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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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イシューといっしょ ~イシュマールルートGood(Bad?)-Ending編~

DKミニシナリオ
イシューといっしょ ~イシュマールルートGood(Bad?)-Ending編~

乙女ゲーム『デザートキングダム』のイシュマール攻略ルートの、
ベストでないほうのエンディング(おまけシナリオメニューが開放されない方のエンディング)後の、
モスキーノ教団のとある一日を書いてみました。当社比、暗さ120%です(えー!?)。

※このシナリオは、ゲーム本編の感想や攻略情報ではなく、ゲームのエンディング部分を参考にした、
※二次創作シナリオです。ネタばれ多数。クリア前の方はご覧にならないようご注意ください。


* * *

イシュマール(以下、イシュー)
「主教殿。本日の神学の講義はここまでといたしましょう。
 少々長くなりましたが、お疲れではありませんか?」
主教
「いえ……先生のお話はいつ聞いても面白いので、
 つい、時間が経つのを忘れてしまいます。それに……」
イシュー
「それに?」
主教
「先生のお部屋は、なんだかとても居心地が良くて。
 わたくしには教団にお世話になる以前の記憶が全くありませんが、
 この部屋の中のイメージが……、
 なんだか、長い間暮らしていたか場所のような、
 懐かしく穏やかな……そんな感覚を抱くのです」
イシュー
「……はは。このように埃塗れの、
 雑然とした書庫が居心地が良いなどと、
 主教殿は本当に変わっておられる……、
 懐かしいと申されますが、何か、思い出されたことでもあるのですか?」
主教
「……いいえ、具体的なことは何も。ただ……」
イシュー
「ただ?」
主教
「わたくしは……誰かに会わなくてはいけなかったと思うんです。
 その人に会って、どうしても伝えなくてはいけないことがあったはずなんです。
 でも、一体『誰』に『何を』伝えるつもりだったのか、
 そもそも、わたくし自身が何者かも、全く思い出せなくて……」
イシュー
「主教殿。人は何故『忘れること』が可能であると思われます?」
主教
「……?」
イシュー
「単純なことです。自己防衛本能ですよ。
 生きている間、自己の周りで生じたありとあらゆる出来事を、
 生涯ずっと記憶し続けるというのは、
 脆弱な人間の精神構造上、負荷が大きすぎる。
 それこそ『神』でもない限り、森羅万象、あまねく事象を、
 忘れずに記憶に留めておくなんてことは不可能なのです。
 もっとも、神なんてものは存在しないのですから、
 この世に生きとし生けるものは、全て、
 『忘れる』ということで、自己の生を保っていると言っても過言ではない。
 人は弱い。弱いからこそ自分を守るためには、
 『忘れる』という作業こそが、必要不可欠なのです
主教
「先生にも、そんな経験があるのですか?」
イシュー
「……残念なことに、私は他の人間と比べて、
 少々記憶力に恵まれて生まれてきてしまったらしい。
 ですので、なかなか過去の苦しみを忘れることができない。
 忘れたいのに忘れられない。
 こんな私から見れば……こう言うのは少々語弊があるかもしれませんが、
 主教殿のことは正直羨ましいとさえ思うことがありますよ」
主教
「そんな! わたくしのことが羨ましいだなんて……」
イシュー
「いやはや、失礼。気分を害されたのなら申し訳ない。
 今のは単に私の主観的感想に過ぎませんよ。
 客観的に見れば、貴方の置かれた状況は、
 まさに悲劇、神の無能を具現したものとしか言いようがない」
主教
「……それでも、私はこの教団に辿りつくことができたのですから、
 幸せといえると思います。
 先生にもこうして興味深いお話を聞かせていただけますし。
 もっとも、わたくしのような未熟なものが、
 主教に指名されるとは思っていませんでしたが」
イシュー
「いえいえ。前主教殿も、貴方と同じくらい神学に熱心でしたが、
 習得の速度は貴方のほうがずっとお早い。
 流石、聖女マリーの再来と言われるだけのことはあります。
 現在の教団の中で、貴女以上に主教の座が務まるものなどおりません」
主教
「信者の方々からのお話でしか存じ上げませんが、
 マリー様は、とても素晴らしい方だったと聞いています。
 わたくしなどは、まだまだ、マリー様の足元にも及びません。
 そういえばイシュマール先生。貴方はずっとお一人で、
 マリー様が居なくなって以降、前主教からわたくしへと続く、
 モスキーノ教団を陰から支えてくださっていますが、
 その……ご結婚などはなさらないのですか? お相手とかは……」
イシュー
「私は神学者、学問を究めんとする者ですからね。
 およそ非論理的な感情論には、興味はありませんので、
 結婚などは、今は全く考えてはおりません。
 ……とはいえ、こんな私にも……、
 かつて、たった一人だけ、心から愛した女性がおりました
主教
「まあ、先生にもそんな方が? その方は今どうされて……」
イシュー
「(長い溜息をついて)…………死にました。数年前に」
主教
「お亡くなりに……それは……辛いことをお尋ねしてしまって申し訳ありません。
 もしやそれが、先生の『忘れたくても忘れられないこと』なのですか?
 わたくしや教団が、先生のお力になれれば良いのですが」
イシュー
「……いやなに、私の事を心配してくださる必要はありませんよ。
 こればかりは、いくら教団に金を……いえ、御布施をしたところで、
 到底、叶うものではありません。
 ですが、忘れることが叶わなくとも、
 主教殿に話を聞いていただけたのですから、幾分、救われた気もいたします」

そう、私が愛した彼女は死んだ。

否。


……私が……『殺した』……。


イシュー
「さあ主教殿、そろそろ聖堂へ参りませんと。
 貴方を慕うキングダムの民が待っておりますよ」
主教
「……先生。これは、わたくしの我儘かもしれませんが、
 一つ、お願いをしてもよろしいですか?」
イシュー
「改まって、なんです?」
主教
「一生とはいいません。せめて、先生が……、
 そう、かつて愛した女性のような人と再び出会うまでで構いません。
 それまではわたくしの傍に、この教団に居て、わたくしを助けてくださいませんか?」

目の前に差し出されたか細い腕。
その白い手をそっと握りしめ、イシュマールはうやうやしく膝をつく。

イシュー
「……私のごとき者の汚れた手で恐縮ですが、
 姫が……いえ、主教殿、貴方が望むのであれば、
 私はこの生涯をかけて、
 貴方を、そして貴方の教団を支えていくつもりでおります。
 私個人のことを、主教殿に心配していただけるのはありがたいのですが、
 私はとうに『個人の愛』というものは捨てました。
 ですから私の命、私の存在、私の全ては、
 これから先もずっと、貴方だけのものです……主教『アスパシア』

そのイシュマールを見つめて、微笑を浮かべるアスパシア。



アスパシア
「……ありがとう……『イシュー』」



その呼び名に、はっとして顔を上げるイシュマール。

イシュー
「…………姫? いま、なんと?」
主教アスパシア
「え? あら、どうして先生のことを、わたくし急に『イシュー』だなんて……、
 すみません、先生、驚かせてしまって。
 先生のことを、そんな風に呼んだことなんて一度もないのに、
 どうしたんでしょう。わたくし、変ですね」

……違う。

彼女は、もうあの頃の『姫』ではないのだ。

イシュー
「ふ……。さて、参りましょうか。
 大分、予定より長引いてしまった。
 さぞかし、皆が首を長くして待っていることでしょう」

* * *

書庫から聖堂まで、主教アスパシアの手を引き付き添ったイシュマールは、
入口でその手を離し、彼女の背中を黙って見送る。

そこへ、一人の人物がやってきた。

???
「先生」
イシュー
「主教……いえ、前主教ラクロア殿。
 どうされました? 何か言いたげな顔をしてますね」
ラクロア(前主教)
「どうして、伝えてあげないのです?
 主教アスパシアが……あのお譲ちゃんが、
 あの日、先生に会いにここへやってきたんだってことを」
イシュー
「これはこれは、盗み聞きとは趣味が悪い」
ラクロア
「からかわないでください。
 私は、先生とあのお嬢ちゃんのことを心配して言っているのです!」
イシュー
「ラクロア殿。仮にあなたが言うように、
 彼女があの日、私に会いにやってきたんだとして、
 記憶をすべて失っている彼女に、それを伝えたところでどうなります?
 私はかつて、『神である』姫の存在を消したいと願い、その『死』を願った。
 彼女はその願いを聞き届け、それを叶えるため、
 記憶を失い、ただの人間となった。
 それは……私が彼女を『殺した』に等しい。
 そんな男が、彼女を陰から支えるならともかく、
 傍に立つことなど、決して許されることではないでしょう」
ラクロア
「で、でも! 彼女は先生のことを愛していたのに……それに先生だって……!」
イシュー
「今更、議論しても仕方のないことです。もう結論は出ている。
 教団はキングダムの実権を掌握し、
 モスキーノ教はキングダムの国教として、
 周辺の国に対する布教活動を始めている。
 この世界から、神への信仰が絶えるのも時間の問題。
 そして、この教団は今や彼女のもの。
 私は彼女と、そして彼女のものである教団を、
 これからもずっと支えていく……それこそが、
 神を殺してしまった罪人たる私にできる、唯一の贖罪なのですからね」

イシュマールの視線の先には、
慈愛に満ちた頬笑みを浮かべ、
カテドラルに列をなす人々の間を、凛として歩く聖女……、
かつて『魔神』と呼ばれる存在であった姫、アスパシアの姿がある。

* * *

ああ、そうだ。これが私に与えられた罰。
私はずっとこうして、彼女を見守り続けなければならない。

過ぎ去りし日、私の部屋の狭いベッドの中で、
君がこの背中にしがみついた、
あの時、この腕の中に一度でも、
君を抱きしめておけばよかったと、今でも思わない夜は無い。

君を殺し、神を殺し、キングダムを制圧し、
この世界から神という存在を信じる心を消し去ろうとしている私の手は、
今やすっかり穢れてしまっている。

『神の死』という私の願いを感じ取った君は、
あの日、瀕死の体で教団にやってきて、生死の境を彷徨った。

アスパシア
「あなたは……誰?

必死で介抱した私に待っていたのは、
他人行儀な君の第一声。

アスパシア
「あなたが……わたくしを……助けてくれたのですか?」

一ヶ月ほど前に私の前に現れ、
あの狭い書庫で、私と共に過ごした、
アスパシア、あの日の『君』と言う存在は、
いなくなってしまったのだと、この君の一言で私は悟った。

だが。

私の前から完全に消えていてもおかしくなかった君が、
記憶を失い、神の力を失ったとはいえ、
生きて私の目の前にいること。

それは、まさに神の御心……いや、『神の悪戯』としかいいようがない。

そうだ。おそらく『神』は本当に存在するのだ。
私や教団が、どんなに否定しようとも。

そして、彼の国にいる神は、神を殺めた私を断罪する。

私の願いによって、神から人となった愛する彼女の生きざまを、
こんなにも近くに居るのに、触れることも許されぬまま、
この命果てるまで、ずっと見守り、支え続けよと。

イシュー
「……これでいいのですよ。ラクロア殿。私達は、これで……」

全てを忘れてしまった君と、全てを忘れられない私。
堕ちるのであれば地獄の底まで。
どこまでも、いつまでも、私は君と共にあろう。

アスパシア。私の大切な姫君。


君を愛している……。




* * *

ということで今回は、
『デザートキングダム』イシュマールルートのグッドエンド……というか、
多分、バッドエンドと言ってもいいんじゃないかと思うエンディングの、その後を書いてみました。

思いっきり、鬱な感じの終わり方になってますが……(苦笑)

ゲームのエンディングでは、
そもそもイシュマールの姿が全く出てこなかったんで、
あのエンディングで、イシュマールが教団に在籍しているとしたら、
どうなってるのかな~と考えて、思いついたシナリオです。

悲しい終わり方ではありますけど、
ずっと一緒にいられる、という意味では一つの幸せの形なのかもしれません。

 

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