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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

Suriya'n-Fantasy-World

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共に在る理由 -5-

共に在る理由 -5- (鏡夜&ハルヒ)
 
思うように進まないハルヒとの関係。そんな悩みを、思わず姉に吐露してしまう鏡夜。
しかし、鏡夜を悩ませているのは、ハルヒの態度だけではなく……。

* * *

鏡夜の元に女性が押しかけてきた、という噂が社内に広まったのは当然で。
まあ、鏡夜もその辺については、仕方ないと腹を括って、
その「女性」の前に座っている。

ここはオフィスが入っているビルの向かいの喫茶店だ。

「で、どういうことか、説明してくれるかしら? 鏡夜君」
「説明といわれましても、蘭花さん」

注文したコーヒーが並べられても、二人とも手をつけようとせず、
鏡夜の手前の「女性」……そう、ハルヒの「父」であり、
妻を亡くしてからはニューハーフの道を驀進中の蘭花は、
メイクもばっちり、そして派手なスーツをきっちり着こなして、
怒りを顕わにして、鏡夜を睨んでいる。

「三か月位前……だったかしら? 鏡夜君からお電話もらったのは」
「ええ、確かそうですね」
「その時、鏡夜君、あなた、なんて私に言った?」
「さあ、なんと言いましたか……」
「とぼけないで!」

見た目は美人系の蘭花も、声はハスキートーンだし、
怒ると男性の地声が出るので目立つ。
店内の客が何事かと小さな声で囁きあっている、
その視線を感じながらも、鏡夜は冷静だった。

「ハルヒに告白した、と私に報告してくれたわよね? 鏡夜君」
「ええ、確か」
「その時、私は言ったはずよ。ハルヒを泣かせたら承知しないって」
「……ええ、覚えてます」
「じゃあ、なんでこんなことになってるのか、弁明してもらおうじゃないの」

蘭花が苛立ってテーブルを平手で叩くと、コーヒーカップがカタカタと揺れる。


「なんでハルヒと『別れる』なんてことになってるのかしら?
 私が納得いくように説明してくれるまでは、帰さないわよ。鏡夜君」



* * *

蘭花が鏡夜の会社にやってくる……なんてことは、
その時まではまったく前例の無いことで。

そう、社会人になってから三年目の鏡夜の周りには、
蘭花の来訪で噂が立つまでは、
色恋沙汰の浮いた噂は一つとしてなかったから、
それが、申し込まれる縁談話の増加に拍車をかけていたのは間違いない。

鏡夜が蘭花に詰め寄られた、その日の丁度、三週間前のこと。

『お見合いを断っているのは、
 鏡夜さんには、もう、大切な方がいらっしゃるからなのね』

いきなり来訪してきた姉、芙裕美がようやく帰ってくれて、
なんだか脱力してしまった鏡夜は、すぐには仕事に戻らずに、
姉に指摘された、机の上に積まれている大量の「厄介なもの」……、
お見合い写真を手に取った。

十数枚積み重ねられたそれを、
取りあえずチェックして、どう断るべきかを思案する。

仕事の忙しい時期にこれもかなりの手間ではあったが、
さすがに鳳に縁談を申し込んでくるほどの相手だから、粗末には扱えない。

それでも、兄二人がまだ結婚を決めてない頃は良かったのだ。

実力主義と公言して憚らない父ではあったものの、
やはり世間から見れば三男というポジションにはそれほど意味はないのだろう。
かといって、跡目を継がないと決定しているわけでもないので、
跡継ぎで無いことを肯定するかのような、
婿養子の話も押し付けられることはなかった。

だから、兄二人に比べれば、
鏡夜のところに持ち込まれる縁談の数はそれほど多くなく、
余計なことに気を回さなくて済むので、
周りが自分をどう評価していようと、それはそれで助かると、
鏡夜は割り切って考えていた。

ところが、いざ兄達が結婚を決めて、いよいよ残り一人ともなると
鳳家と繋がりを持ちたい他家の間で、
鏡夜の壮絶なる取り合いに発展しつつあるようで、
最近は特に縁談話が増えてきていたのだ。

鏡夜も今年誕生日がくれば二十五歳になる。

世間の標準的な結婚年齢でいえば、早いといえば早いとも思えたが、
もう学生でもないし、結婚適齢期ではないとは言い難い。

そして現在のところ、そういう関係に、
一番近い女性だと自分は思っている相手が、あの調子だ。

『鏡夜さんでも計算できないことってあるのねえ』

いや、確かにそれは自覚していることではあったが、
面と向かってずばりと言われると、素直には認めがたい部分もある。

しかも、鏡夜が愛しているハルヒは、彼以外の男を愛したままなのだ。
その彼女の全てを受け入れて、彼女にやっと傍にいてもらうことができたが、
でも、それは彼女を本当に手に入れたことではないのかもしれない。


ただ、一番近くにいる口実を手に入れただけ。


それはそれで満足には違いなかったが、
けれど、自分に遠慮を続ける彼女を傍に置いて、
ずっとこのまま、この関係を続けていって良いのだろうか?

繰り返される自問自答は、時間が経つにつれて徐々に大きくなっていく。

「鏡夜さんがその方に、本当の自分で向かい合ったら、
 そんな風に鏡夜さんが悩むことも無くなるのではないかしら」


本当に……そうあってくれれば良いんですが。


午前の業務と社内の会議を終えて、
取引先へと移動中の車の中、鏡夜は空を見上げた。
午後に入って俄かに雲が多くなってきている。

どうやら、天気予報は当たりそうだ。

* * *

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