『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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ミニシナリオ
無自覚な彼女 -ホスト部ミーティング編(前編)-
2009年LaLa4月号の『ホスト部ゴージャストランプ』付録で思いついた、ホスト部ミニシナリオ。
2009年2月に公開したもの。当ブログには珍しく(苦笑い)、ホスト部オールキャストでお届け!
* * *
場所は私立桜蘭学院高等部。
南校舎の最上階、北側廊下つきあたりの第三音楽室。
放課後、環に呼び出されたホスト部のメンバーは、
いつものように第三音楽室に集まっていた。
* * *
環
「皆の衆! 本日集まってもらったのは他でもない。
今日は皆に雑誌につける『付録』のアイディアを考えてもらいたいのだ!」
一同(鏡夜を除く)
「雑誌の付録?」
鏡夜
「実はれんげ君からの申入れでね。
れんげ君が発行している同人誌の発行部数を上げるために、
『ホスト部と合同企画で何か特別な付録を付けたい』ということなんだ」
環
「れんげ君にはホスト部のマネージャーとして、
今まで色々アドバイスをもらったり、
まあ……不本意ではあるがプロモーションビデオも、
作ってもらったことだし、流石に恩返しをせねばならないからなあ」
光&馨
「マネージャーっていっても、それって『自称』じゃん!」
ハルヒ
「付録ってことはあんまり大きなものは付けられませんよね」
ハニー
「オマケならケーキは? 僕、ケーキだぁ~いすき♪」
鏡夜
「ハニー先輩。生ものは流石に難しいでしょう。
雑誌に付属させるものですから、
本に挟んで配布できるものでないと」
環
「とりあえずはアイディアだ!
どんどん思いついたものを言ってくれ。
皆の意見の中から、一番いいと思われるものをれんげ君に提案しよう!」
* * *
ガラガラガラ~と、
何処からかホワイトボードを引っ張り出してくる環。
ホワイトボードマーカーのキャップを取って、
皆の意見を待ち構えている。
* * *
光
「う~ん、かさばらないものがいいなら……オモチャとか?
イタズラグッズみたいな。遊べるやつ」
環、ホワイトボードに『オモチャ』と書く。
環
「こらこら。れんげ君の雑誌の購読者は、
うちにいらっしゃるお客様……つまり『姫』達だぞ?
イタズラグッズなんて喜ばんだろう」
光
「え~、そうかなあ。面白いと思うのに」
馨
「じゃあ、『黒魔術部特製呪いセット』とかは?
占いなら女の子にもウケるんじゃない?」
環、ホワイトボードに『占いセット』と書く。
鏡夜
「それではホスト部とのタイアップではなくて、
単に黒魔術部とのタイアップになってしまうんじゃないか?」
馨
「それなら鏡夜先輩は何がいいと思うわけ?」
鏡夜
「俺はコストがかからないものであればどうでも。
写真集用に撮りだめている写真とかから、
適当に選べばいいんじゃないか?」
環、ホワイトボードに『コストを安く』『写真』と書く。
環
「まあ確かに、俺達の写真なら姫達も喜ぶかもしれないが。
ちょっとオーソドックスというか、
少し斬新さが足りないような……」
ハニー
「それなら、お菓子はどう? チョコレートとかキャンディとか。
で、僕らで今までにない新しい味を考えて作るの!
僕らの手作りなら、ホスト部特製ってことでタイアップも問題ないし。
かわいいデザインのパッケージにすれば女の子もきっと喜ぶよぉ?」
環はふむふむと頷いて、
ホワイトボードに『手作りお菓子』『かわいいデザイン』と書くが、
その後ろで、白けた表情でハルヒはハニーを見つめている。
ハルヒ
「ハニー先輩……手作りって簡単に言いますけど……、
以前に教頭先生にスープ作った時の惨状、覚えてないんですか?」
一同(ハルヒを除く)
「あ……」
環は慌てて『手作りお菓子』に二重線を引く。
モリ
「御守り袋」
ぼそりと唐突に呟くモリ。
環
「え? モリ先輩今なんと……?」
モリ
「御守り袋。ホスト部は家族。家族といえば家内安全」
環
「ああ、御守りですか……それはサイズ的には問題はなさそうですね」
環、ホワイトボードに『御守り』と書く。
光
「でも、御守り袋ってことは、
中になにかご利益のあるものを入れるんでしょ?
モリ先輩、何入れるつもりなの?」
モリ
「……ニワトリの羽根」
ハニー
「それって、もしかしてピヨちゃんの羽根?」
こくりと頷くモリ。
その答えを聞いて、馨はひきつった笑顔を浮かべる。
馨
「いや、いくらなんでも付録につけるほどの、
大量の羽を取るのは、動物愛護的に問題なんじゃ……」
環
「そういえばハルヒはさっきから発言してないな?
何かいい案はないかにゃ~?」
ハルヒ
「(しまった気付かれた。と、いった感じでうろたえつつ)
そうですね……(本当はどうでもいいんですけど、敢えて言うなら)
やっぱり実用的なものがいいんじゃないですか?
皆さん学生なんですし、シャーペンとか消しゴムとか」
鏡夜
「ま、それなら、コストは安く済みそうだな」
環、ホワイトボードに『実用品』と書く。
馨
「でも、それって、大きさや値段的にはお手軽かもしれないけど、
ハルヒがよく行くドラッグストアのオマケじゃないんだから。
ちょっと僕らがプロデュースするには簡素すぎない?」
ハルヒ
「そうかなあ?」
光
「大体、他人の使用済みシャーペンを、
校内オークションで高額で落札してくれる客相手に、
大量生産的シャーペンが喜ばれるとは思えないよ」
ハルヒ
「……ていうか、またシャーペンがなくなってるんだけど。
もしかして、また自分のシャーペンを、
勝手に持っていったりしてないよね?」
光、馨
「勝手に持っていったりしてないもーん。落ちてたんだもーん!」
ハルヒ
「……はいはい。結局、落ちてたものになるんだね(溜息)」
* * *
と、まあこんな感じで、いつものように、
がやがやと活発に議論が繰り広げられる中で、
環は一人、ホワイトボードと睨めっこして、
腕組みしつつ、うーんうーんと考え込でいる。
* * *
環
「……オモチャ……占いセット……コストが安い……、
写真……かわいいデザイン……御守り……実用品……」
鏡夜
「ところで、部長の意見はどうなんだ?」
環
「うーむ、そうだなあ……、
できれば皆の意見のいいところを、
集約できるようなものがいいと思うのだが……あ、そういえば!」
小さく叫び声をあげた環は、
準備室に走っていき、中からキングボックス(ダンボール箱)を持ってきて、
ミーティングに使っていたテーブルの上にどーんと置くと、
ごそごそと中身を漁り始めた。
環
「おお、あったぞ! 皆のもの、これはどーだ!?」
環は箱から取り出したものを、
水戸黄門の印籠を出すシーンのように握り締め、
大袈裟に皆に示す。
一同(環除く)
「…………トランプ?」
環の手にはトランプの箱が握られている。
環
「こんど占いイベントを行おうかと思って、
黒魔術部に相談に行った時に、企画の資料として、
伽名月君からこの『呪いの本』とセットで貸してもらったのだ」
光
「人から借りたものをダンボール箱に入れとくのはどうなんだよ」
馨
「呪いの本って、それ、単なるトランプ占いの本じゃん」
鏡夜
「で、お前の案というのはもしかしてその『トランプ』か?」
環
「うむ! 皆の意見を聞いていて思いついたのだが、
これなら、光が言った『オモチャ』の部類にも入るし、
馨が提案した『占い』にも使える。
それから、トランプの数字の面に、
今まで撮った写真をデザインとして使えば、
新しく用意しなくていい分『コストも安く』済むし、
カードを入れるケースや、
トランプのデザインを姫達が喜ぶような『可愛いデザイン』にもできるだろ?
それで、52枚のカードの写真を全て違うものにして、
その中からお客様で気に入ったものを選んで手帳にでも入れてもらえれば、
『御守り』代わりにもなるだろうし、
何よりトランプならば、
庶民的ゲームにも用いられる立派な『実用品』ではないかっ!」
一同(環除く)
「……」
環の熱い説明を、
だまりこくったまま聞いている、他のホスト部メンバー。
環
「あれ? 何……この反応……俺、なんか変なこと提案した?」
あまりに皆が茫然とした表情で自分を見つめているので、
おそるおそる自分の提案への意見を求める環。
すると、
環を取り囲むホスト部員達はとても驚いた顔のまま、
ハルヒ
「環先輩にしては……」
光
「珍しく……」
馨
「ていうかもしかすると……」
ハニー
「変っていうか……」
モリ
「史上初」
環
「……ほえ?」
鏡夜
「お前が考え付いたとは思えないほど、
とても建設的な意見、だな。何か昼に変なものでも食べたか?」
環
「な……変なものなんて食べてないぞ!
大体、昼はいつものようにお前と一緒に食堂で食べたじゃないか。
もう、いいよいいよ……そんなに皆して変な意見っていうなら……って、
あれ? 鏡夜、今、確か、建設的な意見、って言ったか?」
鏡夜
「ああ、そう言ったが」
環
「それって、褒め言葉、だよな?」
鏡夜
「否定的な言葉でないことは確かだ」
環
「え? それじゃあ……?」
ハルヒ
「いいんじゃないですか? トランプ。
なんていうか、ごてごてとした肖像画を使われた、
ロシア王朝時代をモチーフにしたネックレスとか、
付録で付けられたら流石に引きますけど、
トランプなら自分にも身近ですし」
光
「ハルヒ。お前、相変わらず無自覚にざっくりひどいこと言うね」
ハルヒ
「あははは(苦笑い)」
ハニー
「でも、すごく良い案だと僕も思うよ。ね、崇?」
モリ
「ああ、今までになくとても素晴らしい案だ」
馨
「モリ先輩もなんかさらりとひどいこといってるような……」
鏡夜
「俺としてはコストの面も問題ないことだし、異論はないな」
環
「(ぱぁっと嬉しそうな笑顔を浮かべ)
よ、よぉっし! ではれんげ君の同人誌につける付録は、
『トランプ』ということで、
あとは、どういうトランプを作るか、皆で検討しようではないか!」
* * *
後半へ続く
にぎやかなホスト部は書いてて楽しいですね。ペンが自然と進みます(苦笑)