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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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シャロンといっしょ ~シャロンルート22日:その4~

DK二次創作小説
シャロンといっしょ ~シャロンルート22日:その4~
 
『デザートキングダム』シャロンルート22日目のシャロン視点短編の第四話です。
某ドラ●ン●ール並みの展開の遅さです(苦笑)。

※小説の文章は管理人のオリジナルですが、登場人物の台詞には、
※ゲームの文言をそのまま『引用』している部分があります。

* * *

夜の闇に覆われた政務室で、負傷した腕に手を当てながら、
昼間にこの場所で起きた出来事を思い出し、
私は思わず独り言を呟いていた。
 
「私の願いが嘘だと……何を馬鹿なことを」
 
ずっと、そのためだけに生きてきたのに?
私には他の生き方、他の願いなど持つ余裕など微塵も無かったのに?
 
王国を支える地下水源の恩恵で、
気温の変動は砂漠に比べて少ないとはいえ、
政務室の窓から中へ吹き込んでくる夜風は肌寒い。
 
眠る前のひと時は、部屋の明かりを落として、
こうして独りでじっと、星を眺めて心を落ちつけるのが常だったが、
今日は星を眺めていても、
心を静めるどころか、昼間の彼女の態度がいやがうえにも思い出されて、
私は自然と、自分の心の奥に、
王家復興とは別の想い、
彼女が言うところの「本当の願い」とやらがないか、
なんとか探し出そうと、思考を巡らせてしまっていた。
 
別の想い? 私にそんなものが本当にあるのだろうか?
 
私はずっと王家の復興のためだけに働いてきたのではないか。
ならば、私の願いはたった一つ。
キングダムの民の幸せ、そのための王家の復興。
ただ、それだけが私の歩いてきた道で、これからも進むべき道。
 
十数年粛々と積み重ねてきた時間は、
もうすぐ迎える、王家復興の宣言、その日のためのもの。
今更、何も迷うことは無いはずだ。
 
答えはとっくに出ているはずなのに、
与えられた問題に対し、折角、書きあげた解答を、
やはり何かが違うとくしゃくしゃに丸めて、
再び最初からやり直す作業をひたすら繰り返す。
 
書いては消し。書いては消し。
一向に満足のいく答えに辿りつけない。
 
書き始めるときには、
答えはこれしかないと思っているというのに、
昼間、彼女に指摘されたことを思い出す度に、気持ちが揺らぐ。
 
彼女の言葉に悪意はないのは分かっている。
彼女は真摯に、私のことを考えた上であの結論を出し、
それを私にぶつけてきただけだろう。
 
それでも。
 
彼女の言葉、私の願いを否定する言葉、
すなわち、私の『存在意義』を否定するような言葉は、
私の胸を深々と突き刺していったのだ。
 
彼女がキングダムへやってきたのは二十日ほど前。
最初は、一般常識の枠には収まらない、
なかなか変わった姫だと思っただけだった。
 
それが、いつのまにか、
彼女が政務室にくるのを待っているのが当たり前になっていた。

彼女が私の前で驚き、笑い、怒り、
時には拗ねたりするさまを見ているのが、
言葉は少し悪いかもしれないが、とても楽しかった。

生まれてきて初めて、この冷めた心の真ん中に、
ぽっかりと温かい火が灯ったようにも感じた。
 
けれど、彼女は異国……『神の国』から来た姫君。
いずれは、国に帰ってしまう時がやってくるだろう。
 
将軍に刺し貫かれたのは、この腕のはずなのに、
彼女のことを想うと、胸の中心がひどく疼く。

私は、ずっと一人だった。
これから先もずっと一人でいるのだろう。
今までに、心を許せるようなそういう相手が欲しいとは別に思わなかったし、
これから先も政務を執り続けるのならば、全く必要ないはずだ。
特別な存在を作れば、そこに無私も公平もなくなるのだから。
 
なのに、なぜだろう?
 
この孤独にすっかり慣れきった心が、、
誰もいない政務室に、いつもと同じように一人きりでいることが、
今日は夜の砂漠に突然放り出されたかのように、
とても冷たいものに感じるのだ。
 
昼間の熱気が冷めて、涼しいオアシスの風が、
そよと髪を揺らす度に、苦い思いに心がいっぱいになって、
ふと、私は今まで考えもしなかったことを思いついてしまった。

まさか……この私が……今まで誰も必要としてこなかった私が、


『今』、彼女を必要としているというのか? 

 
馬鹿な! そんなことあるわけがない。
仮に百歩譲って、
それが彼女の言うところの、『本当の私の望み』であるとしても、
それは決して、叶えてはいけないものだ。
 
私はキングダム、人の国の単なる公僕。
しかし、彼女は一国の……しかも神の国の姫君だ。
彼女に傍に居てほしいなどと、
そんな言葉を伝えて良い役どころではないことは十分理解している。
 
もしも、彼女が普通の娘だったなら、
このキングダムに生まれ出でた普通の娘だったなら、
その前に膝を屈してでも、
その手を捉えて、この胸に抱き寄せても、
私は自分の傍にいてくれと願っただろうか?
 
いや、そんな仮定の話をしてもせんないこと。
神である彼女に、傍にいて欲しいなど、
そんなことを言い出す権利は、人の身である私にはないのだ。
 
そんな資格はないというのに……。
 
ああ……今まで、数多くの人々と触れ合ってきたが、
こんな思いを抱くのは初めてだ。
 
彼女に出会って、やっと、人に必要とされること、
人を必要とすることがということが、
どれほどつらく苦しいことかわかったのだ。

本当に人を大切に思い必要とする、
このような気持ちを何も知らずに、
腹を割って話す相手など不要だと、言いきっていた自分が恥ずかしい。
 

本当はこんなにも、私は誰かのぬくもりを欲しているというのに。

 
彼女に会いたい。

会って、彼女の言葉を聞きたい。
 
 
彼女だけが紡ぐ、『神の言葉』……私にとって唯一の『真実の言葉』を。
 

* * *

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