『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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いよいよ冬の寒さも厳しくなってきた、
十二月のとある週末の金曜日。
「炬燵……出したのか?」
珍しく仕事が早く終わって、夜の十時を回った頃、
鏡夜がハルヒの部屋に足を運んでみれば、
彼女の部屋の真ん中に、やや小さめの炬燵が出されていたので、
彼は思わずぴたりと、部屋の入り口で足を止めてしまった。
「ええ、最近急に寒くなってきましたから」
今年の夏は酷暑で、残暑も厳しかったというのに、
十一月後半から、ぐっと寒さが厳しくなってきた。
窓際からしんしんと沁み込んでくる冷たい空気が、
上着を脱いだ鏡夜の背中をぞくりと振るわせる。
「今、浴槽のお湯溜めてますから。それまで……あ、お茶でも煎れますか?」
「そうだな。頼む」
そういえば、去年の冬は、炬燵を出してなかったな。
ケトルの音がひゅーひゅーと、部屋の中に響く中、
暖まった炬燵の中に久しぶりに足を沈めれば、
記憶の中の声が心の奥から耳元を叩く。
『オートリ君。君の家にコタツはあるのかな?』
毎年冬になれば、自分の部屋の炬燵の向かい側に、
当然のように居座って、いつまでも子供みたいに目をキラキラさせて、
沢山の夢を語っていた親友の声。
ハルヒに聞こえないように小さく息をついた鏡夜は、
眼鏡を外して、炬燵の上に置くと、
そのまま背中を倒して、絨毯の上にごろりと寝転がった。
『鏡夜! すごいことを思いついたぞ!』
頭の後ろに手を組んで、天井をぼんやり見つめながら、
思い出の中に意識を飛ばすと、
いつも自分のすぐ傍で騒がしかった、あの声が蘇り、
それは色褪せるどころか、
時が経つに連れてますます強くなっている気がする。
『鏡夜、覚えてるか? 一年前の俺との勝負』
それが最後の会話になるなんて
あの時は思ってもいなかったのに。
……環……。
彼が鏡夜の前に居ない冬も、今年で二度目になろうとしていた。
* * *
本編へ、続