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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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三つめの宝物 -18-

三つめの宝物 -18- (鏡夜)

深夜0時を回り、バーの営業時間は終了。客も従業員も皆帰ってしまった店内で、
蘭花は、鏡夜のことを、ひどく怒っている様子だ。何故、蘭花はこんなにも怒っているのか?

* * *

「蘭花さん……今、二回って言いました……?」

酔いが回ってきたせいで、
何か別の言葉を、聞き違えたのかと思った。

「ええ。言ったわよ。『君は二回私を裏切った』って。
 ……なんのことか分からない?」

ハルヒに別れを告げ、彼女を泣かせてしまったことを、
当然裏切り行為の一回と数えるとして、
それ以外の自分の行動の……どこに蘭花を裏切るようなことがあっただろうか。

「……ちょっと、今すぐには……思い当たることが……」

なんとか記憶を振りかえってみようと試みるも、
ぐわんぐわんと耳鳴りのようなものがし始めて、
一向に考えがまとまらない。

「ていうか、鏡夜君はそもそも、
 あたしが何でここまで怒ってると思ってるわけ?
「それは……僕が、ハルヒさんを泣かせたから……ですよね?
 そう言ってませんでしたか? 今日、ここへ呼び出すときに。
 約束を破ったから……信用が無くなって……と……?」
「そりゃ、あんなにしっかり約束しときながら、
 手の平返して、ハルヒを振ってくれちゃった君の態度に、
 恨みがないわけじゃないけど、
 あたしが怒ってるのは、
 単に君があたしとの約束を破ったから、というとだけじゃないのよ。
 ねえ、きょ、う、や、く、ん?」

右隣に座っていた蘭花は、
背後から鏡夜の左肩に手を回して、がっしり掴んだ。


「男だったら、やっぱり、女に対して、
 真剣に責任を取らなきゃいけない時っていうのがあると思うのよ」



その表情には笑顔が無い。

「……責任?」
「ええ、そうよ。『男としての責任』のことね」

酔いが眠気を誘いだして、
ふらふらとと首元が安定しなくなっている鏡夜の身体を、
蘭花は脇からがっちり固めている。

その所為で背もたれに寄りかかることも、
蘭花から身体を離すこともできない。

「……つまり……僕に……今後はハルヒを……、
 ハルヒさんを、泣かせるようなことはするな、
 ということ……ですよね?」
「それは当然! だけど、あたしが言ってるのは今後の責任じゃなくて、
 今までのことについての責任なの」
「今までの?」
「あたしの言ってる意味、分からない?」
「だからそれが……僕が……ハルヒを泣かせたって、
 ことに対する責任なんじゃないんですか……?」

呂律が回らないまではいかないものの、
大分心もとない、堂々巡りの鏡夜の答えを聞いて、
蘭花は大きく失望の溜息をついた。

「……あのねえ、鏡夜君。あたしが言いたいのは、
 君はハルヒと付き合いだして、
 ハルヒをキズモノにしてくれたわけでしょ?
 環君のことはさておいても、
 それに対する責任ってものがあったでしょ!! ……ってことよ」
「はあ……キズモノ……ですか…………」

うつらうつらとしてきた世界の中で、
オウム返しに蘭花の言葉を呟いた鏡夜が、
その言葉の意味を脳内で正確に理解したのは、十数秒後のこと。



「は!? …………キ……キズモノっ!?」



自分が発した単語の意味を悟るや否や、
焦った鏡夜は、ソファーから立ち上がりたいくらいの衝動に駆られたのだが、
その鏡夜の身体を、蘭花の腕が押さえこむ。

「何、その慌てぶりは? 
 あのね、もう君達も子供じゃないんだから、
 その場の雰囲気とか、勢いにまかせて……じゃなくて、
 ちゃんと先々に責任をとることまで、
 覚悟してから、そういうことはしてほしいって、父親としては思うわけ。
 あたしは琴子とたしかにデキ婚だったけど、
 少なくともあたしは琴子に対して、
 ちゃんと責任はとるつもりで、きちんと付き合ってたわけだし……」
「あの、蘭花さん、ちょっと良いですか? あの……」
「言い訳できる立場じゃないでしょ!?
 もう、環君のことが何よ!
 そりゃあの子は環君のことを、本当に心から愛してたんだろうし、
 鏡夜君と付き合いだした時も、
 その気持ちが抜けてなかったかもしれないわよ。
 でも、そういうことを理解した上で、
 ハルヒとそういう関係になったんだったら、
 『耐えられないから、はい、さよなら』、って、
 そういうのは、男としてとても無責任だと思うわけ!
 あたしはねえ、君がハルヒに別れ話を持ち出して、
 泣かせたことに、ただ怒ってるんじゃなくて、
 そういう、君の『身勝手さ』に怒ってるのよ。
 娘がキズモノにされたあげく捨てられるなんて、
 父親としては怒って当然でしょ?

「ちょ、ちょ、ちょっと……待ってください、蘭花さん!」

鏡夜が必死で大声をあげて蘭花の言葉を遮ると、
蘭花はぎろりと鏡夜を睨みつけた。

「なあに? 何か弁解の余地があって?」
「あの、ですね……その、先ほどから、
 ……キズモノがどうとか、言われてますけど…………」

一方的に、ものすごい剣幕で捲し立てられたから、
蘭花に向かって反論したいことが、
鏡夜には、それこそ山のように溜まっていたわけだが。

とりあえず。

この場は、蘭花が「重大な勘違い」している、
自分とハルヒの今の状況について、
真っ先に、誤解を解いておかなければならない。



「俺はまだハルヒに……そういうことは一切……してないんですが?」



* * *

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