『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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蘭花に言われたように、
不器用かつ無自覚な彼女の性格、
最近は無自覚の方はやや改善しつつあるようだが、
それでも未だに、感情表現が苦手なハルヒのことは、
自分なりに理解があるつもりだったし、
風邪をひいて具合が悪いということを、
素直に伝えてくれなかったことにいくら腹を立てても、
心配をかけたくなかったから、と言われれば、
鏡夜のことを考えてのことだと思えば、
それほど強く怒るわけにもいかない。
だが、今のハルヒの様子は少し妙だった。
心配をかけたくないと言った後、
最後に一瞬、何か別の事をぽろっと言いかけて、
それに気付いて慌てて口を閉じたからだ。
「ハルヒ、正直に言え。お前、俺に一体何を隠してるんだ?
今回の嘘は俺に心配をかけたくないから、だけじゃないのか?」
「……別に……なんでもないです……よ?」
と、言いつつ明らかに鏡夜の視線を避けようとする彼女。
「メールの文章ならともかく、こんな目の前で、
お前の分かりやすい嘘に俺が騙されると思うのか?」
追求しつつ、眠る彼女に顔を近づけたら、
ハルヒは慌てて右手で、自分自身の口の上を覆った。
「……あの、先輩、あんまり近づくと、
感染るかもしれませんから……せめてマスクとか……」
「感染させたくないんだったら、さっさと言え。
『また』と言うからには、俺が前に何かお前にしたことで、
何か言いたいことを隠しているのか?」
「違います。そんなんじゃ……わかってください……」
「だから、そういう嘘はきかないと……」
「だから、嘘じゃなくて……『話したくない』って、そう……言ってるんです!!」
突然、大声でわめいた後、
ハルヒは右手でばっと布団をひっぱって、
頭の上まですっぽり覆ってしまった。
「ハル、ヒ……?」
点滴が繋がった左手だけは出したまま、
唐突に布団の中へ逃げ込んでしまった彼女の態度に、
唖然としていると、ハルヒのたどたどしい声が聞こえてきた。
『……すみません……嘘をついたのは……、
申し訳ないと思ってます……でも……話したくない……んです』
布団の中でけほけほと、小さく咳き込む音が聞こえる。
『私は……大丈夫ですから、お父さんもいますし……、
鏡夜先輩は早く……仕事に戻ってください。
今日のお詫びは……治ったら……ちゃんとしますから……』
一度、大きな喧嘩をして以来、
こういう感じで、ハルヒと言い合いをする機会はなかった気がする。
大抵、自分が一方的にハルヒをからかって、
それに照れるか、拗ねたハルヒがその言葉に食ってかかってくる、
傍から見れば「痴話喧嘩」のレベル程度の言い合いしかしていなかったから、
そんな折、久々に、かなり深刻な様子で、
鏡夜の言葉に対する、彼女のはっきりとした拒絶の言葉を聞かされて、
傷つかなかったと言えば嘘になる。
「……お前に言われるまでもなく、
どうしても外せない仕事がひとつ入っているからな。
そろそろタイムリミットだ」
少々、嫌みっぽくなってしまったことには、
言ってしまってから反省した。
だが、とにかくハルヒも熱を出して弱っている状況で、
これ以上、強引に問い詰めても、
答えが引き出せないどころか、
ハルヒの状態をも悪化させそうな気もするし、
いくら腹が立っているとはいえ、流石にそこまではしたくない。
「……具合が悪いのに、強く言って悪かったな」
『……』
少し怒りのトーンを落としてみたが、
布団を被ったままのハルヒは、一向に顔を出そうとしないので、
「とにかく今はしっかり休んで、早く治せ」
鏡夜は、彼女を気遣う言葉を一言言い残すと、
病室を後にすることにした。
* * *
続