DK二次創作小説
シャロンといっしょ ~シャロンルート22日シナリオ編:その1~
『デザートキングダム』シャロンルート22日目の、姫がシャロンに怒って、
パレスを飛び出してしまったイベントを題材に、シャロン視点で真面目に短編を書いてみました。
※小説の文章は管理人のオリジナルですが、登場人物の台詞には、
※ゲームの文言をそのまま『引用』している部分があります。
* * *
場面はシャロンルート22日。
午前中の政務時に、姫がシャロンと喧嘩をしてパレスを飛びだした日の夕刻。
パレス内のシャロン政務室にて。
* * *
王家不在の間、この『キングダム』を支えるため、
父から受け継いだ宰相の職責を、ただひたすらに全うし続けて数年。
一昨日の夜、私が主催した舞踏会の折、
私の言葉に煽られて興奮した将軍が、
衆目の監視の中、私に剣を向けたことで、
計画通り、堂々と将軍を投獄することが出来た。
一見平和なこの国に蔓延っている、
将軍を筆頭とする、国を食い物にしようとする下衆な輩達を、
一掃できる日が、ようやくすぐそこまで近づきつつある。
将軍から受けた右腕の刀傷は、
致命傷とまではいかないが、かなり深いもので、
手当は施してあるものの、なかなか傷がふさがらず、痛みも引かない。
傷を負った翌日こそ安静にしていたものの、
私が健在であることをアピールするために、
今日から政務に復帰していたが、
一日経っても傷の状態があまり思わしくないこともあって、
いつもなら深夜遅くまで政務に没頭するところだが、
今日は早めに、午後の政務を切り上げることにした。
あんな大騒動を起こした後だ。
王家の復興、キングダムの政治腐敗の浄化、
全てにおいて今が一番大事な時期なのだから、
当分の間はパレスに留まり続ける必要がある。
夜が明ければ、将軍以上に一筋縄ではいかない連中との『化かし合い』が始まる。
将軍はこのまま排除できるとしても、
モスキーノ教団の台頭にしろ、財界の暗躍にしろ、
この国の内政の正常化のため、やらなければならないことは山積している。
今は少しでも身体を休ませ、体力を回復させなければ……。
日が傾いて紅色に染まった空を、
藍色の闇が密やかに塗りつぶし始める頃、
政務を打ち切って、独り、政務室の隣室に設えた、
仮眠用の長椅子の上に横になってみたが、
鋭い切っ先で、皮膚を切り裂き内部の肉まで抉られた傷の、
じくじくとした痛みは時と共に酷くなるばかりで、
なかなか眠りにつくことができない。
午後の政務を終える時、
私の傷の状態を心配したロイヤルガードの一人が、
睡眠時に痛みを和らげるためにと、
果実酒を持ってきてくれたのだが、
一滴も口にすることなく、政務室のテーブルの上に放置している。
持参した際の挙動からして、
彼自身が毒などを入れていないことは分かったが、
知らない間に第三者に毒を仕込まれているかもしれない。
パレスの食堂で、自分の目の前で調理され、
他の者達にも同じ鍋から振舞われる料理ならともかく、
今、このような大事な時期に、
私の元へ個別に運ばれてくる物など、とても危なくて口にできない。
昼間は出入り自由で何かと騒がしいパレスも、
夜ともなればひっそりとして、
耳を澄ませば砂漠の夜を吹き抜ける、涼やかな風の音がするばかり。
一向に治まらない腕の傷の痛みに、
眠ることを諦めて政務室に戻った私は、
包帯を巻いた右手を左手でそっと押さえつつ、
いつものようにぼんやりと、
窓際に椅子を寄せて、窓から夜空を彩る星々を眺めることにした。
思えば、とても長い時間だった。
私が父から宰相職を引き継いだのは、
まだほんの数年前のことだが、
十数年前、国王陛下が行方不明になられて以来、
父と、そして父が身体を壊して以降は私が後を継ぎ、
主なき国を支え、一つ一つ積み上げてきたこと。
それが、今、ようやっと完成しようとしている。
昨日、ヴィからの報告で、密かに内偵を進めていた相手が、
オルタナ王子ご本人であることの確認がとれた。
後は、城下で身をやつしていらっしゃる王子を正式にパレスに迎え、
国中に王家の復興を宣言すれば、私の念願が叶う。
そうだ。やっと叶うのだ。
私の願い……私と父の長年の悲願が。
そのことに何一つ、偽りなどあろうはずもないのに。
「嘘だっ!!」
今日の午前中、私の政務室にやってきた『彼女』は、
私のその願いを聞くや否や、それは『嘘だ』と、怒りを込めて言い放った。
「アンタの本当の願いは、王家の復活なんかじゃない
それは偽物の願いよ。アンタは本当は、別のことを願っている……」
思えば、昨日、私の見舞いに来てくれた時から、
彼女は私に……私の取った行動に、いたく腹を立てているようだった。
私が、自分の身の危険を顧みず、将軍を追い落とすために、
舞踏会であのような騒動を、故意に引き起こしたことについて、
本当に刺されるつもりはなかった、万全の準備はしていたのだと、
状況は一応説明してみたものの、彼女は終始、納得していない様子だった。
だが、いくら私の行動に不満があったからといって、
彼女が私をただ困らせるために、
私の長年抱いてきた願いを、『嘘』だとか『偽り』だとか言い出すわけはない。
私には嘘は通じない。
私に取り入ろうと、小手先の嘘をつく人間の態度はすぐに見抜けるし、
嘘をつくまでいかなくとも、何か隠していることがあるのであれば、
その違和感を私が見逃すはずはない。
今日の午前中、この政務室で、
私を見つめていた彼女の目は真剣そのもので、
彼女が嘘などついていないことはすぐに分かった。
本気で、心の底から、そう信じて、
私に向かってあのようなことを言ったのだ。
宰相の家に生まれ、教育を受け、父の後を継いで政務を取ってきた。
この十数年、ずっとずっと、王家の復興のためだけに生きてきた私の道。
それが全て『偽り』なのだと。
そして、続けて彼女はこうも言った。
「願望はある。絶対に、ものすごく強い願いはあるけど、
それは『王家の復活』なんかじゃない
アンタの本心は王家とか国とかそんなところを見ていない!
もっと別の、全然違う強い願いがある……!」
彼女の指摘には、流石に私も絶句した。
「……」
物心ついてから今まで、
私は、国のため、民のためだけに、
自分の存在意義を見出してきたというのに。
私が国のことを見ていない……別の願いがある……だと?
* * *
続
見切り発車しちゃった……いけるかな……(汗汗)。PR