忍者ブログ

『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

Suriya'n-Fantasy-World

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


共に在る理由 -33-

共に在る理由 -33- (ハルヒ&鏡夜)

手術室の前で、鏡夜の無事を祈りながらも、彼に対する気持ちに混乱するハルヒに、
蘭花は、今何をしたいか、ただそれだけ考えなさいと諭す。そして手術室の扉が開く……。


* * *

何時も眼鏡で素顔を隠しているから、
裸眼でいる鏡夜を見ると、見慣れないからか、妙に緊張する。

彼が眼鏡を取ってくれるのは、
自分にキスをする時と、自分の隣で眠る時。

キスされる時には、恥ずかしさから、
毎回、直ぐ目を閉じてしまって、
くすりと微かに笑う彼の声を聞くばかり。

彼の顔をゆっくり見ることができるのは、
自分の部屋に彼が泊まった翌朝、
ハルヒの隣で眠りこんでいる彼を見る時くらいだ。

鏡夜がハルヒよりも先に起きていることはまず無かったし、
凶悪に寝起きの悪い彼を、無理矢理起こすこともできなかったから、
なかば強制的に、ハルヒは彼の寝顔を見ることになってしまう。

そう、一緒に、隣で、寝ている……んだよね。

同じベッドで眠るという前科は既にあったものの、
あれは、ある種、突発的な事故のようなものだったから、
付き合い始めた最初の週末に、ハルヒの家に泊まるとなったとき、
キス以上のことはしないと宣言した鏡夜は、
あろうことか「床で寝る」と言い出した。

「駄目ですよ。先輩がベッド使ってください。
 毎日仕事で疲れてるんですから。自分が床に寝ます」

と言っても、客用の布団があるわけでもなく、
クッションを集めて床に敷いて、その上にタオルケットを掛けるだけの寝床だ。
さすがにその様子を見て、ベッドサイドに腰掛けた鏡夜は眉をひそめた。

「お前こそ、そんなところで寝る気か」
「布団がないんですよ」
「だから、お前がこっちを使えというのに」
「先輩は駄目です」

といった調子で、結局、譲り合いになった挙句、
最後にハルヒが強引に、鏡夜がベッドを使うように押し切ったのだが、

「電気、消しますね」

パチリと壁のスイッチを押して照明を落とし、
ベッドの傍に戻って、床のタオルケットを手にとった瞬間に、
部屋着の裾を背中のほうに引っ張られた。

「え?」


ハルヒの身体を、鏡夜が腕を絡めて引き寄せて、
そのままベッドの中に倒れ込む。

「早い話が、こうすれば解決じゃないか?」

ハルヒと額同士をくっつけて、にっこり笑う彼の顔を見て、
どきどきしてしまう自分が、少し悔しくなる。

美しい彼の黒い瞳。

「あ、あの、鏡夜先輩……」
これ以上は何もしない、と言っただろ?」

緊張するハルヒを落ち着かせるように、おでこに一度口づけると、
おやすみ、と囁いて、鏡夜は彼女を抱いたまま、ゆっくりその瞳を閉じた。

* * *

「私は今、鏡夜先輩の傍に居たい」

三時間にも及ぶ、長い手術が終わって、
ようやく、手術室前の扉が開いた。

「鏡夜先輩!!」

開けられた扉の奥に見えたのは、
ストレッチャーの上に横たわる鏡夜の姿と、
それを押す青い手術着の看護師が二名。

「鏡夜さん!」

芙裕美も病棟からこちらに戻ってきていて、
扉の外へ押し出されるストレッチャーに近寄ろうとする。

「すぐに個室へ搬送しますから、付き添いの方は、そちらにお越しください」

待ち構えていた白い制服の看護師二人が、
ストレッチャーを引き継いでエレベーター前へ押しながら、
その内の一人がそっけなく答える。

看護師の言葉には、まったく飾り気が無かったけれど、
その言葉は重要なことを意味していた。

すなわち。


彼が、生きているということ。


布団から出ている首筋や、頭には、
白い包帯やネットが巻かれて痛々しい。

さらに、額から眼球の上にかけては、
包帯に巻かれて顔が半分以上隠れてしまっていたから、
彼の表情はよく見えなかったけれど。

「よかっ……た……」

ハルヒは一気に力が抜けてその場に座りこんでしまった。

手術室を出てきた担当医師の話によれば、
全身の打撲や裂傷のほかに、
腹部への衝撃で内臓も一部損傷していたということで、
それが、手術の長引いた原因らしい。

細かい傷や処置の話は、専門用語が多くて、
ハルヒにはよくわからなかったけれど、
手術が成功した、ということだけは分かった。

「鏡夜君、助かって良かったね、ハルヒ」
「うん……」

座り込んだハルヒを支え起こす蘭花も、
ハルヒと同じように安堵の表情を浮かべていたが、
しかし、その中で芙裕美だけは、
神妙な面持ちで、黙りこくったまま医師の話を聞いていた。

全く返事をしない芙裕美の様子が気になって、
ハルヒが表情を伺うと、その顔に笑顔がない。

「先生」

芙裕美は凍った表情のまま問いかけた。


「弟の容態のこと。はっきり仰ってください」


医師は芙裕美の質問に即答をためらっている。

「まだ、鏡夜先輩は危険な状況なんですか?」

ハルヒもそう医師に問い詰めたが、
その不安については、医師ははっきりと否定してくれた。
もちろん、術後の経過はまだ予断を許さない部分はあるらしいが、
比較的容態は安定しており、
右足の骨折が完治すれば、また普通に歩くことも可能だという。

「……ですが」

安心できる言葉を並べたあとに、
担当医は、不意に逆説の言葉を付け加えた。

「ですが、それとは別に後遺症が残る可能性があります」
「後遺症?」

医師は淡々と事実を告げる。

「眼鏡の破片で角膜が損傷しているのと、
 頭部へかなり大きな衝撃があったことが推察されますので、
 視神経に異常が生じる可能性が考えられます」
「角膜……視神経……?」

専門的な身体部位の用語とはいえ、
さすがにこの辺りの単語はハルヒにも聞いたことがある。

「もちろん100%確実なことではありませんし、
 あくまで可能性が高いということですが」

医師の説明に、その場に再び蘇る不気味な緊張感。

「つまり視力低下か……」

ぞわぞわと、身体を這い上がる寒気に、
ハルヒの身体は、ぶるりと震える。



「最悪の場合には、失明の恐れがあるということです」



* * *

PR
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

プロフィール

HN:
Suriya
性別:
女性

バーコード

<<共に在る理由 -34-  | HOME |  共に在る理由 -32->>
Copyright ©  -- Suriya'n-Fantasy-World --  All Rights Reserved
Designed by CriCri / Top-Photo by Suriya / Background-Photo by 壁紙職人 / Powered by [PR]
/ 忍者ブログ