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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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シャロンといっしょ ~シャロンルート22日:その2~

DK二次創作小説
シャロンといっしょ ~シャロンルート22日:その2~
 
『デザートキングダム』シャロンルート22日目のシャロン視点短編の続きです。
真面目モード、フルスロットル、リミッターカットでがんばります!!!

※小説の文章は管理人のオリジナルですが、登場人物の台詞には、
※ゲームの文言をそのまま『引用』している部分があります。

* * *

「願望はある。絶対に、ものすごく強い願いはあるけど、
 それは『王家の復活』なんかじゃない
 アンタの本心は王家とか国とかそんなところを見ていない!
 もっと別の、全然違う強い願いがある……!


この私が、国のことを見ていない……別の願いがある……だと?

 
姫の指摘に、私は少なからず動揺すると同時に、
微かな苛立ちも覚えていた。
 
私がこの日のために、王家の復興のために、
どれだけの時間と、どれだけの力を注いできたか。
 
国王暗殺の汚名を着せられ、
国民の冷たい視線の中で、
全ての責めを一身に受けつつも、
風聞に流されることなく、
少しでも気を抜けば、国を乗っ取ろうとする者達と渡り合い、
たった独り、国政を執り続けた。
 
 
いつか、この国を『本当の主』に返す。そのためだけに。
 

なのに、この十数年の父と私の苦労を何も知らない、
半月ほど前、突然目の前に現れた異国の住人である君が、
よりにもよって、その願いが叶わんとしている今になって、
どうして、そのようなことを、そこまで確信を持って言い切れるのか!!
 
心の奥に沸き立つ苛立ちにまかせ、
彼女に言い返そうかとも思った。
……が、私はすんでのところで、その言葉を飲み込んだ。

彼女の真っすぐな深紅の瞳が、
何もかも見透かしているかのような強い眼差しが、
私に反論を許さなかったからだ。

いつだったか、私の政務室にやってきた彼女が、
私の質問に応じて、自分の身の上を話してくれたことがあった。

彼女は自分のことを、ここより遥か人知を超えた彼方にある、
神の住まう国EVUU(エヴー)から来た姫だと言った。

そして、魔神王国の姫でありながら、
魔力を失い、神ではなくなったために、
……追放という形ではないようだが……、
理由あって、このキングダムに滞在しているのだと。

彼女は自分の存在意義にも関わる話を、
何ら隠すこともなく、私に正直に答えてくれた。

キングダムに伝わる伝承によれば、
魔神とは人々の『願い』を叶える存在。

元来キングダムでは、
魔神アスラを崇めるアスラ教こそが唯一の国教であり、
人々は神の存在を信じ、日々を誠実に暮らしていた。

アスラ神は『魔』という文字で形容されていはいるが、
それは決して『悪』という意味ではない。

アスラとは『ASU=RA』。
ASUは生命、創造を意味し、RAはそれを与え、生み出す力。

すなわち、アスラとは人々の生命力であり創造力の源。
人知を超越した力を持つ存在に対して、
畏怖と敬意を込めて、人々が『魔神』と呼んでいただけだ。

しかし、現在のキングダムでは、
神の力に頼るのではなく、金の力で願いを叶えると言う、
俗物的な新興宗教団体『モスキーノ教団』の台頭によって、
神の存在は否定され、貶められ、人々の心も次第に堕落しつつある。

モスキーノ曰く、アスラとは『A=SURA』。
Aは否定する意、SURAは天や生命を示す言葉。

すなわち、アスラとは生を否定し、天に非ざる『モノ』。
神など元々存在しなかった。
だから、かつてアスラの神殿を建て、
『神』などとして祀っていた聖なる島が、
人々の願い虚しく、海の底へと沈んでしまったのだと。

人の願いを叶えるのは人の力のみ。

その教義自体が悪いとは思わない。
私自身も、自分の願いについては、神の加護を願うことはあっても、
人の力で成し遂げるべきと考えている。
 
モスキーノ教団も、当初は、
過度に神に頼るのではなく、人が自ら立ち上がるべきだと言う、
一つの信念に基づいて活動をしており、
取り立てて問題になるような宗教団体ではなかったのだ。

だが、私も当時幼かったから、うろ覚えでしかないが、
十数年前に、信徒から慕われていた『聖女マリー』がいなくなってから、
モスキーノ教団の教義が暴走し始めた。

自らの力で願いを叶えよう、という教義が、
教団に寄付をすることで、教団がその者の代理となって、
強制的に願いを叶えてくれる……、
すなわち、金次第でいくらでも願いを叶えてもらえるのだ、と。

そうして、教団は単なる金もうけの道具に堕落していった。

父が激務によって身体を壊し、
私に宰相職を譲らざるをえなかったのも、
王家の暗殺事件に加え、日増しに勢力を強める、
モスキーノ教団とその信徒への対応に追われたことも大きい。

だから、彼女がEVUUから来た、ということ、
そしてその国が神の国であるということを知って以来、
私はずっと一つの疑念を抱いていた。

彼女は私に『自分はかつて神であった存在』だと説明した。

その神であった彼女が、今のキングダムに、
神を否定するこの国に来た目的は一体何なのか、と。

昨日、彼女が見舞いに訪れた際、
私の傷の様子が心配らしく、
なかなか言葉が見つからない様子の彼女に対して、
私は、この疑問をぶつけてみることにした。

かなり踏み込んだ質問をしている自覚はあった。
いくら私に対して常に正直でいる彼女とはいえ、
流石にはぐらかされるかもしれないとも思っていた。

だが、彼女は慎重に言葉を選びつつも、はっきり答えてくれた。


自分は、キングダムへは『人々の願いを叶えるために来たのだ』と。


彼女の父は魔神の王だが、母は人間。
半分人間の血が混ざっていたことから、
完全な魔神ではなかった彼女は、
人々の願いを叶え、対価として魔力を得、
その器を魔力で満たし、真の魔神になって、
晴れてEVUUに帰ることができる。
それが彼女がキングダムに来た目的なのだと説明してくれた。
 
そして、私の質問に正面から答えてくれた後で、
今度は彼女の方から私に質問してきた。
 
 
「シャロンの願いは何?」


この彼女の質問を聞いた時、
ああ、そういうことだったのかと、私は妙に納得してしまった。

人々の願いを叶え、真の魔神にならんと欲する姫が、
私に『願い』を尋ねた……とすれば、考えられるのは、たった一つ。
 
彼女は、私の本当の願いを叶えることで、
魔力を取り戻し、真の魔神となり、故郷に帰ろうとしているのだ。

ここ半月の間、何かにつけては私のところへやってきて、
自分のペースで、言いたいことを言って去っていき、
時には強引に私を巻き込んで、キングダムの案内やら、
なんだかよくわからない衣装を、着せられたりしたこともあった。

振りまわされた、と表現したほうがいいかもしれない数々の出来事。
しかしそれは、私にとってはとても心地よい時間だった。
宰相の職について以来、初めて心から笑い、心から楽しみ、同時に……。


彼女の存在が、他の者とは違う、
徐々に特別なものに変化していくのを感じていた。



だが……そうやって彼女が終始、私の周りに居たのは、
全ては、私の心の中に秘めた願いを、
彼女の力で叶え、魔力を得て、神へと戻る、
そのために、私の傍にいる必要があっただけなのだ。

「シャロン。アンタが嘘を見抜けるように、私にもわかることがあるの。
 半端魔神の私だけど、その人間の持つ願望が、
 本物かどうか区別することができるわ」

人々の願いを叶える存在である彼女が、
私の願いが本当か嘘か見抜けるといい、
その上で、私のを嘘だと断言するのなら……。

 
ただの人の身である私に、それを否定することができようか……?


* * *

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