ん? どこかで聞いた台詞だな?」
「あの時のお返しですよ」

ハルヒが鏡夜の左手を握ったまま、窓の外を見ると、
空はとても綺麗に、夕焼けの赤一色に染まっていた。

「先輩、帰る前に何かして欲しいことあります?」
「そうだな……そういえば、空調が若干寒いかな。
 少し窓を開けてくれないか?」
「あ、わかりました」

夏の残り香がまだ強く残る八月の終わり。
窓を開けた途端に、もっと熱気を感じるかと思いきや、
夕闇の迫る夏の風は意外に心地よく、
窓の隙間から吹き込んでくる空気が、
窓際に置かれた花を小さく揺らしていく。

「いい匂いだな。なんの花だ?」

その風に乗せられて、
花の香りがぱあっと室内に広がってゆく。

「向日葵と霞草と……あとは、この花は、ええっと確か、
 サンダーなんとかっていう花で、馨が選んだって言ってましたよ。
 黄色くてちっちゃいカワイイ感じの……」
「サンダーソニアか?」
「あ、それです。すっごく綺麗ですよ」
「馨が自分で選んだって?」
「ええ」
「それは、なかなか面白い趣向だな」
「ですよね。向日葵って学校の中庭とかに植えられてるイメージがあるので、
 それをお見舞いの花束に使うって珍しいですよね」
「……」

ハルヒの言葉に対して、
鏡夜は何故か、微かに笑みを浮かべている。

「……まあ……そういうことにしておくか……」


最後の言葉がぼんやりとした口調だったのは、
もう彼の意識が夢の中に入りかけていたからだろうか。
何時の間にか鏡夜は静かな寝息を立ててしまっている。

「……先輩、そろそろ帰りますね」

鏡夜がすっかり眠ってしまったことを確認すると、
ハルヒは鏡夜の左手を布団の中に戻してあげて、
音を立てないように慎重に窓を閉めた。

「また、明日来ます」

鏡夜の怪我の状態には、まだ不安なところもあったけれど、
せめて、今はゆっくり休んで良い夢を見て欲しいと、
そんなことを願いながら、ハルヒは静かに病室を後にした。

* * *

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