『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。
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* * *
「蘭花さん……今、二回って言いました……?」
酔いが回ってきたせいで、
何か別の言葉を、聞き違えたのかと思った。
「ええ。言ったわよ。『君は二回私を裏切った』って。
……なんのことか分からない?」
ハルヒに別れを告げ、彼女を泣かせてしまったことを、
当然裏切り行為の一回と数えるとして、
それ以外の自分の行動の……どこに蘭花を裏切るようなことがあっただろうか。
「……ちょっと、今すぐには……思い当たることが……」
なんとか記憶を振りかえってみようと試みるも、
ぐわんぐわんと耳鳴りのようなものがし始めて、
一向に考えがまとまらない。
「ていうか、鏡夜君はそもそも、
あたしが何でここまで怒ってると思ってるわけ?」
「それは……僕が、ハルヒさんを泣かせたから……ですよね?
そう言ってませんでしたか? 今日、ここへ呼び出すときに。
約束を破ったから……信用が無くなって……と……?」
「そりゃ、あんなにしっかり約束しときながら、
手の平返して、ハルヒを振ってくれちゃった君の態度に、
恨みがないわけじゃないけど、
あたしが怒ってるのは、
単に君があたしとの約束を破ったから、というとだけじゃないのよ。
ねえ、きょ、う、や、く、ん?」
右隣に座っていた蘭花は、
背後から鏡夜の左肩に手を回して、がっしり掴んだ。
「男だったら、やっぱり、女に対して、
真剣に責任を取らなきゃいけない時っていうのがあると思うのよ」
その表情には笑顔が無い。
「……責任?」
「ええ、そうよ。『男としての責任』のことね」
酔いが眠気を誘いだして、
ふらふらとと首元が安定しなくなっている鏡夜の身体を、
蘭花は脇からがっちり固めている。
その所為で背もたれに寄りかかることも、
蘭花から身体を離すこともできない。
「……つまり……僕に……今後はハルヒを……、
ハルヒさんを、泣かせるようなことはするな、
ということ……ですよね?」
「それは当然! だけど、あたしが言ってるのは今後の責任じゃなくて、
今までのことについての責任なの」
「今までの?」
「あたしの言ってる意味、分からない?」
「だからそれが……僕が……ハルヒを泣かせたって、
ことに対する責任なんじゃないんですか……?」
呂律が回らないまではいかないものの、
大分心もとない、堂々巡りの鏡夜の答えを聞いて、
蘭花は大きく失望の溜息をついた。
「……あのねえ、鏡夜君。あたしが言いたいのは、
君はハルヒと付き合いだして、
ハルヒをキズモノにしてくれたわけでしょ?
環君のことはさておいても、
それに対する責任ってものがあったでしょ!! ……ってことよ」
「はあ……キズモノ……ですか…………」
うつらうつらとしてきた世界の中で、
オウム返しに蘭花の言葉を呟いた鏡夜が、
その言葉の意味を脳内で正確に理解したのは、十数秒後のこと。
「は!? …………キ……キズモノっ!?」
自分が発した単語の意味を悟るや否や、
焦った鏡夜は、ソファーから立ち上がりたいくらいの衝動に駆られたのだが、
その鏡夜の身体を、蘭花の腕が押さえこむ。
「何、その慌てぶりは?
あのね、もう君達も子供じゃないんだから、
その場の雰囲気とか、勢いにまかせて……じゃなくて、
ちゃんと先々に責任をとることまで、
覚悟してから、そういうことはしてほしいって、父親としては思うわけ。
あたしは琴子とたしかにデキ婚だったけど、
少なくともあたしは琴子に対して、
ちゃんと責任はとるつもりで、きちんと付き合ってたわけだし……」
「あの、蘭花さん、ちょっと良いですか? あの……」
「言い訳できる立場じゃないでしょ!?
もう、環君のことが何よ!
そりゃあの子は環君のことを、本当に心から愛してたんだろうし、
鏡夜君と付き合いだした時も、
その気持ちが抜けてなかったかもしれないわよ。
でも、そういうことを理解した上で、
ハルヒとそういう関係になったんだったら、
『耐えられないから、はい、さよなら』、って、
そういうのは、男としてとても無責任だと思うわけ!
あたしはねえ、君がハルヒに別れ話を持ち出して、
泣かせたことに、ただ怒ってるんじゃなくて、
そういう、君の『身勝手さ』に怒ってるのよ。
娘がキズモノにされたあげく捨てられるなんて、
父親としては怒って当然でしょ?」
「ちょ、ちょ、ちょっと……待ってください、蘭花さん!」
鏡夜が必死で大声をあげて蘭花の言葉を遮ると、
蘭花はぎろりと鏡夜を睨みつけた。
「なあに? 何か弁解の余地があって?」
「あの、ですね……その、先ほどから、
……キズモノがどうとか、言われてますけど…………」
一方的に、ものすごい剣幕で捲し立てられたから、
蘭花に向かって反論したいことが、
鏡夜には、それこそ山のように溜まっていたわけだが。
とりあえず。
この場は、蘭花が「重大な勘違い」している、
自分とハルヒの今の状況について、
真っ先に、誤解を解いておかなければならない。
「俺はまだハルヒに……そういうことは一切……してないんですが?」
* * *
続