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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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切なき秘め事 -6-

ホワイトデー企画短編
切なき秘め事 -6- (蘭花&ハルヒ)

ハルヒが風邪のことを鏡夜に黙っていたのは、心配をかけたくないだけではなく、
他にも理由があるようだったが、それを問い詰められても「言いたくない」と頑なに拒んで……。

 

* * *

扉の向こう側から、
少し言い合うような荒っぽい声が聞こえた気がして、
中に入った方がいいのだろうかと迷っているところへ、
鏡夜が病室から出てきた。

扉を出てすぐのところで待っていた蘭花を見つけると、
予想通りといった調子で、目を若干細めた後、軽く頭を下げる。

「あら、もう時間なの?」
「ええ。どうしても代理を出せない仕事がありまして。
 とりあえず、今日は入院して様子を見るようにとのことですので、
 申し訳ありませんが、ハルヒさんをよろしくお願いします。
 蘭花さんもちゃんと検査を受けていってくださいね」
「でも仕事が終わったら、付き添いに来るんでしょ?」

当然の確認事項だと思っていたのに、鏡夜は何故か首を振った。

「いえ。面会時間内には終わりそうにもありませんので、
 僕は明日くることにします。
 まあ……ハルヒさんが僕に来てほしいかどうかは分かりませんが

嘘のつきかたの巧妙さでは、
娘と彼には格段の違いはあっても、
素直な感情表現が下手という意味では、
蘭花からみてハルヒと鏡夜とは、それほど差は感じられない。

「それでは、蘭花さん。時間も押してますので、お先に失礼します」

こと、ハルヒに対する態度に限定するならば、
鏡夜の態度もこれはこれで分かり易いもので、
一連の言動を考慮するに、鏡夜はどうやらひどく怒っているようだ。
若干諦めというか、虚しさの残る雰囲気も織り交ぜて。

そりゃ、自分に黙って、部屋で独り、愛する相手が倒れてたら、
心配を突き抜けて怒りたくなる気持ちもわからなくもないけれど、
ハルヒを担ぎこんで来た時の彼の雰囲気から、
一変して、妙にイライラして見えるのは何故だろう?

遠ざかる彼の背中を見送りつつ、病室の中へ戻ったら、
こちらはこちらで、蘭花が居た時とは明らかに違う、
酷くどんよりとした澱んだ雰囲気が、ベッドの周りに漂っている。

「……ハルヒ、起きてる?」
「……」

布団を不自然に被っていた娘は、
蘭花が声をかけると、そこから顔を出してくれた。
熱のせいか、はたまた先程の言い合いのようなもので興奮したからか、
うっすらと真っ赤になった頬に加え、
若干涙ぐんでいるようにも見える。

「……これは鏡夜君にお仕置きが必要な状況ってことかしら?」

今度またハルヒのことを泣かせたら承知しない、
という鏡夜との約束を思い出し、
蘭花が思わず呟いた言葉に、ハルヒは微かに首を横に振る。

「鏡夜先輩のせいじゃないの。ただ、自分が情けなくて……」
「一体、どうしたっていうのよ」

ベッドサイドの丸椅子に腰かけると、
ハルヒは申し訳なさそうな、力のない笑顔を浮かべた。

「鏡夜先輩に……風邪のこと伝えなかった、
 『本当の理由』……言えなくて」
「本当のって……もしかして、遠慮して心配かけたくなかった、
 ってだけじゃないってこと?」
「……うん」

頷いたハルヒは、下唇をちょっと噛むような感じで口を閉じて黙り込む。

本当に話したくないと本人が思っていることなら、
たとえ娘のことであるとしても、興味本位で詮索する必要はない。

でも。

本当は話したくて、誰かに聞いて欲しくて、
なのに、何かが歯止めをかけて、
なかなか素直に言いだせずに、心がもがいているのなら、
父親としては、それを聞いてやることが役目だと思っている。

たとえ、母親の代わりにはなれなくても。

娘を想う気持ちは、アプローチの仕方は多少違っても、
男親であろうと女親であろうと、
どちらが上だとか、どちらがより強いとか、
そう比較するものではないはずだから。

とにかく、ハルヒがどういうつもりなのか様子を窺おうと、
本当の理由とやらを追求する素振りは一切見せずに、
ハルヒに付き添って、おでこを撫でたりしていると、

「ねえ、お父さん。ひとつ聞いていい?」

ようやく、話してみようという気になったらしい。

「改まって、なあに?」
「お父さんが前に私に言ってくれたこと、本当かなって思って」
「ん? あたしが前に言ったこと?」
「うん……ねえ、お父さん、本当に……」

右手の指で涙をぬぐったハルヒは、
蘭花の目をじっと見つめて、こう言った。



「本当に……忘れなくても幸せになれる?」



* * *

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