DK二次創作小説
シャロンといっしょ ~シャロンルート22日:その5~
『デザートキングダム』シャロンルート22日目のシャロン視点短編の第五話です。
中途半端なところで終わりますが(苦笑)、今回が最終話です。続きはゲーム本編で!!
※小説の文章は管理人のオリジナルですが、登場人物の台詞には、
※ゲームの文言をそのまま『引用』している部分があります。
* * *
今すぐに彼女に会って、彼女の声が聞きたいと、
そこまで考えたところで、私の体は自然と動いていた。
政務室を出て、パレスの中を姫の部屋に向かう。
等間隔に置かれた松明が、他に歩く者のない廊下をぼんやり照らし出している。
「姫、夜遅くにすまない。私だ。話がある」
姫の寝所に赴いて、扉の前でそう声をかけてみたのだが、
午前中のあの一件を、まだ怒っているのだろうか、
ノックをしてみたが、中から返事は無い。
何度か呼びかけて反応が無いので、
扉に手をかけてみると、鍵はかかっていなかった。
「……姫?」
指に力をいれると、扉は音もなく開いて、
開いた隙間から部屋の中を覗き込むと、
中は真っ暗で、明かり一つ灯されていない。
すでに日はとっぷり暮れているが、まだ、それほど遅い時分ではない。
もう寝てしまっているのだろうか?
そう思って部屋に立ち入りベッドに近付いてみると、そこには誰の姿もない。
「姫? どこにいる? 姫!?」
部屋の中を見渡すも、どこにも姫の姿は無く、
慌ててパレスの夜間警備をしていたロイヤルガードを呼び、
パレス中を探させたところ、
門番から、昼間に外に飛び出していったきり、
未だ姫はパレスに戻っていないとの報告を受けた。
「昼からこんな時間まで戻っていないとは、何事か……!?」
「ご、ご報告が遅れまして、も、申し訳ございません」
心配のあまり、私がいつになく声を荒げると、
門番達が必死に頭を下げた。
「いや……君達が悪いわけじゃない。
すまないが、姫を探しに行ってくるのでパレスを空ける。
その間、パレス内の警備は頼んだぞ。
もし、入れ違いに姫が御戻りになったら、
私のことは特に知らせず、寝所にてお休みいただくように」
「宰相閣下。私も御供いたします!」
姫の捜索を頼んでいたロイヤルガードの一人、
……そう言えば、私の傷を慮って果実酒を持参したのも確か彼だったと記憶している……が、
私にそう申し出てきたが、私は首を振った。
「いや。これは政務ではないから、
君達が私の伴に付いてくる必要は無い。
警備中、突然、捜索業務を頼んですまなかった」
「し、しかし! 閣下!」
「不要と言っているのが分からんのか?
いいから、君たちは本来の職務に戻りたまえ」
心配そうなロイヤルガードを押し切って、
私は一人、パレスから城下へと走り出した。
彼女は遠い異国から、この国へやってきた姫君。
その身分に嘘は無い。私は彼女の言葉を信用している。
しかし、『姫』とは言いつつも、彼女の周囲で、
付き人らしき人物を見かけたことが一度もない。
つまり、理由はどうあれ、
彼女は一人なのだ。キングダムにきてからずっと。
父は魔神だが、母は人であるが故に、
半分は人間であり、そのために魔力を失ったという彼女。
神の力を失って国から追放でもされたのか?
……という問いについては、
即刻、きつい物言いで否定されたが、
もしかすると、彼女の言うところの『真の魔神』になるためには、
人々の願い事に対して、『一人』で相対しなければならない、
それが、彼女に与えられた試練ということなのかもしれない。
思えば、私もずっと一人だった。
孤独という味が、どれだけ切ないものか、
ずっと分からないままだったけれど、
それはただ単に感覚が麻痺していただけ。
君が私の前に現れたから、私は一人の寂しさを知った。
誰かに傍に居てほしいという感情を知った。
傍にいてくれる人によって得られる喜びを知った。
君は確かに神の国の姫かもしれない。
私なんて不釣り合いの、いと高き存在かもしれない。
だが、神であるはずの君が、
いつかは神の国へ帰ってしまうはずの君が、
今はまだこの国の中に居て、
一人でこの冷たい夜を過ごしているというのなら、
私の手が届く場所にいるというのなら、
絶対に私が君を見つけ出し、私が君を守る。
それが、『今の私』の『存在意義』だ!
この時の私は、傷の痛みも、胸の痛みも、
すっかり忘れてしまっていた。
ただ、一刻も早く姫を探さねばならない、姫を守らねばならないと、
それだけを考えて足を動かしていた。
手始めに向かったのは王国の入り口。
その門番に、姫が外に出て行ったか尋ねると、それは無いとの回答。
ならば、姫はまだ国内にいることになる。
ろくに知り合いもいない、伴も居ない、
そんな姫が向かうとすれば、どこへ?
そういえば、来たばかりのころ、
宿が無かったらしい彼女は、
あろうことか「路上で寝ている」などと言っていた。
異国の姫にストリートチルドレンの真似はさせられないと、
慌ててパレスへ招き入れたのだが、
このキングダムで、仮に路上で寝泊まりできる場所があるとすれば、
商業施設が連なるスークしかあり得ない。
すっかり夜も更けて、
店じまいの分厚い布で覆われた店舗が並ぶ夜のスークを、
歩き回ること十数分。
「……シャロンの馬鹿……」
夜風に乗って聞きなれた声が、この耳に届く。
「……馬鹿、分からず屋、ほんっとーに馬鹿!」
無事だった……!
見慣れた紫の、花の形のリボンが、
彼女が何事か呟く度に微かに揺れている。
路地の片隅にうずくまる彼女の姿を見つけたとたん、
一気に気が抜けてしまって、
代わりに思い出される腕の傷の痛みと、
無理をして歩き回った疲労感に、
その場に倒れそうになるのを必死に踏みとどまった私は、
彼女の細い背中に、足音立てずそっと歩みよると……こう、声をかけた。
「昼から散々、馬鹿馬鹿と、そこまで言われる筋合いはないと思うんだがな……」
了(→ゲーム本編の22日シナリオへ続く)
* * *
シャロンといっしょ、22日シナリオ編はこんなところで終了です。
「モノローグ長!!!」とか、「え、ここで終わり?」いう感想は置いといてください(苦笑)
基本的に乙女ゲームだと、操作キャラ=姫(アスパシア)視点の部分が多いので、
ゲーム本編では、終始アスパシア視点だったイベントを、
男性キャラ視点で見たらどうなるのかなーと思い、今回書いてみました。
パレスを飛びだした姫を、
必死に探すシャロンの心理を書きたかったんで、
姫が見つかったあとの部分は、まあ書かなくてもいいかなと。
今回、「シャロンの気持ちってどんなかな~」と、
色々考えてみたところ、
姫に「本当の願いは何?」って聞かれた時のシャロンは、
「二重の意味」でショックだったんじゃないかと思ったんですよ。
一つは当然、王家の復興以外の本当の願いがあるって、
姫に断言されちゃったことですが、
もう一つは、姫が「自分の願いを叶えるために自分の周りにいたんだ」ってことに、
シャロンが気付いちゃったことです。
シャロンは姫の目的を全部知ってるわけなんで、
自分の願いを聞く→叶える→魔力ゲットで神の国へ帰るという図式が、
一気にぱーっと頭の中に浮かんで、
「あー、なんか傍にいて楽しいとか、一緒にいたいなって思ってたの自分ばっかり?」
と、結構なショックを受けるわけです。無自覚に(笑)。
もちろん、その頃の姫は姫で、色々葛藤してるわけですが、
そういう姫の心理をシャロンは知らないですからね。
もちろん、体面を人一倍気にするシャロンですから、
気付いた瞬間は姫から手をひこうとするわけですよ、綺麗に。
なんたって、神になって国に戻ることがアスパシアの一番の幸せだろうし、
自分が止める権利なんてないって。
でも、実際、姫が目の前からいなくなって、
きっと、シャロンは大慌てしちゃたんだろうなーと。
で、とりあえず、いつかいなくなるとか、そういうのは問題じゃなくて、
今ここに彼女がいてくれる以上は、自分が守れるだろう、つーか守ってあげなきゃ!!
……って、なっていくかなあと考えたわけです。
国のためだけに生きてきた人が、
初めて自分のために、自分の愛する人のために行動した瞬間ということで、
結構、熱くて良いシーンだったなと思いました。
さてさて、次はどんなシーンをもとに創作しようかなー。
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