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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

Suriya'n-Fantasy-World

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三つめの宝物 -12-

三つめの宝物 -12- (鏡夜)

蘭花の大切な宝物、一人娘であるハルヒを譲ってもらうため、
鏡夜から蘭花に伝えておかなければならないこととは……?

* * *

蘭花に勧められるまま、二、三杯、グラスを空にしただろうか。

「蘭花さん。酔いが回る前に、一つ、お願いしておきたいことがあるんですが」
「あら、別にお願いなんてしなくても、
 酔いつぶれても、ちゃんと介抱してあげるわよ?」
「い、いえ、そういうことではなくて」

散々弱みを握られているわけだし、
ここで無様に倒れて、蘭花に介抱されるような状況にだけは、
出来ればなりたくないものだ、などと考えながら、
鏡夜は飲み干したグラスを蘭花に手渡しつつ、ちらっと光と馨のほうを見た。

「実は、退院して出社したところ、
 蘭花さんが僕の会社にいらっしゃったことが、ちょっとした噂になってまして」
「噂?」

蘭花がオカマバー出勤前の格好で、
鏡夜の会社の受付で大騒ぎしたことは、
その日、ロビーにいた社員に目撃されることになり、
その後、鏡夜の見舞いに蘭花が来ていたことを、
同じく見舞いに来ていた部下の社員に目撃されたり、
鏡夜が未だに結婚もせず、
良家からの縁談を全て断っていることなどが相乗効果となって、

『鳳家の三男は、今、ニューハーフに入れ込んでいる』

などといった、鏡夜にとっては誠にありがたくない噂が、
さも真実のように流れてしまっている。

そんな噂の経緯を鏡夜が説明していると、

「あらあら、なんの話? なんだか面白そうなことになってるわね」

光と馨の相手をしていたはずの美鈴が、
興味津津、目を輝かせて鏡夜と蘭花の会話に加わってきた。

その一方、蘭花に鏡夜の勤める会社の場所を教えて、
蘭花が乗り込んでくる手伝いをしてしまった馨と、
その事情を知っていて鏡夜に隠していた光は、
揃って視線を上向きにして、鏡夜と目を合わせようとしない。

「まあ、確かにあの日は、かなり頭にきてたから、
 多少変な噂は立っても構わない! って思って乗り込んじゃったけど、
 なあに? そんなにひどい噂になってるの?」
「蘭花さん、あの時、うちの受付の社員に何か色々とおっしゃりませんでしたか?
 僕とは『ただならぬ関係』だとか」
「そうだったかしら……、
 細かくは覚えてないけど、確か受付の子が頭が固くって、
 アポ無しじゃ鏡夜君に会わせられないとか、
 なんか、うだうだ言ってきたから、
 ちょっと売り言葉に買い言葉というか、
 つい口がすべって、そんなことも言ったかもしれないけど。
 あ、もしかして、それが変な噂の原因?」
「それだけではないのですが、まあ、一番大きいのはそこですね」
「あら、いやだ……どうしよう」

今夜は、鏡夜に対して、終始攻勢に出ていた蘭花も、
噂が想像以上に広まってしまった件について、
流石に申し訳ないと思ったらしい。

「なるほど、要するに鏡夜君のお願いは、その誤解を解きたいってことなのね。
 うーん、どうしたものかしら。
 一度、背広でもびしっと着て会社に行く……とか?
 でも、あたしが男の格好して行ったところで、簡単に噂は消せないわよねえ」
「いえ、蘭花さん。僕がお願いしたいのは、その『逆』です」

蘭花が、噂を消すための方法を、
考えようとしてくれたのは有難いが、
鏡夜の頼みは、噂を消す手伝いをしてほしい、ということではない。

「逆?」

腕組みをして首を傾げ、鏡夜を見る蘭花。

「はい。この噂なんですが、
 しばらくこのまま『放置』しようと思ってるんです。
 それで、蘭花さんにご協力いただけないかと思いまして」
噂を放置? それに私に協力しろってどういうこと?」
「もし、誰かが噂の真相を確かめにくるようなことがあれば、
 口裏を合わせていただきたい、ということです」
「それくらい別にどうってことないけど、
 でも、ニューハーフとプライベートで関係がありそう、
 なんて、鏡夜君にとっては良くないことなんじゃない?
 お仕事にも影響は出るでしょ?」
「それはそうかもしれませんが、
 でも、僕は……ハルヒさんのことを、未だ公にはしたくないんです

深い関係になればなるほど、
ハルヒと自分が特別な関係であることを、
隠そうとするのにはどうしても限界が生まれる。

自分の護衛スタッフにも、
気をつけるようには指示しているが、
誰が、どのような手段で鏡夜の身辺を調査しているか分からないし、
情報漏洩を、完全には防ぎ切れないのが実情だ。

しかし、身代わりを立てれば、少し話は別になる。

身代わりのインパクトが強烈であればあるほど、
注意がそちらに向く分、彼女のことを気付かれない確立は高まる。

「あの子のことをおおっぴらにしたくないって、なあに?
 庶民の家の子と付き合っているなんていうと、鳳の家柄が傷つくから?
「いえ、そういうことではなく……」

しかし、蘭花には鏡夜の意図が……、
どうしてハルヒのことを隠したいのか、その真意が上手く伝わっていないようだ。

鏡夜が慌ててそれを否定して、理由を説明しようとしたところ、


「違うよ、蘭花さん。鏡夜先輩はハルヒを守るために、
 公にしたくないって言ってるんだと思うよ」



意外にも鏡夜の言葉をフォローしてくれたのは光だった。

「あの子を守るため?」
「俺達のところにもそうなんだけど、鏡夜先輩のところも、
 今、いっぱい縁談の話とか来ててさ。
 で、中には焦って、過激なことしちゃう子とかいるんだよ。
 鏡夜先輩がハルヒのことを隠すのは、
 そういうウザい相手から、ハルヒを守ろうってことでしょ?
 この間も馨がヒドイ目にあったし」
「そうそう。仕事の打ち合わせだって言われて出向いたら、
 お見合いの席がセッティングされてて、
 取引相手だから仕方なく相手はしたけど、
 家に帰ってから、一晩中、光に愚痴っちゃった」
「ほう……馨にもそんなことがあったのか」
「そう言うってことは、鏡夜先輩にもあったんだ?」
「……まあな」

大体、あの日、ホテルの最上階のレストランで、
引き合わされてしまった社長令嬢の相手をして、
最終的にエスコートして、ホテルの入り口で見送っていたら、
そこをハルヒに目撃されて、その後、大変なことになったわけで、
そのことを思い出すと、鏡夜の顔は自然としかめっつらになってしまう。

「他にも例えば……節操無く、一人の子が、
 俺と馨、両方に見合いを申し込んできたり。
 縁談を申し込んでる家同士で、
 明らさまに社交場で互いに牽制しあったりね。
 なんか色々やられすぎて忘れちゃったけど、
 他にもなんかあったっけ?」
「あと……そういえば僕らの交友関係調べられたりもしたよね。
 確か、メイちゃんにも迷惑かけたことがあったじゃない、光が
「メイちゃん!? メイちゃんがどうしたの!?」

突然、自分の娘の名前が出てきて驚いたのだろう、
美鈴が地声(男性の声)で馨に怒鳴りつけている。

「いや……ちょっと前に、うちの新ブランドの出店計画で、
 渋谷の近くに行く用事があったから、
 ついでにメイちゃんの働いてるショップ見に行ってさ。
 で、休憩がちょうど取れるからって、
 近場でコーヒーを一緒に飲んだんだけど、
 それがどうやら誰かに尾行られてたみたいで、
 なんか、後でメイちゃんの店に押しかけた子がいたみたい」
「メイちゃんはいつものように一喝して、追い払ったって言ってたけど、
 そういうちょっとしたことでも、過剰反応する相手もいるんだよね。
 光も僕も、流石にうんざりしてるんだよ。
 こっちは全然相手にしてなんだから、諦めればいいのに」
「まあ……そんなことがあったなんて……、
 メイちゃん、あたしには何も言ってくれなかったわ……美鈴、悲しい……」

父親の威厳が……と、美鈴はがっくりと肩を落としている。

「つまり、鏡夜君はそういう迷惑をハルヒにかけたくないから、
 あたしとの噂をダミーで流しておきたい、ってこと?」
「光と馨が言うように、
 縁談の相手からの嫌がらせというのも考えられますが、
 ……うちの会社は、そこそこ強引な手法で、
 経営を拡大してきていますから、
 色々な方面で……その……恨みを買っている可能性があります。
 なので、僕との関係が公になったら、
 ハルヒさんにどんな迷惑がかかるか分かりません。
 もちろん、僕も全力で彼女を守るつもりですが、
 それでも、僕の目の届かないところで……、
 ……何が起きるかわかりませんから……」

説明している最中に、ところどころ言い澱んだのは、
もしかすると、これは『逆効果』になってしまうかもしれないと、
ネガティヴな考えが浮かんだからだ。

ハルヒをずっと自分が守るんだと。
もう二度と、彼女を悲しませないと。

真実の誓いを立てて、蘭花を安心させて、
彼女を正式に譲ってもらうつもりだったのに、
鳳家の三男という立場にある自分が、
彼女の側にいることで生じる危険を、こうも明確に示してしまったら……。


むしろ、蘭花はハルヒを譲ることを、ためらうのではないだろうか?


* * *

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