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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

Suriya'n-Fantasy-World

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共に在る理由 -2-

共に在る理由 -2- (ハルヒ&鏡夜)
 
早朝、仕事前の僅かな時間は、忙しい二人にとっての唯一共有できる大切な時間。
鏡夜はハルヒを想い、今日も彼女に電話をかける……。


* * *
 
仕事中に不謹慎だとは思うし、
今までこんなことは一度だって無かったのに。

ここのところ、一週間あまり、
ハルヒは仕事中にも関わらず、どこか集中できず、
机の上の携帯電話に何度も視線を送ってしまう日々が続いていた。
 
メールが入ってきたことを知らせるランプが点くと、
すかさずチェックをするものの、
それは研修所の同期生からだったり、
時には光や馨からだったりして、
肝心の待ち人からの連絡が一向に来ないのだ。

一週間ほど前になるだろうか。

ハルヒのマンションに現れた鏡夜の、去り際の様子は、どこか変で、
仕事が残っているから、と素っ気無く帰っていったその翌日から、
ぱったりと、電話もメールも来なくなってしまった。

気になるなら、自分からかけてみればいいのだが、
鏡夜に『傍にいてくれ』と告白されて、それを受け入れてから二ヶ月。
ハルヒはその間、自分から鏡夜に電話をかけたことが殆ど無いという事に、
こういう状況に追い込まれて初めて気がついた。

ハルヒから電話をかける場合は何時でも、
鏡夜からの着信が残っていたり、メールが送られてきた時、
その返事という建前があったからで、
二人の電話のきっかけは、大抵いつも鏡夜から。

いつのまにか、それが当たり前になってしまっていたのだ。

だから、鏡夜から全く連絡がこなくなるという事態になって、
ハルヒは自分から電話をかけていいのか、
タイミングが全くつかめずにいて、
そのまま一週間ほど無為に経ってしまっている、という状態だ。


そう、一週間前までの鏡夜は普通だったのに……。


* * *

一週間前、午前八時。

「鏡夜先輩、おはようございます」

鏡夜は毎朝、決まった時間に電話をかけてくるから、
ハルヒももう慣れっこになっていて、着信と同時にすぐに電話に出た。

彼女のいるのは、すでに自宅ではなく、
所属している弁護士事務所の中だ。

ハルヒは毎日、八時前には事務所に着くようにしていて、
前日残してしまった仕事などを、
職場の先輩が着く前に、処理するのが日課になっていた。

ハルヒも鏡夜も、毎日とても忙しく、
平日の夜は、お互い仕事が終わるのが何時になるかが全くわからなかったから、
いつからか、鏡夜は朝の勤務開始前に、電話をくれるようになっていた。

他のどの時間にかけても、お互いすれ違うことが多い中、
朝、このひと時だけは、しばらく二人で会話をすることができる。

『今日も遅くなりそうなのか?』
「ええ、自分の受け持っている事件の、
 期日に向けての準備が色々ありまして。
 鏡夜先輩こそ、昨日のメール、午前二時に送信になってますけど、
 ちゃんと寝てるんですか?」
『まあ、今は新しいリゾート施設のオープン前で立て込んでいるからな。
 三時間は寝てるから、問題はない』
「よく、毎日起きれてますよね……鏡夜先輩が……」

寝起きの鏡夜の恐ろしさは、身に沁みていたので、
ハルヒは思わず突っ込んでしまう。

『どういう意味だ?』
「い、いえ別に」

鏡夜先輩は、どれだけ寝起きが悪いか、
もしかして、全く自覚がないのだろうか……。

『ところで、お前、今日は天気が崩れるらしいから、早く帰れよ』

電話の向こうの声が、少し優しくなったように聞こえる。

「そうなんですか? まあ、なるべく早く帰りたいですけどね。
 昨日も、結局終電に間に合わなくて、タクシーになってしまいました」
『だから、電車やタクシーを使うくらいだったら、
 連絡をくれれば迎えにいくと、いつも言っているだろう?』

嘆息混じりのその声に、
ハルヒは目の前に鏡夜がいるわけでもないのに、
首をぶんぶんと横に振った。

「そんなに甘えるわけにはいきませんよ。
 大体、ほぼ毎日終電なんですから、
 毎回そんなことしてもらうわけにはいかないでしょう?」
『別にお前のためなら、毎日だって構わないぞ』

……。

どうしてこの人は、こういう恥ずかしい台詞を、
そんなにあっさりとした口調で言えるのか。

ハルヒは一気に熱くなった頬を、咄嗟に左手で押さえていた。

「そ、そんなこと言っても、先輩だって忙しいのに、
 自分のためにわざわざ時間を作ってもらうのは悪いです」

と、ハルヒは遠慮をして言ってみたものの、
鏡夜の気持ちを全く理解せず、
こんなことを言っているわけではない。

自分が彼を想う以上に、何倍も強く激しく、
自分のことを大切にしてくれている鏡夜が、
優しくしてくれる、その気持ちは十分ハルヒにも伝わっている。

ただ、心がちくりと痛むのだ、鏡夜が自分に優しくする度に。

今も、そして、おそらくは今後もずっと、
鏡夜のことだけを考えることは出来ない、自分。

鏡夜は、確かに、それでもいいと、言ってくれた。
忘れる必要はないと言ってくれた。
傍にいるだけでいいとも言ってくれた。

けれど、これで本当にいいのだろうか?

このまま、彼の優しさを一方的に受け入れることに、
ハルヒの心は未だにどこか納得できないままだった。

鏡夜先輩は、今は、こんなに優しくしてくれるけど……。


……いつか、後悔するんじゃないですか?
環先輩を想い続ける、こんな自分を選んだことを。


『お前はどうして……』
「え? 何です?」

鏡夜が何か言ったようだったが、
ハルヒは別のことを考えていて、それを聞き逃してしまっていた。

『……まあいい。今日は夜に会食があってそっちに行けそうにないが、
 とにかく、あまり無理はするなよ』
「はい、ありがとうございます」

電話を切ったハルヒは、事務所の窓から空を見上げた。

青空に白い雲がふわりふわりと浮いていて、
綺麗に晴れ渡った爽快な夏の空には、
鏡夜が言うような嵐の予感などまるで感じられない。


果たして、天気予報は当たるのだろうか?


* * *

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