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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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恋人達の休日 -extra episode 3-

魔王様誕生日企画短編
恋人達の休日 -extra episode 3- (ハルヒ&鏡夜)

……ツンデレ対ツンデレの会話は、なんだかこそばゆいですね(苦笑)。


* * *

すっかり夜も明けて、朝になったというのに、
ハルヒが身にまとっているのは白いバスローブだった。

朝起きてからシャワーを浴びたから、
という理由だけではなく、
そもそも、ハルヒがホテルに来る時に着ていたのは、
昨日の恥ずかしいパーティードレスだけだったから、
さすがに、翌朝になってまで着る気分になれなかったからだ。

「前に、お前に言われた通りだったよ」
「え? 何がですか?」

ハルヒが起きてきたときには、
鏡夜は既に着替えを終えていたが、
ネクタイは締めておらず、
今も、Yシャツの第一ボタンを外したラフな格好で、
ハルヒと向かい合わせにテーブルについて、朝食を口に運んでいる。

「去年、お前に誕生日を祝ってもらってから、
 一年の経つのは意外と早いものだと思ってな。
 もっと待ち遠しいかと思っていたんだが」
「それは、ものすごく密度の濃かった一年だったからじゃないですか?
 仕事も忙しいでしょうし、それから色んなことがありましたし。
 本当にあっという間でしたね」
「で……これで年が明ければお前も社会人三年目だろ?
 それが終わったら、分かってるよな? ハルヒ」
「あー、あの法務部にってやつですよね。
 分かってますよ。だから今色々、会社のことを勉強して……」
「俺がどういうつもりで言っているのか、お前、本当に分かってるか?」
「え? えっと……」

恥ずかしいことだが、
少し前までハルヒは本気で勘違いしていたのだ。

鏡夜が執行役を務める会社の、
法務部の人手不足もあって、
ハルヒにその会社に来て欲しいと言っているのだと。

でも、そんな風に鏡夜の言葉の上辺だけを捉えて、
その裏のことを考えないようにすることは、
『天然』という言葉一つで片付けていいことではない。

単に自分が先のことを考えることから、
逃げていただけなのだと……今は分かる。

「大丈夫です。もう、私は、ちゃんと分かってますよ?

鏡夜との約束は三年間。

今の弁護士事務所で三年間みっちり弁護士業務を勉強したいと、
ハルヒが鏡夜に提案をしてから一年、
事務所で働きだしてから数えると、もうすぐ二年が経とうとしている。

「あと一年、私が自由に弁護士活動させてもらえたら……その時は」

ハルヒはフォークとナイフを皿の縁に立てかけるように置くと、
姿勢を正して、空いた手を両膝の上に揃えた。

「その時には、ちゃんと先輩に、
 これから私がどういうつもりで鏡夜先輩の側にいるのか、
 私の気持ちをはっきり言えるようにしておきます。

 ……そういうことで良いですよね?」

いつものような焦点のぼけた答えを返されるとでも思っていたのか、
この時の鏡夜は、大してハルヒの答えに期待してなかったようだ。

「……」

鏡夜は、ぎょっと目を見開いて、
あからさまにハルヒの顔を凝視し、
ハルヒの言葉が信じられない、といった様子を隠しもしない。

「あの、鏡夜先輩、違いました?
「ん……いや、そうだな……そういうことかな……」

もごもご呟きながら、鏡夜はごほんと咳き込むと、
ハルヒから目を逸らして、コーヒーを飲み始めた。
窓からの陽射しのせいだろうか、
彼の顔が少しだけ赤くなっているようにも見える。

「それはそうと鏡夜先輩。
 ものすごく言い出しづらいことがあるんですけど」
「ん、なんだ? ああ、もしかして今日仕事が入っていたのか?」
「いえ、それは事前に調整してますからいいとしてですね、
 あの……自分、着て帰る服がないんですけど、
 一体、どうしたらいいんでしょうか」
「服だったら、光と馨が貸してくれたあのドレスでいいじゃないか」
えーっ! また、あれを着るんですか? 朝っぱらから?」

人目の少ない深夜だと思うから、
まだあの恥ずかしい格好に耐えられたというのに、
昼間からあんな格好でマンションに帰っていくなんて、
近所の知り合いに見られたら……と考えると、居たたまれない。

「気に入ってないのか? 俺はお前のあのドレス姿は好きだがな」
「それってドレス姿じゃなくて……、
 単に私の恥ずかしかる姿が、好きなだけなんじゃないですか?」
「くくく、ばれたか……」
「もう、先輩は!!」
冗談、だよ」

鏡夜はコーヒーカップを置いて、
テーブルの上に両肘をつき、胸の前で指を組み合わせる。



「昨日のドレス姿。とてもよく似合ってたぞ。
 できれば、もう一度、着て見せてくれないか?」




例えば、昨日の夜のような、
こちらの反応を面白がるような、挑発的な態度だったら、
遠慮なく突っぱねられるというのに、
こうも直球に、しかも真剣に頼まれてしまうと、無下に断ることもできない。

分かってはいるけれど、
本当に、鏡夜先輩は卑怯な人だ。

卑怯で、計算だかくて、時々……いや、かなりの頻度で暴君で、
寝起きが悪くて、魔王で、人の考えてることなんてなんでもお見通しで、
隠し事が多くて、プライドも無駄に高くて。

言いたいことは山のようにあるけれど、
それは、全て不器用の裏返し。

本当は傷つきやすくて、繊細で、
何より私のことを、一番に想ってくれているのが、
一緒にいてものすごくよく伝わってくる……そんな優しさを持った人。


そんな彼の全てが、とても大切で……すごく愛しい。


「仕方ないですね……今日一日だけですからね」

昨日の夜だけならともかく、
(いや、それだって十分困るには困るのだが)
今朝になってまで鏡夜の良いように翻弄されてるのは、
やっぱり、ちょっと悔しかったから、
表情はあくまで不満そうに、唇をつんと尖らせつつも、
ハルヒは、自分の目の前で柔らかい笑顔を浮かべている、
この大切な恋人の頼み事を叶えてあげることにしたのだった。

* * *



(初稿2008.11.28 加筆・修正2010.3.7)

以上で、本当の本当に『恋人達の休日』は終了です(笑)。

なお、おまけエピソードは、
旧ブログでも密かに公開していました。
(今回、若干構成を変えましたが、大体、文章はそのままです)

二人がらぶらぶしてる話は、
書いていて恥ずかしいことは恥ずかしいのですが、
やっぱり楽しいのも事実です。

気を抜くといつのまにかシリアス展開しちゃう、
甘い話が大の苦手の管理人が、
自分の能力の限界に挑戦した問題作でもあります!!

環の『大トロリング』の話は、
この作品を公開したときにはコミックス未収録だったので、
詳細を伏せていたのですが、
今回はコミックスも既に発売されているので、明記してみました。
(何のことか分からない方は、ホスト部のコミックスを買おう!《宣伝》)

実は、大トロリングのことを明記した所為で、
一瞬シリアスモードに足を踏み入れそうになってしまいました。

ハルヒの環への想いを考えれば、
リングの扱いがちょっと不適切だな~と思ったのですが、
それを強調するとどんどんシリアスって、ラブ方面から脱線してしまうので、
今回は、敢えて軽い感じで書いてしまいました……ちょっと反省。

ちなみに、今回の話を書こうと思ったきっかけは、

「男の人が女の人にアクセサリーを贈るのは気がある証拠だよ!!」

という、管理人の友人の断言があったからです(笑)。
まあ、本当に全ての男の人が気があることになるかは分かりませんが、
少なくとも嫌いな相手に対しては、
わざわざアクセサリーなんて買ってこないかなあ、なんて思うわけです。

どうなんでしょうかね?(苦笑)

ここまでお読みいただきありがとうございました!
魔王様とハルちゃんに祝福あれ!!

2010.3.7.Suriya拝

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