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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

Suriya'n-Fantasy-World

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春の光に風馨る -12-

春の光に風馨る -12- (馨&ハルヒ)

馨は、ハルヒに対する自分の気持ちに、本当の意味での決着をつけるため、
ハルヒが鏡夜を選んだ理由を教えてほしいと、彼女に言った……。


* * *

丁度同じ頃、同じような内容の話を光も鏡夜先輩から聞いていたらしい。
後になってこの時ハルヒと話した内容を光に喋ったら、
「そんなところまで同調しなくたって良かったのにね」と、
光は不満そうにぼやいていたっけ。

ともかく、この時のハルヒは、
環先輩がいなくなった後、鏡夜先輩と何があったのか、
ハニー先輩の家で初めて鏡夜先輩の気持ちを聞いたこととか、
その後、鏡夜先輩がずっと気にかけてくれていたこととか、
今年の六月に鏡夜先輩と二人で殿のお墓参りに行ったときのこととか、
一つ一つ順を追って、とても丁寧に僕に説明をしてくれた。

「鏡夜先輩は私に言ってくれたの。
 環先輩のことを忘れる必要はないって。
 忘れなくていいから、傍にいてくれって」

僕はこれを聞いたときに、
「ああ、この言葉は鏡夜先輩にしか言えない台詞だな」って思ったけど、
こういうことをハルヒに言った鏡夜先輩の気持ちは理解できるとも思った。

もしも、いなくなったのが、殿じゃなく光だったとしたら?

僕は確かにハルヒのことが好きだけど、光のこともとても大事だから、
光が大好きだった女の子に対して、
光のことを忘れてしまえ、なんて絶対に言えない。

鏡夜先輩の殿に対する立場は、
僕が光に対するものとよく似ているなって思った。

「鏡夜先輩は私を、環先輩の前まで連れて行ってくれて、
 私が環先輩の前で気持ちを整理するのを、ずっと見ていてくれて、
 その時に、やっと私は、変に自分を追い込む必要なんてないってことと、 
 私は環先輩のことがやっぱり好きで、
 その気持ちを大事に生きていけるってことが分かったの。
 だから、本当は鏡夜先輩の気持ちは断ろうと思ってたんだけど……」
「断れなかった?」
「……うん」

ハルヒは僕に話をしながら、
僕の持ってきた花束に手を伸ばしてその包みを解いた。
ふわりと優しい花の香りが立ち昇る。

「そういえば、向日葵の花束って珍しいね」
「そう? 普通だと思うけど。 
 鏡夜先輩ならもっと高い花束を持って来いとか言うかなって、
 考えちゃったくらいだよ」
「そうなんだ。それに、こっちのお花は初めて見るよ。
 なんか、面白い形だよね」
「面白いってね……僕が選んでわざわざ花束作ってきたのに、
 もうちょっと良い言い方はないわけ?」

夏の終わりのこの時期に、
僕が選んだ花束は、黄色の色彩で統一した向日葵とサンダーソニア。
間に散らしたのは白の霞草。
ハルヒはそれを束からほぐして僕に手渡してくれて、
僕は受け取った花を一本一本、花瓶に差し入れていった。

「ごめん、話が逸れたね」

ハルヒはそう断ってから、
その後に起きたことも、僕にちゃんと話してくれた。

「鏡夜先輩も私と同じように苦しんでたことは分かったし、
 だから、それから二ヶ月くらい鏡夜先輩と付き合ってたんだけど……
「付き合って、た?

僕がハルヒの言葉尻を繰り返したのは、
付き合っていた事実に驚いたわけじゃなくて、
過去形で締めくくったところが気になったからだ。

「うん。鏡夜先輩は私の気持ちを全部受け止めてくれて、
 環先輩のことを思い続けているような私でも、
 傍にいてくれれば嬉しいって言ってくれたから。
 だから、そのままの時間を続けても、
 それはそれで一つの答えだったのかもしれない。でもね」

最後に残った霞草を、ハルヒは僕にそっと差し出した。

「やっぱり、この二ヶ月、私達はお互いに遠慮があって、
 私は鏡夜先輩が無理をしていること気付いちゃったんだよね。
 で、それを鏡夜先輩に言ったら、そこから、気持ちがすれ違って、
 一度は別れるってことになった……んだけど……」

受け取った最後の一本を花瓶に差していた僕に、
ハルヒは昨日、事故の連絡を受けたときのことも続けて話してくれた。

「息ができなくなったの」

その時のことを思い出したのか、ハルヒは胸の辺りを押さえている。

「環先輩の時みたいに、また何も伝えられないまま、
 鏡夜先輩がいなくなってしまったらどうしようって考えたら、
  胸が苦しくなって、息ができなくなって……、
 急いで病院に来て先輩の手術を待ってる間、ずっと考えてたの。
 今、後悔しないように、私が一番したいことってなんだろうって」

ハルヒの話はかなり長いものだったし、
時には遠まわしな部分もあったけれど、
最後まで聞いたところで、僕はやっと全てを納得することができた。

この間、蘭花さんが僕に電話をかけてきたこととか。
今、ハルヒが鏡夜先輩に寄り添って手を握っている理由とか。

断片的だった全ての事情が、全部綺麗に繋がったから。

「それで、ハルヒは見つけたんだ」

ハルヒの表情は、もう何を言われても揺らぐことはないような、
そんな自信に満ちているように見える。

「ハルヒは殿のことを忘れたわけじゃなくて」
「うん」
「ハルヒは僕らのことも嫌いってわけじゃない」
「うん」
「でも、傍に居て、これから一緒に生きていこうって思うのは、
 その相手を選ぶなら……それが……鏡夜先輩だってことなんだね」
「……そうだね」

もう一度しっかり頷いてから、
ハルヒは僕に輝くばかりの笑顔を見せてくれた。


「だから、私は鏡夜先輩と一緒に行くよ」


長い話を締めくくった、そんなハルヒの宣言を聞いて、
僕の心の中に、一気に温かくて優しい感情が満ちて行って、
緊張から解放された僕は、思わず笑い出してしまった。


「ハルヒはなんだか、すっかり女の子だね」


さっきは「どこにも行かないよ」なんて言ってたくせに、
結局、行ってしまうんだね、君は。


僕らよりも先へ。僕ら以外の人と一緒に。


「何それ。どういう意味?」

むすっとした表情で口を尖らせるハルヒの前で、
僕はくすくす笑ったまま、ゆっくり一度、目を閉じた。


君が僕にくれた、大好きな君の、とても綺麗な笑顔を、
瞼の裏にしっかりと焼き付けておくために。



「いや、深い意味はないよ。別にいーんだ。分からなくて」

そして、再び目を開けた僕は、
ハルヒにウインクすると、ハルヒの頭をぽんと叩いてやった。

「ありがとう、ハルヒ。それに、ごめんね。
 色々変なこと言ったり、色んな事をいっぱい聞いちゃってさ。
 そろそろ病室に戻ろっか? 光のことも気になるし」
「そうだね。なんかすごく長い時間二人っきりにしちゃってるよね。
 光、また鏡夜先輩に変なこと言ってなければいいけど、大丈夫かな?」
「うーん……多分それは大丈夫だと思ってはいるんだけど、
 光はまだまだハルヒのことになると、
 大人の仮面が剥がれて子供に戻っちゃうからね。どうだろう?」

僕の決着はついたけど、あとは光の方が問題か。

「まあ、鏡夜先輩ならなんとかしてくれてる、かな?」

左手に花瓶を抱えるように持って、
ハルヒと並んで廊下を歩きながら僕はそう答えたけれど、
少し不安になってきてしまって、右手の指先でぽりぽりと頬を掻いた。

光と鏡夜先輩、喧嘩になってなきゃいいんだけど。

* * *

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